近年の名作ホラー映画、厳選6選!



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鬼才ジョン・カーペンターが生み出した殺人鬼、ブギーマンことマイケル・マイヤーズ。記念すべき第1作から“40年後”を描いたデヴィッド・ゴードン・グリーン監督の『ハロウィン』が日本でも公開され、スマッシュヒットを記録している。本作は本家であるカーペンターも製作総指揮ならびに音楽を手掛けており、1978年公開版『ハロウィン』の正統たる続編にファンの評価も高い。

それにしても『ハロウィン』を筆頭に、近年は往年の名作ホラー映画に再びスポットが当てられる機会が増加している。『ハロウィン』のように“その後”を描いた作品もあれば、リメイクといった形で新たな恐怖を観客に提示。オリジナルのファンにどう受け止められるかは作品次第だが、改めて「ホラー映画」というジャンルの根強い人気ぶりが窺えるのではないか。そこで今回は、近年再びスポットを当てられたホラー映画を紹介していきたい。

■『遊星からの物体X ファースト・コンタクト』


遊星からの物体X ファーストコンタクト(字幕版)



まずはカーペンター監督が1982年に放ったSFホラーの金字塔『遊星からの物体X』から。南極を舞台にした本作のオープニングでは、1頭のハスキー犬がノルウェー人に追われる場面から唐突に始まる。このハスキーをかくまったアメリカの観測隊が恐怖のどん底に叩き込まれる訳だが、彼らはその直前にノルウェーの観測基地を訪問。そこには謎の死を遂げた隊員の死体や荒らされた室内、何かを採掘した痕跡が残されていた。

『遊星からの物体X』ではノルウェー隊に“何が起きたのか”は描かれなかったものの、のちに彼らに“何が起きたのか”を描いた『遊星からの物体X ファーストコンタクト』が公開されている。マティス・ヴァン・ヘイニンゲン・Jr.が長編監督デビューを飾った本作はいわゆる前日譚であり、奇をてらわず純粋に未知生物による襲撃の恐怖を描いたという点で、カーペンター版と同じストーリーラインになっている。そういった意味では新鮮味に欠けるかもしれないが、カーペンター版へと物語がしっかり続く伏線の多さに思わずワクワクしてしまう。また『遊星からの物体X』はクリーチャーエフェクトも見所の1つだが、本作においてもVFXという技術を取り込んだ生々しいバケモノの姿が堪能できる。

■『13日の金曜日』


13日の金曜日(吹替版)



スプラッター映画における代表的な殺人鬼といえば、多くの人がホッケーマスクを被った怪力の大男・ジェイソンを思い浮かべるのではないか。1980年に誕生した『13日の金曜日』シリーズに登場するジェイソン(正確にはホッケーマスクをつけたジェイソンは第3作目から登場)はいまやホラーアイコンとしての地位を確立していて、映画という枠組みすら超えて人々の恐怖の根源としてじっと息づいている。クリスタルレイクで殺戮の限りを尽くした殺人鬼は、しかし一方でシリーズを追うごとにコメディ要素を強めていた感も否めず『ジェイソンX』ではついに舞台が宇宙へと飛び出すことになった。

そんなホラーアイコンをリメイクした人物こそ、稀代の爆破職人マイケル・ベイだ。プロデューサーとして再びジェイソンを呼び覚まし、『悪魔のいけにえ』のリメイク作『テキサス・チェーンソー』をヒットさせたマーカス・ニスペルを監督に迎え、再びクリスタルレイクという“活躍の場”を与えた。リメイクによってジェイソンは文字通り地に足をつけた殺戮を繰り返すことになり、前シリーズ以上にジェイソン・ボーヒーズの歪んだ殺人衝動に焦点が当てられている。前シリーズでは途中から不死身のモンスターと化したジェイソンだったが、本作ではあくまでも怪力の殺人鬼という原点に立ち返ったのだ。そしてエロ・グロ・ナンセンスぶりも磨きがかかり、華麗なるジェイソンの殺人術もバリエーションが増えているのでそういった点にも注目してほしい。

