映画ビジネスコラム

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2019年05月09日

【意外と知らない】映画館の鑑賞料金をいつでも安くする方法

【意外と知らない】映画館の鑑賞料金をいつでも安くする方法




TOHOシネマズが6月1日より100円値上げになります。(その後松竹系も値上げ追随を発表しました)

ただでさえ高いという印象を持たれることの多い映画館のチケット代ですが、100円の値上げはさらにそのイメージを強くしそうです。

しかし、日本の映画館の平均入場料金は、いろんな割引が提供されているので、実は毎年1200円〜1300円台なのですが(映連調べ)、いつでもそれぐらいの値段で映画を観られるといいなと思いませんか。

実はいつでも映画館にて安い料金で映画を観る方法があります。ただし、いくつか条件はあります。この記事ではその方法を紹介したいと思います。


日本映画テレビ技術協会に入会するといつでも映画館が安くなる


その方法とは、「日本映画テレビ技術協会」の会員になること。

入会すると会員カードがもらえるのですが、それを映画館の窓口で提示すれば、この協会と提携している興行組合に加盟している映画館であれば、いつでもシニア料金と同じ価格でチケットが購入できるようになります。




日本映画テレビ技術協会の特徴は入会の敷居の低さです。専門団体や協会の割引施策は、どんな業界でもやっていると思いますが、大抵は一般の人には入会できません。しかし、日本映画テレビ技術協会の入会資格は、「映画、テレビジョンの技術及び映像表現に関連する業務に従事する方 及び 学識経験者または、本会の目的及び事業に関心を持つ個人」です。関心の持つ個人なら入会資格があるので、業界で従事している必要はありません。

現に筆者はただのフリーライターですが、すんなり入会できました。映画ライターならギリギリ業界人判定なのかも?と思い、メールで事前に質問してみましたが、本当に一般の個人で会員になられている方もたくさんいらっしゃるとのことでした。

ただし入会金と年会費、会員発行費は必要です。入会金は5000円、会員発行費は毎年1000円、年会費は毎年15000円です。初年度は21000円が初期費用になります。(参照

1800円が1100円になる(6月以降のTOHOシネマズや松竹系映画館は1900円→1200円)ので、初年度の21000円を割引分の700円で割ると、ちょうど30ですから、月に2.5回映画館に行けば元が取れる計算になります。

ちなみに、学生の方は年会費が5000円なので、さらにお得です。映画製作を学んでいる大学生の方などはぜひ入会すべきと思います。


対象地域は限定的


ただし、この会員カードによる割引は日本全国の映画館が対象ではありません。以下の地域のみとなりますのでご注意を。

札幌市・宮城県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・愛知県・ 京都府・大阪府・ 奈良県・兵庫県・広島県・福岡市・愛媛県・香川県・高知県・徳島県

これは上記の地域の興行組合と日本映画テレビ技術協会とが提携しているため。興行組合には上部組織の全興連(全国興行生活衛生同業組合連合会)という組織があるのですが、全興連全体との取り決めではないんですね。

それと上記の地域の映画館であっても、組合に加盟していない映画館は割引の対象外です。加盟劇場一覧は全興連の公式サイトで確認できます。

東京都の加盟劇場を見てみると、大手のシネマコンプレックスはほとんど加盟をしています。

東京だと有名どころでは「アップリンク渋谷」や「ポレポレ東中野」が非加盟です。でも「アップリンク吉祥寺」は加盟していますので割引対象となります。吉祥寺と渋谷で組合への加盟状況が異なるのは興味深いですね。

それと、割引適用のためには映画館の窓口で会員カードを見せる必要があるので、ネット予約には対応していません。ですので、『アベンジャーズ』のような超話題作を封切り初日に観る場合、東京の映画館では使用が難しいかもしれません。もっとも、数日前に窓口まで座席予約しに行けば問題ありませんが。

なお、IMAXや3D上映などの特別興行に関しては対象外。その他、映画館ごとに少しずつレギュレーションが異なっている場合がありますので、使用前に映画館に問い合わせてみるのがよいでしょう。

実際に申し込んでみた


筆者も実際に申し込んでみました。

申し込み方法はこちらのサイトから申込書のPDFをダウンロードし、必要事項を記入、スキャンして顔写真(768x1024の背景無地で正面を向いたもの)をメールで送るだけ。申し込みが受理されたら、入会金などの初期費用を支払います。

支払い方法は、クレジットカード、現金書留、郵便振替の3つ。クレジットカードでの支払が一番手続きが早く済むでしょう。筆者の場合は申込書を送って10日程度で支払いまで済ませることができ、会員カードが自宅まで届きました。やり取りは全てメールで行うことができますが、郵送やFAXでの受付も行っているとのこと。

