ただいま絶好調!常盤貴子出演映画オススメ5選+1!
TBS系ドラマ『グッドワイフ』の常盤貴子が話題になっています。海外ドラマ『グッドワイフ 彼女の評決』の日本版アレンジとして、16年ぶりに専業主婦から弁護士に復帰したヒロインを演じる彼女、プライベートでも裁判ウォッチャーが趣味というだけあってリアルな雰囲気を醸し出しています。
3月には新作映画『こどもしょくどう』で定食屋の面倒見のいいお母さんを好演するなど、このところ目が離せない活躍ぶりの彼女ですが、少し前に主演した映画『引き出しの中のラブレター』を振り返ってみましょう。
『引き出しの中のラブレター』の
声がもたらすリスナーとの絆
(C)2009「引き出しの中のラブレター」
2009年度作品『引き出しの中のラブレター』の中で常盤貴子が演じているのはラジオのパーソナリティ真生です。
4年前に喧嘩して絶縁したまま父(六平直政)を亡くしてしまった真生のもとに、生前の父が書いた手紙が届きますが、彼女はそれを読むことができないまま引き出しの中にしまったままです。
そんなある日、「笑わない祖父(仲代達矢)を笑わせるにはどうしたらいいか?」という北海道の高校生・直樹(林遣都)からの投書が寄せられたことを機に、真生は心の奥に隠されているリスナーの想いをラジオが代わって伝える「引き出しの中のラブレター」を企画し、投稿を募集するのですが……。
本作は新堂冬樹の小説を原作に、真生の番組企画を通して多くの人々の想いを届けていく、群像ドラマ形式の作品です。
真生は“笑わない祖父”が直樹の父親(豊原功補)と絶縁状態にあることを知り、自分と亡き父のことを重ね合わせて“引き出しの中のラブレター”を企画するのですが、そこから大都会を四苦八苦しながら走るタクシー運転手(岩尾望)、シングルマザーの道を決意した妊婦(中島知子)など、さまざまなエピソードが綴られていくのです。
そして北海道のエピソードに深く関わっていく真生は、同時に番組企画のさまざまなエピソードを繋いでいく役割も果たしています。
ここで印象的なのは、演じる常盤貴子の声の魅力で、少し感情の起伏を抑え目にしたトーンでマイクに向かってしゃべり続ける彼女の魅力は、ブースの中から画面の外にいる我々観客の耳に心地よく聞こえてくるのです。
何よりも「ラブレター」というアイテムを恋愛関係のそれだけでなく家族や友人を含む、大仰に言えば“人類愛”的なスタンスでとらえているのが新味ともいえるでしょう。
監督は『3年B組金八先生』などのTVドラマ演出やプロデュースで知られる三城真一。
以前、ラジオのパーソナリテイ(某声優アイドル)に取材した折、その人が「テレビは80パーセント以上の視聴者が批評家になってしまうメディアだけど、ラジオは80パーセント以上のリスナーが友達になってくれるメディアです」と語ってくれたことがあり、深夜ラジオで育った私などは全くその通りだなと共感してしまったのですが、本作を見ながら、ふとそのパーソナリティが語ってくれたことを思い出してしまいました。
映像や文字がSNSではびこりまくる昨今ではありますが、久々に「声」「音」をメインにしたラジオに接してみてはいかがでしょうか。
ホントは5本で
収まり切れないけど……
さて、ここからは常盤貴子が出演した映画の中から、個人的に印象的なものを5本挙げてみたいと思います。
『もう一度逢いたくて~星月童話』(99)
1991年に芸能界デビューし、『カミングホーム』(94)などのテレビドラマで一躍スターになった常盤貴子ですが、その後も次から次へとドラマ出演がオファーされ続け、なかなか本格的な映画出演できないままでいた彼女が堂々ヒロインを務めたのは日本と香港の合作映画でした。
ここで彼女は婚約者を亡くして悲しみが癒えないまま香港を訪れたヒロインを演じています。やがて彼女は婚約者そっくりの男(レスリー・チャン)と出会ったことから香港警察VS香港マフィアの確執に巻き込まれていくのです……。
監督はダニエル・リーで、アクション監督はドニー・イエンが務めていますが、こうした国際作品への出演は常盤貴子自身の女優としての冒険心を大いに刺激し、その後の活動の糧にもなっているように思えます。
この後彼女は香港映画『ファイターズ・ブルース』(00)やアミール・ナデリ監督のイラン映画『CUT』(11)といった話題作に出演しています。
『ゲロッパ!』(03)
あと数日で収監されることになっているヤクザの組長(西田敏行)が愛してやまないジェームズ・ブラウンのそっくりさん芸人を子分たちが誘拐してきたことから始まる井筒和幸監督ならではのドタバタ喜劇。
常盤貴子は組長と絶縁した娘役で、絶縁したままの父と娘もまたJ・Bさながらの存在によってやがて絆が再び……といった過程が実に面白おかしく描かれています。
西田敏行のエンタテイナーぶりは無論のこと、なかなかに濃いキャスティングに一歩も引けを取らない彼女の存在感がさりげなくも光る逸品。
『赤い月』(04)
なかにし礼が自身の体験を基にした同名小説を原作に、降旗康男監督がメガホンをとった超大作。戦中戦後の満州の惨禍を背景に、子どもたちを守りつつ自由奔放な愛を貫くヒロインの数奇な運命を描いたもので、本作の熱演で常盤貴子は日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。
以後、『間宮兄弟』(06)『魂萌え!』(07)『アフタースクール』(08)『20世紀少年』三部作(08~09)などの話題作に映画出演するようになっていきました。
『野のなななのか』(14)
常盤貴子の女優デビュー以来の宿願は、大林宣彦監督作品に出演することで、大林監督も「キネマ旬報」インタビューでの彼女の発言を読み、いつか一緒に仕事をしてみたいと思いつつ、なかなかうまくタイミングが合わないままでいました。
そんな中、常盤貴子は大林監督作品『この空の花―長岡花火物語―』(12)撮影現場を訪れ、そこで両者は邂逅し、それを機に続く『野のなななのか』に出演することが叶ったのでした。
現代の北海道・芦別市と戦争末期の樺太を交錯させながら戦争の惨劇を強く訴えていく、『この空の花』に続く大林流“戦争3部作”の第2弾。常盤貴子は芦別の古物屋主人(品川徹)の死から四十九日(なななのか)の間に現れ、ふたつの時代を結びつけるカギとなる謎の女性・信子をミステリアスに演じ切り、高崎映画祭最優秀女優賞を受賞するなど高い評価を獲得。
そして常盤貴子は戦争3部作最終編『花筐/HANAGATAMI』(17)にも主演し、堂々たる貫禄と妖艶な魅力を両立させています。
『だれかの木琴』(16)
念願の大林作品出演で波に乗る常盤貴子のさらなる新境地。これまた念願でもあった東陽一監督作品への出演が叶いました。
井上荒野の同名小説を原作に、平凡な主婦が若い男性美容師(池松壮亮)に魅せられ、やがてその執着がエスカレートしていくさまを描いたもの……ではあるのですが、単なる不倫ものともストーカーものとも呼ぶのをためらわせるほどの不可思議な情緒によって、あたかもヒロインのファンタジックかつ危険なアドベンチャーとして屹立しているのがミソ。見る人によっていかようにも解釈できる奥深い傑作です。
(文:増當竜也)
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