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2020-05-11

コラム

感動作『戦場のメロディ』をお家時間にぜひ観てほしい「3つ」の理由!




第6回:『戦場のメロディ

緊急事態宣言の更なる延長が、先日発表されました。

しかし、各地域によってその延長期間は異なっており、広島や長野、新潟などでは映画館での上映が再開されたのですが、残念ながら首都圏での映画館再開は、まだまだ先のようです。

そのため、依然として各種の配信サービスに頼らざるを得ない状況が続いているのですが、各配信サービスによって作品ラインアップが微妙に異なっていたり、検索機能の使い難さのために好みの作品を見つけにくいなど、毎日の作品選びに頭を悩ませている方も多いと思います。

そんな方たちのために、Amazonプライム・ビデオで鑑賞可能な韓国映画の中から、特にオススメの作品を紹介する、この連載。

第6回で取り上げるのは、2016年日本公開の韓国映画『戦場のメロディ』です。

朝鮮戦争によって親や家族を失った戦争孤児たち。そんな子供たちのために結成された児童合唱団の姿を通して、戦争の厳しい現実と将来への希望を描く作品なのですが、気になるその内容と出来は、果たしてどのようなものなのでしょうか?

ストーリー


朝鮮戦争まっただ中の1952年。過去に愛する家族を自分の目の前で殺され、戦友も失ったハン・サンヨル少尉(イム・シワン)は、失意のまま最前線から釜山の連隊へと転属されることに。
そこで彼を待ち受けていた任務は、戦争孤児たちの世話だった。サンヨルは、孤独に苦しむ子供たちを救うため「児童合唱団」を作ることを決意。戦争孤児たちを悪事に利用するカギ爪の男カルゴリ(イ・ヒジュン)の集落にいた子供たちも加えて、孤児院の院長ジュミ(コ・アソン)とともに、戦争孤児たちに歌を教え始める。
初めはぎこちなかった歌声にリズムと和音が生まれ、子供たちに笑顔が戻ってきた頃、戦地での慰問公演が決まる。だがそれは、戦火をくぐり抜けて向かう危険な挑戦だった…。


理由1:容赦ない戦争の現実が描かれる!


1951年の8月から1953年7月の休戦までの約2年間にわたる物語は、朝鮮戦争の中で人々に降りかかる過酷な体験と、そこからの再生を描くものとなっています。

予告編のサムネイル画像からは、児童合唱団を指導する兵士と子供たちの触れあいを描く心温まる作品? そんな印象を受ける本作ですが、映画の開始早々その予想は大きく覆されることになります。

何故なら、映画の冒頭から展開する激しい戦闘描写は、本格的な戦争映画さながらの地獄絵図となって観客に迫ってくるからです。

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押し寄せる敵の大群との接近戦で生き残った主人公のサンヨルは、その後、釜山の23連隊に転属。部隊の敷地内に作られた孤児院の管理監督者に任命されることになります。

部隊の敷地内に設置された孤児院での平穏な日常は、冒頭の激しい戦闘と見事な対比を見せるのですが、ある日、町の浮浪児たちの厳しい生活ぶりを目の当たりにしたサンヨルは、彼らを加えた戦争孤児たちによる合唱団の結成を決意するのです。

実話をベースにしたストーリーだけに、大人たちが始めた戦争の犠牲になる子供たちの姿や、善悪の判断のつかない子供たちが悪い大人に搾取される描写など、容赦ない戦争の現実が描かれている本作。

外部の戦争孤児を合唱団に加えようとサンヨルに決意させた悲惨な出来事は、ぜひ本編でご確認頂きたいのですが、生活のために幼い命が奪われるその描写には、本作が伝えようとするメッセージが見事に込められているのです。

決して安易な感動ドラマには終わらせない、その真摯な姿勢と反戦への強い願いを、ぜひご自分の目でご確認頂ければと思います。

理由2:戦場に響く子供たちの歌声に癒される!



当初は児童合唱団の設立に難色を示した23連隊の連隊長ですが、対外的なアピールと自分の出世に役立つとの説明を受けて、合唱団の結成を許可することになります。

基地の中に設置された孤児院では、子供たちにも食事や衣類が与えられているのですが、一歩街中に出ると、そこには生きるために盗みを働いたり、大人に混じって働いている戦争孤児たちが存在しています。

この厳しい現実を目の当たりにしたサンヨルは、カギ爪の男カルゴリの下で働かされていた子供たちも合唱団に迎え入れることを決意するのです。

もちろん全員を加えることはできないので、歌の上手い子を選ぶためのオーディションが行われるのですが、この時の子役たちの素晴らしい演技は、戦時下の厳しい暮らしの中で、大きな救いとなっています。

カルゴリの集落で働かされていたドングとスニの兄妹と、基地内の孤児院に保護されていたチュンシクも、このオーディションで運命的な再会を果たすのですが、過去に因縁を持つドングとチュンシクは、ここでも激しく対立してしまいます。

しかし、新たな孤児たちを加えて一から練習を始め、次第に合唱団としてのまとまりが生まれていく中、ドングとチュンシクの間にあったわだかまりも、サンヨルの心からの説得と歌により次第に消えていくことになるのです。

こうして戦争孤児による合唱団は、ついに米軍司令部の前で初公演を行うことになるのですが、子供たちの歌声が客席の軍人たちの心を掴み、会場が一体となる展開は必見!