入会は、理事会の審議を経て正式に決定されるとのことですが、筆者の場合、特になにもなくすんなりと入会することができました。


実際に使ってみた


さて、映画館で実際に使用してみました。

会員カードを提示して初めて割引となるので、券売機ではなく人のいる窓口で購入します。都内のシネコンでは、劇場スタッフも見慣れているのか、すぐに1100円ですと対応してくれましたが、海老名のシネコンでは毎回スタッフの方がマニュアルのような冊子を見て確認していました。やはり都内には会員が多いのでしょうか。

横浜のミニシアター「横浜シネマリン」もカードを見せたら即座に割引価格を案内してもらえました。この手の会員の方はミニシアターの映画もよく観てそうですし、利用者が多いのかもしれないですね。まだオープンして間もない「キノシネマ横浜みなとみらい」では、マニュアルを確認してからの対応でした。まだオープン間もないから利用者が少ないんだなあと思いました。




というように、各映画館の対応練度にはバラツキがありますので、あまり上映時間ギリギリに行かない方が良さそうです。思わぬ時間を取られ、上映開始に間に合わないかもしれないので、カードを使う時は時間に余裕を持って行った方が良いでしょう。


入会メリットは映画館の割引だけじゃない


本会員の入会特典は、映画館の割引だけではありません。入会のメリットは他にもたくさんあります。

・機関誌「映画テレビ技術」が毎月届く

・映像技術者のバイブル「映画テレビ技術手帳」がもらえる

・協会発行の書籍の会員割引

・協会主催の各種セミナー等への参加者割引

・撮影部会、映像プロセス部会、テレビ映像部会、アニメーション部会、シアターシステム&ソリューション部会(TSS部会)、学生部会の研究会・研究試写会・見学会への参加

まず、季刊誌『映画テレビ技術』ですが、これは通常購入すると1500円(+消費税)です。これが毎月届くので、実はこれだけで年会費分の元は取れる計算になります。




『映画テレビ技術』は、その名の通り、映画やテレビ作品の技術についての専門誌で、ここでしか読めない記事やインタビューがいくつも掲載されています。最新号は800号記念でしたが、ここ10年の映像業界の技術の発展について様々な人が寄稿を寄せており、『多十郎殉愛記』の中島貞夫監督のインタビュー記事も掲載されています。

2018年12月号と2019年1月号では、『カメラを止めるな!』の撮影監督を務めた曽根剛さんの記事が前後編に渡って掲載されています。

もうひとつの「映画テレビ技術手帳」は、技術協会が毎年発行している映像技術に関する仕様をまとめた手帳です。撮影・照明、録音から映写にいたるまで網羅されており、これ一冊で映像技術の基本がわかります。

映画ファンに身近なところだと映写システムの違い、IMAXの仕様やドルビーアトモスの仕様の解説なども載っています。レンズの被写界深度表などもあるので、写真が趣味の方などは重宝するかもしれません。その他、海外の主な国の電圧・周波数表なども載っているので、一般の方でも役立つ情報もあります。





日本映画テレビ技術協会は、日本で唯一の映像技術に関する法人団体で、映像技術に関する様々な研究やセミナーを開催し人材育成に努めるなど、日本映画とテレビ業界の技術の発展を支えています。この協会への入会は、ささやかながら日本の映画業界への貢献ともなるでしょう。

ネット予約なくても割と大丈夫な感じ


このカードでチケットを購入するようになっての感想ですが、案外ネットで予約しなくてもなんとかなるもんだな、という感じです。元々筆者は、超話題作は封切りから少し日を置くか、平日昼間に観に行く傾向があるので、デメリットをあまり感じないということかもしれません。それと、筆者がよく行くのは海老名や厚木の映画館なのですが、都内の劇場ほどには混雑しないのも大きいかもしれません。

一番大きなメリットの実感は、今までは1日に観たら安いなとか、14日ならTOHOシネマズは安いから少し待とうかなとか、ヒューマントラストシネマ系列は水曜なら安いなとか、割引デーを考慮しながら鑑賞スケジュールを考えていましたが、それを考慮することなく、映画鑑賞スケジュールを考えられるようになって、すごく自由を感じるようになったことです。

その他、個人的な実感としてパンフレットに手を出しやすくなりました。映画パンフレットは700円台のものが多いので、ちょうど割引分くらいの値段なんですよね。


筆者は、映画館に行く頻度がさらに増しそうですし、機関誌の『映画テレビ技術』もすごく勉強になります。映画ファンにとってのメリットがは多く、入会して損はないと思いますので、ぜひ入会してお得な映画ライフを手に入れてください。

注:本記事の情報は、全て2019年4月29日時点のものです。

(文:杉本穂高)

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