『ザ・プレデター』はエンタメ度満点の痛快作!その3つの魅力!



© 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation



あのエイリアンと双璧をなす人気キャラクター、プレデターが帰ってくる。これだけでも生粋のプレデターファンは諸手を挙げて喜んだはずだ。タイトルもズバリ『ザ・プレデター』。1987年の記念すべき第1作『プレデター』、1990年の『プレデター2』の正統続編というのだから喜びは大きい。

正統続編ということで、2000年代から製作されている『エイリアンVSプレデター』シリーズや、ロバート・ロドリゲスがプロデュースした『プレデターズ』は“ノーカウント”になっている(いや筆者は“プレデター”の名がつくシリーズは評価の良し悪し関係なくどれも好きなのだが)。アーノルド・シュワルツェネッガーが主演を務めた第1作、ダニー・グローヴァー主演の第2作に続く作品として登場した『ザ・プレデター』だが、まぎれもなく正統シリーズへの愛情が注ぎ込まれ、ファンに向けたジャンル映画としてのスタイルが確立されていた。



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まさかのシェーン・ブラック、帰還!



何よりもまず、本作で監督を務めたシェーン・ブラックこそ、記念すべきプレデターによる最初の犠牲者となった特殊部隊隊員ホーキンスを1作目で演じていたというのが面白い。もともと『リーサル・ウェポン』の脚本家として注目を浴びたブラックが『プレデター』に出演する機会を得たのだが、シュワルツェネッガーの横にあって眼鏡姿のホーキンスはいかにも「すぐ殺られてしまいそう」な雰囲気を出していた。部隊が密林へと乗り込むと、期待に応えてというのか案の定真っ先にプレデターによって狩られてしまったブラックだが、その後『アイアンマン3』や『ナイスガイズ!』の監督としてクレジットされようとは誰が想像できただろう。よもや『ザ・プレデター』の監督として再びプレデターの世界線に舞い戻ってきたのだから、これもいうなればハリウッドドリームのひとつなのかもしれない。

しかし考え方を変えれば、プレデターを知り尽くしたブラックの起用は妙手だといえる。もちろん第1作のジョン・マクティアナン監督、第2作のスティーヴン・ホプキンス監督の復帰もありえなくはない選択肢だったかもしれないが、より現代のエンタメ映画にマッチングしているヒットメーカーのブラックは、まさに適任だったといえる。

魅力的なキャラクターがグッド!



『プレデター』シリーズといえば、『エイリアン』シリーズに負けず劣らずバッタバッタと登場人物が“退場”していく作品だ。第1作では特殊部隊、第2作ではロス市警&ギャングとのバトルで相手側に大きなダメージを与えた。では今回プレデターに立ち向かうメンツはというと、元特殊部隊員で現在は傭兵のクイン、“ルーニーズ”と呼ばれるならず者兵士集団、生物学者なのにやたら武器の扱いに慣れたケイシー、そしてクインの息子でありプレデターのガジェットすら解析して扱うほどの頭脳を持ったローリーといった面々だ。書き出してみて分かるように、これまでの作品で1人2人いればいいくらいの個性の強いキャラがこぞって大集合している。

主人公であるクインは戦闘能力が高くプレデターと互角にやり合うスキルを持っているが、彼に負けじと奮闘するケイシーも見事なまでに“戦うヒロイン”像を体現している。生物学者として助言する一方で、銃を手に戦いの最中に自ら飛び込んでいくその姿は足を引っ張るようなキャラクターではなく、その雄姿は爽快ですらある。演じたオリヴィア・マンがかつて日本で暮らし、『美少女戦士セーラームーン』の大ファンであるということも彼女なりにケイシーという役を演じる上で役立たせているのかもしれない。



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またルーニーズの面々も強烈な“曰くつき”(全員がPTSDを抱えた退役軍人)の面々というのだから、これまでのシリーズの中で画面上最も濃い作品だというのは間違いない。しかもネブラスカ、コイル、バクスリー、リンチ、ネットルズというメンバー全員それぞれに持ち味となるバックボーンが与えられ、それが後々の展開や戦闘シーンでばっちりと生かされていく。クインとケイシーに協力し、ローリーを守るためにプレデターと対峙する姿は実に感情移入しやすいキャラ造形となっているはずだ。だからこそ「このキャラ良いじゃん!」と思ってもいつどのような状況で“退場”してしまうか予断を許さず、序盤から胴体真っ二つに内臓がこぼれだす凄惨な状況を描くことで、プレデターと戦うということは惨たらしい最期を迎えることになると暗示されている。

とはいうものの、では肩肘張って鑑賞する作品なのかというと実はそうでもない。もちろんいつ誰がフェードアウトしてしまうか予測がつかない緊張感があるものの、脚本家として『ラスト・ボーイスカウト』や『ラスト・アクション・ヒーロー』なども手がけてきたブラックと、ブラックとともに今回の脚本を執筆したフレッド・デッカーのフィルモグラフィ(『クリープス』『ドラキュリアン』『ロボコップ3』etc.)を見たら、正直どう考えたって『プレデターズ』や『エイリアン:コヴェナント』のようなシリアス路線の展開を見せるはずがない(褒めてます)。R-15指定がつくような切り株描写はあるものの、そういった場面に耐性があるのなら、エッジの効いた戦闘シーンやブラックユーモアを堪能できる本作は生粋のエンターテインメント作品として楽しめるはずだ。

相変わらずカッコいいぜプレデターさん!



