弘兼憲史「獺祭の挑戦」冒頭無料配信!〜中興の祖・桜井会長対談とともに〜
島耕作ラベル
2018年に西日本を襲った豪雨では旭酒造も大きなダメージを受けた。温度管理が数日できなくなった獺祭をどうするか、桜井会長は弘兼さんに相談をする。そこで出来た獺祭の島耕作ラベルとは……。
──お二人は良いご関係でずっとお付き合いされていると思うのですけれど、お互いどの部分が付き合いやすいですか?
弘兼:桜井さんは、こんな大社長なのに気さくにぼくらと一緒に遊んでくれるのがうれしいですね。
──年はいくつ違いますか?
弘兼:僕よりちょっと下ですね。
桜井:僕は25年(昭和。1950年)だから。
弘兼:僕は22年(昭和。1947年)ですから。
──会長はどうですか?弘兼先生のことは。
桜井:同じ言葉を返すんですけれど、気さくに付き合って頂いているんです。
弘兼:岩国弁でしゃべるし(笑)。
桜井:それと、あんまりビジネスの付き合いがないので生ぐさい話にならない。だから気楽にお付き合いできるというのはありますね。
──獺祭の島耕作ラベル(2018年の西日本豪雨で被災した旭酒造の獺祭を島耕作のラベルデザインで販売、話題となった)があった
弘兼:桜井さんに被害があったでしょう?と聞いたらあったというから、他の知り合いと一人100万円ずつくらい、売れない獺祭があるなら買うよ、と電話したんです。そうしたら「飲んだら美味しいんだ」というんですね。
そんなに悪くないのであればもっと違う救済方法がないかな、と考えていたら、島耕作ブランドで出したらどうか?といわれて。
そして、ただ売るだけではなくて高級ブランドも含めて1本1,000円、それにベタ付の災害給付金200円をつけて売り出したんです。そしたら発売当日に全国で58万本完売して、1億1600万円を災害地に寄付することが出来ました。
桜井:最初は廃棄してもいいくらいに思っていました。
弘兼:温度管理が三日くらできなかったそうです。
──その後に立て直す?
桜井:当初はダメだろうなと。その後一週間くらい経ったところでは厳しいだろうなと。それこそ今のコロナのトリアージ(患者の重症度に基づいて治療の優先度を決めること)じゃないですけれど、これはダメ、こっちはいいとかで良い方から救っていこうとしましたからね。それが島耕作ラベルになったんです。
──比較的いけるというやつを?
桜井:最終的にはほとんどはなんとかいけたんですね。
弘兼:温度をもういちど管理して立て直したんですか?
桜井:そうなんですよ。もう一つは、さらに新しい酵母を添加するなどしました。
弘兼:それは良い経験になったんじゃないですか?駄目になってもこういう手当をしたらちょっと立て直せるものだなあという。
桜井:おそらくあるでしょうね。うちの製造担当者は、ほかの経験豊かな杜氏さんがやったことのない、昔の、太平洋戦争後の酒蔵の杜氏さんがやってたくらいのことをやっていますからね。
──結果としてそれはノウハウになるかも分からないですね。
桜井:ただそれは、今やれと言われたら、やりませんよ(笑)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。