■『エルム街の悪夢』


エルム街の悪夢(2010) (字幕版)



2015年に惜しまれつつ亡くなったウェス・クレイヴン監督がクリエイトした、ボーダー柄のセーターに焼け爛れた皮膚、そして肉体を容易く八つ裂きに切り刻む鉄の爪をはめたフレディ・クルーガー。悪夢の中に現れる殺人鬼の恐怖を、凝った演出で描き上げた『エルム街の悪夢』もマイケル・ベイによってリメイクされている。フレディといえば恐怖の中にもユーモアセンスも持ち合わせていたが、リメイク版ではユーモアを控えてより不気味さを際立たせたキャラクター造形になっている。そういった意味ではエロ・グロ・ナンセンスを踏襲したリメイク版『13日の金曜日』とは逆をゆくアプローチと言えるだろう。

リメイクに当たってサミュエル・バイヤー監督のダークな作家性が強調されていて、ジャッキー・アール・ヘイリー扮するフレディ・クルーガーが“なぜ鉄の爪の殺人鬼になったのか”も現実的なタッチで描かれている。要はクレイヴン版に比べてリアリティ路線に舵を切った訳だが、かといってホラー描写が大人しくなったかと言えばそうではない。むしろ絶妙なライティングで暗闇に対する恐怖感は増しているし、スラッシャー映画の醍醐味でもある血飛沫についても遠慮はない。ジャッキー・アール・ヘイリーの怪演もあって、クレイヴン版とはまたひと味違うホラー映画特有のキリキリとしたタッチを味わうことができる。

■『IT/イット “それ”が見えたら、終わり』


IT/イット “それ”が見えたら、終わり。(字幕版)



映像化作品が数多いスティーブン・キング原作の作品の中でも、テレビ映画として描かれた『IT』に特別な感情を抱くリアルタイム世代の人は多いかもしれない。かく言う筆者もその1人で、恐怖症とまではいかずともやはり「ピエロは恐ろしい存在」としてイメージを植えつけられてしまったのである。子どもをさらっては肉を食らう殺人ピエロ・ペニーワイズ。ピエロ恐怖症なる言葉を知らしめた、おぞましきキャラクターだ。

そんなペニーワイズが改めて『IT/イット “それ”が見えたら、終わり』として描かれ、本国アメリカではよもやの記録的大ヒット。日本でもカップルや学生といった世代にも受けてヒットしたことが記憶に新しい。オリジナルでは幼少パートと大人パートが交互に描かれたが、本作では幼少期に的を絞ったことでホラー映画であると同時にジュブナイル映画としても絶妙なバランスを見せた。ルーザーズクラブの少年少女たちがオリジナルより凶暴性を増した殺人ピエロと堂々と渡り合い、時に葛藤する姿も青春の冒険譚として重なるところ。続編であり大人期を描くチャプター2の公開も待ち遠しい。

■『サスペリア』


サスペリア [DVD]



どぎつい原色ライトの多用や魔女をモチーフにしたオカルティズムで、いまなおホラー映画ランキング上位に食い込むダリオ・アルジェント監督の『サスペリア』。ジェシカ・ハーパーの可憐な佇まいが魔女の巣食うバレエ寄宿学校の雰囲気と絶妙にマッチしているのも特徴であり、美女を撮らせたらピカイチのアルジェントだからこそ完成させることができた、ホラー映画におけるひとつの到達点ではないか。

そんな作品だからこそ、リメイクされると聞いた時には大層驚いたものである。製作延期などの期間はあったものの、『君の名前で僕を呼んで』をヒットさせたルカ・グァダニーノ監督がメガホンを握るとの情報がもたらされた日にはなおのこと我が目を疑ったものだ。“あの”サスペリアをリメイクしようと決心するとは並大抵の覚悟ではなかったろうが、『君の名前で僕を呼んで』でイタリアの空気感を見事にスクリーンに刻み込んだグァダニーノ監督なら心配はないとすぐに納得した覚えがある。