改めて、そもそも“プレデター”とはなんぞやという話である。劇中ではプレデター=捕食者を指しているが、実は全作品を通してちょっと意味合いが違う(今回の映画でもそれをネタにする会話がある)。この手の映画で捕食というと人を捕まえては貪り喰うイメージがあるが、まず第1作目からプレデターの行動理由は“狩り”そのものにある。さらに第2作でプレデターは、いくらでも人間を捕食できる身でありながらわざわざ牛肉処理施設をねぐらに選んで食料を確保していたほどだ。

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戦闘種族であるプレデターは強い種族を求めて惑星間を飛来し、敢えて戦闘区域を選んで狩りを行うことが目的にある。そのため第1作でプレデターが降り立ったのは武装ゲリラが巣食うジャングルであり、おかげで人類最強のシュワちゃんと運良く(悪く?)エンカウントに成功した。2作目はというと、密林から舞台を変えつつも日夜ギャング抗争が絶えない近未来のロサンゼルスで、ダニー・グローヴァー演じるハリガン警部補との勝負を繰り広げた。その中で共通しているのは、プレデターは狩りに勝利すると相手の脊髄を頭蓋骨ごと引っこ抜いてトロフィーにするというエグい趣味だ。つまり人食いは後づけ的な意味でしかなくあくまでもメインはハンティングにあり、これまでの“プレデター史”の中ではかつてエイリアンにも勝利しその頭骨が宇宙船内に飾られていたのは有名な話だ(『プレデター2』参照。のちにこの遊び心が『エイリアンVSプレデター』につながった)。

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もう少しプレデターを掘り下げてみると、クリーチャーデザインを担当したのは“ターミネーター”や“エイリアン・クイーン”などの造形で知られるスタン・ウィンストン。金属製のメットを外してみるとそこには四方向に飛び出しギチギチと動く牙があり、ドレッドヘアー以外には頭皮から棘状のものが飛び出している。シリーズを通して同一個体が登場するわけではなく、『エイリアンVSプレデター』シリーズも含めて様々な種類のプレデターが描かれているが、基本的に“醜悪な顔”と常に指摘されていることに変わりはない。しかし戦闘種族らしいその厳めしい造形こそ、映画史にインパクトを残すデザインであることも人気の秘密なのだろう。実際筆者もプレデターはクリーチャー造形の中で“イケメン”枠だと思っている。

さらにプレデターにはプレデターなりのポリシーがあり、各作品を通して“武器を持たないものには手を出さない”“女性には手出ししない”“勝者には敬意を示す”といった共通行動が描かれている。例えばエイリアンが闘争本能だけで他者を襲撃したり捕食するのに対して、プレデターはより知能的で対峙した者と感情的なコンタクトや、時にはジェスチャーを用いたコンタクトを見せるという点でも大きな違いだろう。



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話が逸れてしまったが、とにかく戦闘種族としての能力はこれまで描かれてきたようにずば抜けて高く、光学迷彩やプラズマキャノンといった武器を使用するなど高い文明を持つ。そんなプレデターに“ただのヒト”が敵うはずもなく、『ザ・プレデター』でも序盤の研究施設における職員虐殺シーンはスプラッター描写もさることながら、やはりプレデターの戦闘能力の高さが遺憾なく発揮されているところだ。そしてこのプレデターが全編でバトルを繰り広げるのかと思いきや、本作のひねりとして登場したのが強者の遺伝子を取り込み進化を遂げたハイブリッドタイプのプレデターだ。

もともとのプレデターがムキムキマッチョだとするなら、新たに登場する“アルティメット・プレデター”はゴリマッチョというか身長も約3mある正真正銘のバケモンで、もはや人類とのパワーバランスなど知ったこっちゃないとでもいうべきレベルだ。とにかく、ある目的を理由にアルティメット・プレデターは地球へと降り立つのだが、その無双っぷりにはやはり「こんなヤツに人類が勝てるわけないっしょ」とツッコミを入れざるを得ない。そこで光るのが、人類側のチームワークだ。単独で行動するプレデターに対し、人類には共闘して敵へと立ち向かう戦術がある。あまりにも強大な敵を前にしてなおもひるまず特攻していく精神はこれまでのシリーズ以上に人類VSプレデターの構図を際立たせていて、実は本作は残虐なマンハント娯楽作と見せかけて、そこには熱いキャラクターたちの、彼らなりのドラマがあるのだ。

まとめ



最後に音楽についても触れておきたい。本作の音楽を担当したのは『キングスマン』シリーズや『キングコング:髑髏島の巨神』など近年の活躍ぶりが目覚ましいヘンリー・ジャックマンで、今回は第1・2作でアラン・シルヴェストリが紡ぎだしたプレデターのテーマともいえる不気味なメロディをあちこちに配している。早々に流れるテーマはやはり“ここ”がプレデターの存在する世界なのだと観客を一気に作品の中に蹴落としてくれる。これはジャックマンが『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』でドンドコドンドコとゲームの存在を伝える太鼓の音をオリジンと同様に使ったのと同じ効果だ。

今回はプレデターのキャラクター性に負けず劣らずの人類側メンバーのおかげで、ある意味これまでのシリーズにはない毛色も持ち合わせている本作。その点に関してはプレデターファンの中でも評価が分かれるところかもしれないが、まずは地球で好き勝手に暴れまくるプレデターと、それに対抗してオラオラ感を見せつけてくれる人類の攻防戦を堪能してほしい。

(文:葦見川和哉)

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