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『AI崩壊』と、合わせて観たい地味にすごいAI系SF映画たち

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(C)2019「AI崩壊」製作委員会



2020年1月31日より公開となる大沢たかお主演の映画『AI崩壊』は、今から10年後の2030年の近未来を舞台に、国家として崩壊寸前の日本のライフラインとなって久しいAI(人工知能)が突如暴走し、人間の生きる価値を選別しながら殺戮していくという、決して絵空事ではすまされない衝撃の内容です。

AIと人間の関係性は、それこそ日本でも『鉄腕アトム』の昔からずっと描かれてきている事象ではありますが、ついこの間までは未来の夢物語と思われていたものが、今や身近なものになりつつあることに驚異すら覚える方も多いことでしょう。

(いよいよSFが“サイエンス・フィクション”から“サイエンス・ファクト”の時代になってきた! とでもいうべきか……)

またそれに伴い、最近はAIと人間の共闘よりも、AIが人類にもたらす脅威を描いたディストピア・タッチの作品が再び増えているような気もしないではありません。

それはさておき、『ブレードランナー』2部作はもとより『A.I.』や『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』『アンドリューNDR114』『アイ、ロボット』『イーグル・アイ』[her 世界でひとつの彼女』『チャッピー』『エクス・マキナ』『トランセンデンス』『アリータ バトルエンジェル』などなど、今や1冊の本が優に書けるほどの多さを誇るAI関連SF映画。

今回はその中で、ちと地味で渋くはありますが、未見の映画ファンにオススメしたいものを2本ご紹介したいと思います。

AI系SFに西部劇タッチまで
網羅した『オートマタ』




(C)2013 AUTOMATA PRODUCTIONS, INC.  



2014年製作の『AUTOMATA オートマタ』は、太陽のフレア光増加によって地球が砂漠化し、人類の97パーセントが死滅した2044年の未来に開発されたAI搭載型機械人形“オートマタ”と人間の関係性を描いたものです。

そもそもは人間に代わって過酷な環境下の諸作業に従事するために作られ、あらゆる生命体に危害を加えることや、自分自身で修理&改造することを禁止する制御機能が組み込まれているオートマタ。

しかし、あるとき改造されたオートマタが発見されたことで、オートマタを製造する大企業に所属する保険調査員ジャック(アントニオ・バンデラス)が調査に派遣されます。

そこで彼が知る、驚愕の真実とは……!

一見『ブレードランナー』や『アイ、ロボット』など過去のAI名作映画の良いとこ取りといったテイストの作品ではあり、そもそもアイザック・アシモフが小説『堂々めぐり』の中で描いたロボット三原則を大いに意識し、その影響も濃い作品となっています。

スペインとブルガリアの合作映画で、監督もスペイン人のガベ・イバニェス。もっとも、本作の脚本を読んで感銘を受けたアントニオ・バンデラスが製作に参与したことで、ディラン・マクダ-モット、ロバート・フォースター、メラニー・グリフィスなどのハリウッド・スターも多数登場し、映画に膨らみを与えています。

では、アントニオ・バンデラスは一体この作品のどこに惹かれたのか? 

正直、そこそこ頑張っているプログラム・ピクチュアではあるものの、ストーリーや世界観などに目新しいものは見い出せないかな……。

などと思いながら見ていたのですが、後半に突入するに従い「なるほど、そういうことか」と、じわじわ感嘆させられる展開へ誘われていきます。

このあたりは見てのお楽しみとしてあえて記さずにおきますが、人間とAIは共存共栄できるのか? といった、やがて来る未来社会でリアルに論じられることになるであろう命題に対しての、ある一つの可能性が提示されていきます。

もちろんその答えに対して賛否はあるでしょうし、全体的に描写不足の感が否めない部分もありますが、作品が内包するメッセージに共感できた方ならば、オートマタに人間以上の温かみを感じられることでしょう。

派手なアクションなどは期待せず、むしろ『スター・ウォーズ』が登場する以前の1970年前後の反体制的マインドとヒューマニズムを内包したSF作品として、そしてどこかしら往年の西部劇としてのスピリットを併せ持つ作品と認識しながら鑑賞することをお勧めします。

スキンヘッド姿のアントニオ・バンデラスの渋みあるかっこよさも特筆しておきつつ……。 

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近未来SFメロドラマ
『EVA〈エヴァ〉』




 (C)Escándalo Films / Instituto Buñuel-Iberautor



映画『EVA〈エヴァ〉』もスペイン製SF作品で、監督はバイオレンス・アクション映画の隠れた快作『ザ・レイジ 果てしなき怒り』(15)のキケ・マイーヨ監督の2011年度作品。

舞台は2041年。雪深い故郷の大学に乞われて10年ぶりに帰省した科学者のアレックス(ダニエル・ブリュール)は、そこで一時中断していた自立型ロボットの製作を再開します。

既に仲間たちの手でロボットは完成に近づいていて、あとは人工知能を埋め込むだけ。

アレックスは兄の愛娘エヴァ(クラウディア・ヴェガ)と出会い、彼女の思考をモデルにした脳回路を作ろうとします。

実は兄の妻ラナは、かつてアレックスの恋人でした。

アレックスはエヴァのデータを取っていきますが、ふたりが会い続けていることを知ったラナは、それを危惧していきます……。

設定こそロボットが日常的に人間社会になじみ始めている近未来ですが、そこで描かれるのは意外にドロドロとした人間模様。ちょっと昼メロでも見ているかのような気分にもさせられる瞬間もありますが、さすがに今から20年後はともかくとして、将来はこういったSF的な設定下でのドラマも珍しくはなくなっていくのかもしれません。

またSFに精通している方ならば、割かし早い段階で衝撃の真相なども容易に予測できることでしょうが、ロボットのペット(見ていて思わず欲しくなります)やヘルパー・ロボなど、世界観が実に上手く構築されているので、最後まで飽きずに見入ることができるでしょう。

アレックスがなぜ10年前にラナと別れて故郷を去ったのか? などの理由が明確に描かれないことなどで賛否もありますが、見る側にそれらを想像させることで作品そのものを幻惑的にさせてくれるメリットももたらしているようには思います。

特筆すべきはエヴァを演じるクラウディア・ヴェガの存在感で、白い雪と赤いコートの対比も美しく、どこかしら『シベールの日曜日』のパトリシア・ゴッヂなどのロリータ系ヒロインを彷彿させるものもありました。

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それにしましても、さすがはファンタスティック・ジャンルのメッカでもあるシッチェス・カタロニア国際映画祭を抱くスペインの映画界。『オートマタ』にしても『EVA』にしても、SFを日常的なレベルで描こうとするセンスは、日本の映画界なども大いに見倣うべきところがあるでしょう。

(文:増當竜也)