『カーマイン・ストリート・ギター』ほか<音楽界を支えた人々を描く音楽映画>4選




誰にでも“思い出の音楽”というものが存在するのではないだろうか。名曲を生み出してきたアーティスト、そして彼らを裏で支えてきた人々に焦点を当てた2019年公開の音楽映画4作品をピックアップ。

『グッド・ヴァイブレーションズ』(8月3日公開)


1970年代。紛争の真っただ中にある北アイルランドでは、音楽産業は衰退の一途をたどっていた。そんな中、テリーは一発発起で生計を立てるためベルファストにレコード店「GOOD VIBRATIONS」を開店する。ある日、パンクロックに夢中な若者たちが夜な夜なライブハウスで演奏していることを知ったテリーは、興味本位で見に行ってみることに。そこで出会ったバンド「RUDI」の演奏にほれ込み、自らレーベルを立ち上げて彼らのレコードをリリースする。「GOOD VIBRATIONS」の名は瞬く間に北アイルランドのパンクスの間に広まり、テリーの元には様々なバンドが集うようになるが……。
主人公たちの好きなもののために奔走する姿に胸が打たれる。

『ジョアン・ジルベルトを探して』(8月24日公開)


卓越したギター演奏と甘美な歌声で日本でも多くの熱狂的なファンをもち、「ボサノヴァの神様」と讃えられるジョアン・ジルベルト。しかし、2008年8月のリオ・デ・ジャネイロでのコンサート出演を最後に、公の場から姿を消してしまう。ジョアンに魅了されたドイツ人ジャーナリストのマーク・フィッシャーは執筆のため彼に会いにリオ・デ・ジャネイロに向かったが、夢叶わず自らの命を断ってしまう。
その話を聞いたフランスのジョルジュ・ガショ監督は、フィッシャーの夢を叶えるため、ジョアンを探してブラジル中をくまなく歩き続ける。旅の途中、偶然に出会う様々なブラジルの音楽家たちやジョアンゆかりの人びとの話から、物語は思わぬ方向へ進んでいく…。
果たして、彼はジョアン・ジルベルトに会うことが出来るのか?様々な人生が絡み合いながらボサノヴァの伝説の姿を追うドキュメンタリー。

『ブルーノート・レコード ジャズを超えて』(9月6日公開)


数々の傑作を世に送り出し、世界中の音楽ファンを魅了し続けるジャズレーベル「ブルーノート・レコード」設立80周年を記念して製作されたドキュメンタリー。第2次世界大戦前夜のナチス統治下にあったドイツからアメリカに移住したアルフレッド・ライオンとフランシス・ウルフ。大のジャズ好きだった2人は1939 年のニューヨークで「ブルーノート・レコード」を立ち上げた。アーティスト主導の録音体制を敷き、妥協することなく理想を求めるライオンとウルフの理念を、ハービー・ハンコックなど著名なアーティストの証言を基に解き明かしていく。今やだれもが知るレーベルも、始まりはたった2人の音楽好きだった―。
好きなものを仕事に、信念を貫いていくレーベルのあり方が描かれる。

『カーマイン・ストリート・ギター』(8月10日公開)


「カーマイン・ストリート・ギター」。それは、グリニッジ・ヴィレッジのカーマイン・ストリートに佇む“知る人ぞ知る名店”。本作では、豪華ギタリストらがふらっとお店に訪れ、プライベートの顔をのぞかせる。パティ・スミスの相棒であり長年彼女のバンドでリードギターを務めるレニー・ケイや、そのセクシーな声とルックス、そして巧みに操るギターを武器に若くしてデビューを果たし、現在はボブ・ディラン・バンドのギタリストとしても活躍しているチャーリー・セクストンなど。彼らは、ギター職人リックのギターを買うことや、自身のギター修理依頼ももちろんだが、何よりリックと他愛もない会話をするためにふらっとこの店を訪れる。そこには、現代社会では珍しいゆっくりとした心地よい時間が流れる。量産品ではなく、廃材から世界に一つだけのギターを作り出し、多くのアーティストを支えてきたリック。「楽器は生き続ける。生まれた楽器は、それぞれの人生を歩んでいくんだ。楽器づくりの醍醐味だよ」という彼の人柄溢れる生活を観ることが、本作の一番の醍醐味なのである。

『カーマイン・ストリート・ギター』イントロダクション


グリニッジ・ヴィレッジに位置する「カーマイン・ストリート・ギター」。 店員は、パソコンも携帯も持たないギター職人のリック・ケリーと、パンキッシュな装いの見習いシンディ、そしてリックの母親の3人のみ。世界中のギタリストを魅了する、 この店だけの“ルール”―それは、ニューヨークの建物の廃材を使ってギターを作ること。チェルシー・ホテル、街で最古のバー・マクソリーズ……、それらは長年愛されてきた街のシンボル。 工事の知らせを聞きつけるたび現場からヴィンテージ廃材を持ち帰るリックは、傷も染みもそのままにギターへ形を変えるのだった。 足早に表情を変えゆくニューヨークと、変わらずにあり続けるギターショップの愛に満ちたドキュメンタリー。

公開情報


監督・製作:ロン・マン
扇動者:ジム・ジャームッシュ
編集:ロバート・ケネディ
出演:リック・ケリー、ジム・ジャームッシュ(スクワール)、ネルス・クライン(ウィルコ)、カーク・ダグラス(ザ・ルーツ)、ビル・フリゼール、マーク・リーボウ、チャーリー・セクストン(ボブ・ディラン・バンド)他
音楽:ザ・セイディース
原題: Carmine Street Guitars
2018年/カナダ/80分
配給:ビターズ・エンド
© MMXVⅢ Sphinx Productions.
http://www.bitters.co.jp/carminestreetguitars/

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