映画コラム

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2020年09月03日

『僕たちの嘘と真実』レビュー:欅坂46の過去・現在から未来を示唆する力作

『僕たちの嘘と真実』レビュー:欅坂46の過去・現在から未来を示唆する力作



改めて痛感させられる
メンバーの深い絆




本作はそういったこちら側の戸惑いや疑問の多くに、かなりの部分で真摯に答えてくれるものに成り得ていました。

絶対的センターとして瞬く間にグループのカリスマ的象徴と化していった平手友梨奈は、そのときそのとき何を考えていたのか?

またそのときそのときのメンバーは、彼女に対してどういった想いを抱いていたのか?

それらのことは実際に映画を見ていただければわかることなので説明は割愛しますが、すべてを見終えて痛感させられるのはやはり平手友梨奈とメンバーの深い絆であり、逆にその絆の深さが双方を追い込んでしまったところもあったのかもしれないということで、そこに改めて驚かされてしまう観客も多いことと思われます。

SNSなどでの心無い誹謗中傷も含めて、トップに立つ側の苦悩と孤独みたいなものが10代から20代にかけての少女たちに重くのしかかっていく中での、そのつどそのつどの彼女たちの、もしくはその周囲の人々の言動や対応などは、そのすべてが正しい判断であったかどうかは別として、常に状況と真摯に対峙していたことだけは間違いないでしょう。

そういった中で2019年2月27日に発表された8thシングル《黒い羊》が、今聞き直すと平手友梨奈をはじめメンバー全員の心の叫びでもあったように響いてなりません。

しかし、そういった真摯な叫びこそが多くの、特に若い世代の心を打つことになったのも間違いはなく、それこそ先日の香港民主化運動の先頭に立っていた周庭(アグネス・チョウ)さんが逮捕(その後保釈)された際に「《不協和音》の歌詞を思い出した」というエピソードも何やら象徴的です(ちなみに彼女は自他ともに日本のポップカルチュアやアニメをこよなく愛する“オタク”としても有名です)

欅坂46の5年の歩みは、ある意味“苦闘”といってもよいものかしれませんが、その間にファンに与えた影響力は国の内外を越えるほどのものがあった。

またそれだけ全力投球し続けた彼女たちの、これからの新しいステージは一体どうなるのか? にも刮目せざにはいられません。

個人的には2016年11月30日に発表した3rdシングル《二人セゾン》のような、切なく胸を打つ楽曲が欅坂46には本来似合っていたのではないかと思えてならない時期もありましたが、もうとっくにそういった域など越境してしまっている彼女たちの未来の羽ばたきを、これからも温かい目で見守っていきたい。

本作を見終えて多くの観客が、決意を新たにさせられることも必定でしょう。

(文:増當竜也)

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