「今日から俺は!!」でも大活躍!太賀の表現力を考える
(C) NTV
放送中のドラマ「今日から俺は!!」(日本テレビ)で紅羽高校の番長として、怪力ぶりをいかんなく発揮している今井勝俊を演じている太賀さん。
賀来賢人さん演じる主人公・三橋にライバル心を燃やし、清野菜名さん演じる理子が好きな果てしないバカです。三橋とコンビである伊藤真司(伊藤健太郎)も”おバカコンビ”と言われていますが、紅高の今井と、今井を尊敬する谷川(矢本悠馬)も息ぴったりで愛すべきおバカコンビ。
かと思えば、現在劇場にて上映中の主演映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』では、母親との関係に悩みながら成長し、それを抱えたまま社会人として過ごす青年を繊細に演じています。
コメディから緻密な人間ドラマまで自在に演じられることは太賀さんの魅力ですが、「役者・太賀」としての真骨頂は『母さんがどんなに僕を嫌いでも』で見せたような多様な「泣くお芝居」ではないでしょうか。
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』から過去の出演作を含め、考えてみたいと思います。
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』
(C)2018「母さんがどんなに僕を嫌いでも」製作委員会
歌川たいじさんのさんの同名コミックエッセイを実写映画化した作品です。太賀さんが歌川たいじさんを演じました。母親と親子として関係を築くことができず、壮絶な家庭環境に耐えかねて17歳で家を飛び出し、1人で生きることを選んだタイジが、友達と出会い、改めて母と向き合うまでを描いています。
本作のなかで17歳から23歳までを太賀さんが演じていますが、いくつもの「泣く」場面があります。母親がタイジに向かって狂気的な表情を見せた時や、友達と心を通わせ本来の自分を取り戻した時、そして再び母親に向き合い、距離を縮めた時。
「泣く」という感情表現ひとつで、悲しみや恐怖、苦しさのほか、嬉しさや感動までいろんな気持ちを表すことができるんだと、当たり前でありながら、普段細かく意識しないことを気づかせてくれます。
『人狼ゲーム』(2013)
桜庭ななみさん主演の『人狼ゲーム』では、ゲームの参加者だった多田を演じた太賀さんは、終盤、怒りと恐怖で泣きそうになる場面があります。
「死」を意識させられる作品は、深田晃司監督の映画『淵に立つ』(2016)や『海を駆ける』(2018)にもありますが、『人狼ゲーム』はゲームによって実際に死者が出ている日常離れした設定の中で、追い詰められている様子が太賀さんのお芝居によってより伝わってきました。
「泣く」というひとつの表現のなかに、さまざまな感情が込められているように、その表現にも絶妙な違いがあることを見事に体現したお芝居です。
『禁忌』(2014)
成人男性が苦手な数学教師・咲良(杉野希妃)が主人公。咲良の父が少年・望人を監禁した容疑で逮捕され、咲良がその少年を自宅に匿います。
望人を演じた太賀さんは、美声の持ち主で、あまり言葉を発しない分、歌で自分の感情を表現する一面を持っていました。望人は終始、咲良に怯えた様子でしたが、その中にも感情が見え隠れする様子を細かく演じ分けていました。特に、怖さで震えながら涙するような場面では、視聴者までも不安にさせるような表情で驚きます。
R-15指定の作品で一部性描写もありますが、他では観られないお芝居ではないでしょうか。
『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(2016)
太賀さん主演映画です。青春時代を共に過ごした親友が、理由もわからないまま死んでしまい、その事実が受け入れられずにいる主人公・漣を演じています。
親友が描いた1枚の絵がきっかけとなって物語が進んでいきますが、何か事実が反転したり、思いがけない出来事に出会ったりすることはありません。慌ただしい日々のなかで親友の死を紛らわせていた漣が、親友の死を受け入れ、じんわりと悲しみが広がっていく作品です。
終盤の食事をしながら涙する場面は、秀逸でした。「食べながら泣く」お芝居は少なくありませんが、今回の太賀さんの場合、こういう表現をするのかという驚きの一方で、いや、でも(ストーリーの状況を踏まえて)そうなるのかもしれないと納得させてくれます。
そうは言っても、「泣く」だけじゃない太賀!
「泣く」お芝居ひとつとっても、多彩に緻密に演じ分けている太賀さん。同じキャラクターの中でも、場面によってそれぞれに違う泣くお芝居を見せる役者さんは、そう多くはありません。とはいえ、珍しさや奇抜さを目指している印象はなく、あくまで演じる役に寄り添い、現実離れしないお芝居が、より観る人の心に響くのでしょう。
そのうえ、「今日から俺は!!」のようなコメディに振り切り、”愛すべきおバカ”を演じられるだけでなく、明瞭快活なキャラクターから、曖昧で言葉を尽くすことが難しいキャラクターでさえも、太賀さん自身にたぐり寄せて演じる力を持っている役者のひとりではないでしょうか。
デビュー以来、途切れることなく映画やドラマに出演し続けてきたからこそ、今まさに旬を迎えようとしている役者のひとりだと言えそうです。
(文:kamito努)
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