映画コラム

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2018年07月07日

『ルームロンダリング』、池田エライザと一緒ならワケアリ物件もOK?

『ルームロンダリング』、池田エライザと一緒ならワケアリ物件もOK?



©2018「ルームロンダリング」製作委員会 



ワケアリ物件ってご存知ですか?

いわゆる自殺や孤独死、殺人などで人が亡くなったアパートやマンションの部屋、屋敷のことです。

最近はそういった物件をチェックできるサイトもありますが、試しに覗いてみたところ、まあ自分の近所にも意外とそういった物件が点在している事実に改めて驚かされたりもしましたです、はい。

でも、さまざまな事情でワケアリとなった、そんな物件を浄化してくれる女の子がいます……


《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.318》

池田エライザ演じる八雲御子が、ワケアリ物件に住んでは、そこに留まる霊と交流するファンタジック・ヒューマン映画『ルームロンダリング』です!

ワケアリ物件に住み着く幽霊と
霊が見えるヒロインとの交流


いわくつきの部屋=ワケアリ物件の忌まわしい履歴を消してしまう方法、それは一度誰かをそこに住まわせてしまうこと。

そうすれば、以後その物件の真相を次の入居者に公にしなくてもすみます。

そして、ワケアリ物件に住んでは履歴を帳消しにし、また次のワケアリ物件に引っ越す……これを続ける仕事があるという都市伝説があります。

マコトかウソか、その職業の名は“ルームロンダリング”。

本作『ルームロンダリング』の主人公・八雲御子は、幼い頃に父と死別、母は失踪し、以後は祖母に育てられてきましたが、18歳の時に祖母も死去。

そのとき、突如母の弟・悟郎(オダギリジョー)が現れ、御子に仕事と住む場所を与えます。

その仕事がルームロンダリングであり、住む場所はワケアリ物件です。

とりあえず、部屋にしばらく住むだけで任務完了ではあるのですが、彼女は次第に部屋で死んだままあの世へ行けないままでいる幽霊が見えるようになっていきました。

あまり彼ら彼女らと関わらないように努めようとしつつも、いつのまにか会話を交わしては、それぞれの哀しい事情などを知り、それでも自分は何もできないことに虚しさを覚えたまま、また次の物件へ引っ越していく御子。

しかし、彼女とともに過ごした霊たちの中には、何だかこの世に対する未練に決着をつけて、昇天できるようになっていくケースも多いような……。



©2018「ルームロンダリング」製作委員会 




恐怖ではなく死者の哀しみを
描出したヒューマン・コメディ


ワケアリ物件の恐怖を描いたホラー映画は『ヘルハウス』や『悪魔の棲む家』など、世界中で昔から多く作られていますし、日本でも2016年に『残穢 住んではいけない部屋』が公開されたばかりですが、本作はそういったものとは一線を画し、幽霊が見えるヒロインと幽霊たちの交流を通して人生の機微をユーモラスに、かつシンミリと描いていくコミカルなヒューマン映画です。

このところ女優としての心境著しい池田エライザですが、その美しくもあっさりとした個性が、ここではコミュ障で他者との関わりを拒絶したいと願う孤独な風情と、それを阻害して何とか彼女に自分の無念の想いを伝えようとする幽霊たちのドタバタともキテレツともつかないコミュニケーションの数々が、本作の飄々とした妙味を大いに引き出しています。

渋川清彦、光宗薫らが無念の想いをひきずりながら部屋に留まる霊を好演。

また、彼女の叔父となるオダギリジョーとのかかわりの中から、やがてもたらされるさまざまな真実も、そこはかとない感動を呼び起こしてくれます。

監督は自主映画から渡仏して映画を学び、帰国後は崔洋一、廣木隆一などさまざまな名匠の作品の助監督として活動した片桐健滋で、これが商業用長編映画デビュー作となります。

実はこの作品、先ほど記した『残穢』の助監督として現場に就いていたときに思いついたアイデアが企画の発端になっているとのこと。

霊という存在を恐怖とみなすか、哀しみとみなすか、前者の代表足る『残穢』から今回のヒューマン・コメディを構築し得た片桐監督の慈愛に満ちたキャメラ・アイは、全編ゆきわたっています。

こういったワケアリ物件の陰に潜む孤独死の問題なども、今後はますます深刻になっていくことでしょうが、こういった作品に触れておくと、どことなく冷静に対処していけるかもしれません。

何はともあれ、池田エライザちゃんと一緒なら、どんな部屋でも怖くはない⁉

(文:増當竜也)

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