『貞子』塚本高史インタビュー|20年を振り返って「昔は頑なに生意気だった(笑)」
社会現象を巻き起した伝説的ホラー『リング』シリーズの最新作『貞子』が、2019年5月24日(金)より公開。第1作目の公開から20年経った今、オリジナルスタッフが再集結し、SNSが普及する現代を反映した新たな恐怖を世に送り出していく。
本作で事件に巻き込まれていく石田祐介役を演じた塚本高史さんに、本作の魅力やご自身の20年を振り返ってのお話を伺いました。
──ホラー映画へのご出演は本作が初めてですよね?
塚本高史(以下、塚本):そうですね。がっつりホラーというのは初めてですね。『リング』は高校生の頃に観ていたので、まさか20年経って、自分が同じシリーズの作品に出演するなんて思っていなかったです。すごく怖かった印象がありますし、そのあとの『呪怨』とかは怖すぎて観ていないです(笑)。
──今はそれこそSNSで情報を知ることができるので、当時はより怖さがありましたよね。
塚本:当時は本当に呪われると思ってましたから(笑)。偽物の『貞子』のビデオが出回っていたりもしましたね。今の時代よりも、ホラー作品の信憑性があったと思います。
──では、石田祐介という役を、どのように受け止めて演じられたのでしょうか。
塚本:動画クリエイターという役柄で、(池田エライザ演じる)茉優や(清水尋也演じる)弟の和真を事件に巻き込んでしまうキッカケになる人物なんですが、中立というか人間っぽい等身大の、男の先輩というイメージを受けました。
僕にとっては投稿動画制作の裏側でどういうことをしているのかあまりわからなかったので、現実味があまりなくて。石田に関していえば、一回バズっちゃえばなんとかなるよと楽観視しているような先輩の役だったので、チャラくはないけど、あまり実態が分からない人ですよね。
──確かに、どんな人なのか掴めないなという印象を受けました。
塚本:それでいいと思うんです。だから僕の役柄を紹介するとき言葉で表すのはすごく難しいんですけど、謎な人ですね。でも最後は、茉優の兄弟に対する真っ直ぐな気持ちに触発されて、手を貸すというように心情が変わっていく役柄でしたね。
──塚本さんは池田さん、清水さんと一緒のシーンが多かったですが、お二人と共演されてみていかがでしたか?
塚本:清水くんとは、和真の動画がバズらなくてモヤモヤしているところで僕が助言を与えるという関係性だったんですが、熱いお芝居ができたのでよかったです。池田さんは、サバサバしていて、とても気持ちのいい人でした。役柄も凛とした強いお姉さんだったので、彼女が集中していれば現場もそうなるし、引っ張られるような、ついていこうと思わせてくれる人でしたね。
──撮影の合間に何かお話をされたりは?
塚本:日数が短くて撮影もタイトだったので、共演者の方々とは撮影に関すること以外はほとんど話さなかったですね。監督の撮りたい画がはっきりと決まっていたので、撮影もポンポン進んで待ち時間もほとんどなくて。
──タイトな中でもスピーディーに撮影が進んでいったんですね。
塚本:そうですね。僕がホラー作品が初めてだったので、監督もそれを分かっていたのか、本読みの段階で「ホラー映画だからお芝居も大きくしてください。普段やられているナチュラルなお芝居とはちょっとそぐわないかもしれませんが…」と言われていたんです。
本読みでそれをやったときに、お遊戯会みたいになってしまったんです。それが嫌で、現場に入ったら自然にやらせてくださいって生意気にも言わせていただいたんですが、実際に出来上がったものを観たら、監督の言うとおりにやっていてよかったなと思いました。監督には最初から完成形が見えていたんですよね。だからこそ、撮影もスムーズに進んだんだなって思います。
──ではホラーというジャンルだけでなく、芝居においても新しい経験になったということでしょうか。
塚本:そうですね。これまでやってきた現場とは全然違いましたね。
──本作を観て、『リング』を見返してみたのですが、リンクしている部分もありましたね。
塚本:そうですね。事前に予習をしてもらっても、観終わった後に過去の作品を見返してもらってもいいし、どちらでも楽しめると思います。最初の作品をタイムリーに観ていた人たちには懐かしいと感じてもらえると思いますし。昔はビデオだったけど、今回は動画なんだって時代を感じてもらえる作品だと思います。
──第1作目の『リング』が上映された当時は、塚本さんのデビュー時期とも近いと思うのですが、これまでの俳優人生を振り返ってみて、いかがですか?
塚本:14歳で事務所に入って22年目になるので、業界にいる時間の方が長いんですよね。この年になったからこそ、もしこの仕事をしていなかったら…?って考えることはあります。もちろんこの仕事をしていなかったら出会えない人もいただろうし、経験できないこともあっただろうけど、俳優じゃなかったらどういう暮らしをしていたんだろうって。
変化でいうと、20代のときは楽しければいいやって思っていたけど、30代後半になると、周りも年を取ってきますし、キャピキャピもしていないし、楽しいことばかりじゃない。でも、楽しめればいいっていう芯は変わっていなくて、今はもっと楽しいことないかなって追求するようになってきましたね。
──追求というのは、例えば?
塚本:音楽ですね。本業は役者ですけど、10代、20代の頃に比べると30代になってようやくやりたい音楽が見えてきて、仲間とも出会えて、形にできる環境も整ってきて、本業とはまた違ったところで力を入れられる楽しいことっていうのが20年経ってできているかなって。
──ちなみに、この仕事をされていなかったら何をされていたと思いますか?
塚本:学生の頃はJリーグ全盛期だったので、サッカー選手になりたかったですね(笑)。でもその矢先に事務所に入ったんです。あとはギタリストかな。
──やっぱり芸能関係のお仕事、という可能性も。
塚本:そうですね。畑は違うけど、表現するということに関したら同じ業界にいたかもしれないですね(笑)。
──俳優として、今後どうなっていきたいという思いはありますか?
塚本:マンネリというか、決まりきっている流れというのが嫌なので、そういうのを壊したいなって思います。いい意味で、20代の頃に忙しくしてきたから、今はひとつひとつの仕事を自分の中で納得できるものとして残していければいいなと。
10代、20代の頃って、自分の中で変なプライドがあって、人に強制、要求されることがすごく嫌だったんですよね(笑)。でも30代になって、20代の頃に比べると楽観的になりましたね。「なんでもやります!」っていう心境に変わったのが、いい意味で大人になったっていうことなのかな。昔は「笑ってください、飛んでください」って言われても、嫌だって言ってたんですけど、今だったら笑うし、ピョンピョン飛びますし(笑)。
──30代を越えて、何か心境の変化が?
塚本:一回やってみればいいじゃんって思うようになったんです。やってみて、かっこ悪かったり変だったら、違ったねってなればいいし。昔は頑なに生意気だったな…。なんだったんだろう(笑)。
──では最後に、ホラー作品の魅力と今作の見どころを教えてください。
塚本:今作を観て、音の効果ってすごく大事なんだなと思いました。そこで恐怖を与えるというか。監督にお芝居を大きくしてくださいって言われたのと通ずるのかもしれませんけど、リアルなお芝居だと音楽にまぎれてしまうんですよね。なので、いきなり大きい音が鳴ってビックリさせるというだけでなく、効果音によって演出される、常にある恐怖感も楽しんでいただきたいです。「どこで出てくるんだろう?」とか、「まだ来ないんだ」とか、そういう気持ちで常にドキドキしながら楽しんでもらえたらいいなと思います。
(写真:HITOMI KAMATA、インタビュー:大谷和美、文:榎本麻紀恵)
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