映画の冒頭で描かれた激しい戦争により、大切なものを奪われてしまった人々。

そんな中、同じように辛い経験をした戦争孤児たちの歌声が、人々の傷ついた心を癒し再び人々を一つに繋ぐという展開は、戦争という悲しい過去を乗り越えて将来へと進むための希望を、我々に与えてくれるもの。

加えて、児童合唱団の初舞台を見ている兵士たちが、次第に手拍子と笑顔で子供たちの合唱に参加していくシーンは、軍人たちの心にも子供の頃の純粋な気持ちや感情が残っていることを、観客に伝えてくれるのです。

子供たちの笑顔と彼らの将来が奪われることが二度とあってはならない、そんな力強いメッセージを、ぜひ感じて頂ければと思います。

理由3:子役たちの名演技が泣ける!



戦争で家族を亡くした孤児たちのため、児童合唱隊を作って彼らに歌を教えようとするサンヨル。

部隊の敷地内に設けられた孤児院だけでなく、町の孤児たちを合唱団に加えたために、子供たちの中にも争いや衝突が起こるのですが、それを合唱のハーモニーに例えて諭すサンヨルのセリフは、子供たちのケンカという枠を超えて、戦争という国同士のケンカへの解決法を示唆するものとなっています。

加えて、大学で音楽を専攻していたサンヨルが、子供たちに歌を教えることで自身の過去のトラウマと向き合う展開は、音楽や芸術文化が人間にとって心の拠り所であることを、観客に教えてくれるのです。

戦場で苛酷な体験をしながらも、決して他者への思いやりを忘れないサンヨルの存在も魅力的ですが、何と言っても本作成功の大きな要因は、出演する子役たちの素晴らしい演技にあります。

実際、子供たちの歌う合唱曲がたっぷり聞けるのに加え、どの子役も自然で素晴らしい演技を見せてくれるのですが、中でも注目して頂きたいのは、第3回の連載でも紹介した『犬どろぼう完全計画』の天才子役、イ・レの存在!

子役ながら大人びた表情で、観客の涙を誘う名演を見せた『犬どろぼう完全計画』に続き、本作では悲しい過去を持ちながら明るく生きる少女スニを見事に演じ、その素晴らしい歌声も披露してくれているからです。

戦争中に起きたある悲しい出来事により、得意な歌を二度と歌わないと心に決めたスニ。この難しい役柄をイ・レがどう演じているのか? この点にもぜひご注目頂ければと思います。

最後に



映画の冒頭から描かれる壮絶な戦闘の様子や、ドングとスニが孤児となってしまう原因、更に主人公のサンヨルが兵士として戦うことになった残酷な過去など、登場人物の背景がしっかり描かれている、この『戦場のメロディ』。

戦争によって家族を失い人生を狂わされた人々が、子供たちの歌声によって救われ、将来への一歩を踏み出す姿が描かれる本作は、単なる涙と感動を売りにした作品とは一線を画す内容に仕上がっています。

例えば、基地内に設けられた孤児院での平穏な生活と、街中で必死に生きる戦争孤児たちとの対比に加え、自分たちの悪事に子供たちを利用するカルゴリや、戦闘地域に児童合唱隊を慰問に行かせる連隊長など、そこには大人や戦争の犠牲になる子供たちの姿が、きちんと描かれているのです。

加えて、一見悪役のように思えるカルゴリもまた戦争によって人生を狂わされた存在であり、スニに対しての保護者的な行動や、生きるのに必死で子供たちを搾取していたことが観客にも提示されるなど、善と悪で明確に割り切れない人物設定が用意されている点も、本作が鑑賞後に深い余韻を残す理由と言えるでしょう。

ただ、個人的に一つ不満を感じたのは、終盤の展開で病室にチュンシクがいなかった点でした。

お互いの素直な気持ちを伝えて和解を果たしたドングとチュンシクですが、病室のシーンで二人が顔を合わせての和解が描かれていれば、ラストに登場する合唱隊公演での感動が更に増したのでは? そう思わずにはいられなかったからです。

とはいえ、子供たちの自然な演技と歌声の素晴らしさの前には、こうした細かい不満や疑問が全て許せてしまうのも事実。

これから鑑賞される方のために詳しく書くことは避けますが、戦争がもたらした数々の過酷な体験を乗り越えて、子供たちの歌声が多くの聴衆の心を癒し、新たに迎えた平和な時代の象徴として流れる展開には、きっと多くの方が共感・感動せずにはいられないはず!

悪い大人たちに利用されたり、戦争の犠牲となる子供たちの姿を描くことで、反戦へのメッセージがより際立っている、この『戦場のメロディ』。

ドングとスニの兄妹とサンヨルの過去が重なる展開や、幼い兄妹の深い愛情が観客の涙を誘う作品なので、こちらも遠慮なく泣ける自宅での鑑賞がオススメです!

(文:滝口アキラ)