映画コラム

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2019年02月23日

『女王陛下のお気に入り』は「男子なんて、所詮そんなものだ」と思わずにいられない女心を描いた映画

『女王陛下のお気に入り』は「男子なんて、所詮そんなものだ」と思わずにいられない女心を描いた映画

■橋本淳の「おこがまシネマ」

どうも、橋本淳です。

28回目の更新、今回もよろしくお願いいたします。

嫉妬という言葉から連想することは多いかと思います。誰しもが常に持っていて、それぞれの人生の中でも浮かぶ情景が多い感情かなと。

わたしがスッと思いつく場面は学生時代の教室でした。男女共学のガヤガヤした教室、思春期真っ只中の、汗臭く青臭いあの風景。同級生の男子と話しながらも、常に意識するのは女子の目線。チラチラ見たり、たまに大きな声で話してみたり、男子学生のベクトルは常に女子に向く。と思う。

そしてそのベクトルが最高潮になる瞬間は、学生生活の最大のイベント(と思っている)は、「SEKIGAE」。そう「席替え」である。クジなのか、先生がランダムに決めたのか、もうそこらへんの記憶は曖昧だが、席替えに異常にドキドキし、絶頂の気分になったり、地の底まで落胆したりした記憶は、よく覚えている。

隣が誰になるか、誰と班が一緒になるか。

それが最大の問題だった。男子同士で「お前が一緒か〜良かった〜」「お前が前なのか〜い!」的なじゃれあった会話は、ほぼ表面的なやつである。内心は女子への気持ちでパンパンである。

隣が好きな子のパターンで、上がりまくったテンションを隠せないやつ。好きな子の隣を、クラスのおしゃべりor超絶イケメンに取られて、ヒヤヒヤしているやつ。手に取るように分かる。

私も後者の経験がある。好きな子の隣になったやつが超絶イケメンで焦る。仲良かったイケメンだったのに、一気に嫌いになった。ここでは書けない妄想もたくさんした。でもまた席替えをして、好きな子から、そいつが離れたらまた仲よくなる。男子学生の嫉妬心なんてそんなものだ。

隣になったある女子と仲よく話していただけなのに、当時お付き合いしていた彼女に、振られてしまった。手紙で、「そんなに仲よくするなら、その子と付き合えば。さようなら」お別れの言葉。そんなことで!?そうなるともう、何を言っても関係は修復しなかった。まぁ、さようなら、と言っても同じクラスなので毎日顔は交わす。学生なんてそんなものだ。

ただ男子の嫉妬心と、女子の嫉妬心では濃度が違う。粘度といったほうがいいかもしれない。

映画を観てまた再確認した。しかし男子は女心を理解し尽くす事は出来ない、男子なんてそんなものだ。

そんな中、コチラの映画をご紹介。

『女王陛下のお気に入り』





アカデミー賞で9部門10ノミネート。ヴェネチア国際映画祭では銀獅子賞や女優賞を、ゴールデングローブ賞では女優賞など、各賞を荒らしまくっている注目作品。近年注目作が続きに続くFOXサーチライト製作というのも、外せないポイントです。

時は18世紀初頭。イングランドはルイ14世率いるフランス軍と交戦中だった。イングランドのアン女王(オリヴィア・コールマン)が揺れる国家を指揮していた。しかし、実はその裏では、幼馴染で女官を務めるレディ・サラ(レイチェル・ワイズ)が女王を操っていた。サラはアン女王からの絶大な信頼も得て、さらには宮廷でも権力を握っている。
サラの従妹だと名乗るアビゲイル(エマ・ストーン)が宮廷に現れる。アビゲイルは上流階級から没落し生活に困窮していたので、サラに頼み込んで召使いとして働かせてもらうことに。

アンは痛風に苦しんでいた。それに気づいたアビゲイルは、その為に庭で摘んだ薬草を、寝ている間にアンに塗ってあげた。サラは無断で女王の寝室に侵入したアビゲイルを鞭打ちの刑に処するが、痛風の痛みが和らいだことを知り、アビゲイルを侍女に昇格させる。

やがてアビゲイルに生き残るための野心に火がつき、少しずつ女王の心を掴んでいく。

アン女王、サラ、アビゲイル3人の思い、野心、執着、嫉妬、愛が絡み合い、交錯していく。




監督は、「ロブスター」や「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」で世界的にその地位を確立しているヨルゴス・ランティモス。英国の歴史ドラマでありながら、ヨルゴス監督の持ち味である、各シーンの独特なカットがまたハマっている。

3人の女性たちの嫉妬だけではない思いが見事で、ある種滑稽で、コメディのようでもある。

アン女王と女官のサラは、幼馴染であり、信頼関係が築き上がっている状態。アンはサラに依存していて、サラは強く女王に指摘したり注意したりする。その反面、若く美しいアビゲイルは、女王を褒めて煽て、弱った心に入り込んでいく。

その2人の間で、揺れ動くアン女王。

側から見ていると、どちらを選ぶのが正しいのかハッキリ分かるのですが、当時者にはそれが出来ない。自分をおだてて気持ちよくしてくれる人、本音をハッキリ伝えてくる人、まぁ悩むのも分かりますが。

女王のその悩みが、大きくなる理由としては、女性を性的な目でみているというものが、大きいのでしょう。そして女王のラスト表情が、なんともいえない、、、あぁ、、。

女性同士の、水面下の争いは、まぁすさまじいですね。本作は完全に女性強しです。登場する男性たちは、女性陣に振り回され、動かされていること事態も気づいていないほど滑稽で、もはや道化のようです。

しかし、これがあるべき姿というか、現代のこの世界でも同じことが言えるということは、やはり普遍的なのですね。ね。

女性には、敵わない。

この映画を観て、再確認しました。心に深く刻みます。

「男子なんて、所詮そんなものだ」と。

間違いなく傑作です。

ぜひ、映画館で観て欲しいです!

それでは、今回もおこがましくも紹介させていただきました。

(文:橋本淳)

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