実際フタを開けてみればドイツを舞台にどこか冷たく埃っぽさを覚える映像は、生まれ変わったグァダニーノ監督版の『サスペリア』の中で十分に機能を果たすことになった。さらにアルジェントよりも直接的な痛みを見せつける演出は序盤から全開となり、某キャラが人として有り得ない形へと変形していく様は恐怖とは異なる得体の知れない感覚を観客に植えつけている。その掴み取れない感覚をずっと抱えたまま物語はより深遠な闇へと踏み込み、アルジェントが語ってみせた悪夢よりも狂気的で禍々しい赤の世界を展開してみせた。もはや「『君の名前で僕を呼んで』の監督だから安心」というレベルではない。むしろ良い意味で「『君の名前で僕を呼んで』と同じ監督とは思えない」ほどの衝撃が、おどろおどろしい余韻をもたらす結果を招いたのだ。

■『エイリアン コヴェナント』


エイリアン:コヴェナント (字幕版)



現在81歳にしてなお精力的に作品を発表し続けている、巨匠リドリー・スコット監督。その名を一躍世に知らしめたのが、宇宙生物のデザイン性を大きく覆すことになった1979年製作の『エイリアン』だ。H・R・ギーガーデザインのエイリアン・ビッグチャップは、長く突出した頭部、口からもうひとつの口が飛び出すインナーマウス、強靭な外骨格といった特徴を持つ明らかに異質な存在。シガニー・ウィーバー演じるリプリーをはじめとした宇宙船ノストロモ号のクルーを恐怖の渦に叩き込んだエイリアンは、第4作に至るまでその起源が語られることはなかった。

そんな“エイリアンの起源”に、よもやリドリー御大自らが答えを出す日が来ようとは誰が想像できただろう。『エイリアン』の前日譚にあたる『プロメテウス』を発表してエイリアン誕生の一端を明かし、続く『エイリアン コヴェナント』ではより踏み込んだ展開でエイリアンの進化を描くことになった。もはやその概念は哲学的な領域にまで達していて、恐怖の根源たるエイリアンの存在が神格化されたような印象も受ける。『エイリアン』シリーズは作品を追うごとに監督が変わり作風もそれぞれの作家性が反映されたものになったが、『プロメテウス』以降は改めてリドリー・スコットの手中に収まった形だ。しかし『エイリアン コヴェナント』をもってしても全ての謎が明かされたとは言い難く、母体であった20世紀FOXがディズニーに買収されたために、今後の展開にどのような影響が出るのか。動向に注目したい。

■今後の公開待機作品


“往年の名作”と呼ぶにはそれほど時間が経ってはいないと思いつつ、邦画ではかつて『リング』でJホラームーブメントを生み出した中田秀夫監督が『リング2』以来久しぶりに貞子の恐怖を描く。タイトルそのものもズバリ『貞子』で、あらすじを読む限りYouTuberが登場するなどビデオテープからしっかりと現代へのアップデートがなされている様子。『ザ・リング2』でハリウッドに渡った中田監督が、改めて貞子の恐怖をどのように描くのだろうか。


 ©2019「貞子」製作委員会


7月19日の日本公開が決まっている『チャイルド・プレイ』も、80年代にヒットしたスラッシャーホラーの名作。次々に人を血祭りにあげていく殺人鬼チャッキーは、“人形”とはいえその実力を侮ってはいけない。ナイフを手に執拗に追いかけてくる小さな狂気の塊は、ひたすら醜悪であり殺人を楽しむ姿は邪鬼そのもの。シリーズを重ねながらついには結婚まで果たしたチャッキーだったが、改めて生まれ変わる『チャイルド・プレイ』では『スター・ウォーズ』シリーズのルーク・スカイウォーカー役マーク・ハミルがチャッキーの声を演じるというのだから驚きが大きい。


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これらの作品に続き、今後どのような過去作にスポットが当てられるのか。期待して情報を待ちたい。

(文:葦見川和哉)

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