映画コラム

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2020年12月14日

『約束のネバーランド』レビュー:ダークファンタジー禁断の実写映画化

『約束のネバーランド』レビュー:ダークファンタジー禁断の実写映画化



週刊少年ジャンプで連載され最もジャンプらしくないと言われたダークファンタジー『約束のネバーランド』が禁断の実写映画化。主演には浜辺美波、城桧吏、板垣李光人、渡辺直美、そして裏主役ともいうべき北川景子が強烈な存在感を発揮します。

浜辺美波と北川景子は『君の膵臓をたべたい』『センンセイ君主』につづいて3度目の共演となりますが、本格的にやり合うのは今回が初めてとなり、バチバチと火花を散らします。
 

あらすじ



色々な世代の孤児が集まる「孤児院」・グレイス=フィールド(GF)ハウス。

院のシスターで“ママ”呼ばれ慕われるイザベラのもとで暮らす子供たちは、特殊な教育を受け6歳から16歳までの間に里親のもとへと送り出されていました。

間もなく16歳になるエマ、ノーマン、レイの三人は頭脳明晰で、常にテストで満点を記録。また、身体能力にも恵まれていてます。この三人はGFハウスでは年下の子供たちを世話し、イザベラを支えてきました。

ある晩、少女・コニーの里親が見つかり、急遽外の世界に出ることになりました。ところがコニーがお気に入りのぬいぐるみを置き忘れたのに気が付いたエマとノーマンはそれを届けようと後を追います。向かったのはGHハウスの敷地と外界を繋ぐ唯一の接点“門”。門に近づくことは禁じられていましたが、二人は、後で叱られようと決めて後を追います。

しかし、二人が、そこで目撃した者は、コニーが“鬼”と呼ばれる怪物に食肉として出荷される瞬間でした。GFハウスの真相(=食肉用の飼育場)とイザベラの正体を知った二人はレイに真実を告げて子供たち全員を一度にGFハウスから脱走させる計画を練り始めます。

ぬいぐるみを見つけたイザベラは子供たちの誰かが、真相に近づいたと考え、追加の監視者としてシスターのクローネを迎え入れます。

クローネはイザベラに忠誠を誓うふりを見せながら、イサベラの追い落としGFハウスのママとなることを考えていました。子供たちが脱獄を考えていることを知ったクローネは子供たちと協力関係を築きますが、イザベラに狙いが読まれ、逆に食料として出荷されてしまいます。

それでも年長の子供たちを仲間に引き入れ計画を進めるエマたちですが、イザベラにも脱獄の下見が見つかってしまい、さらにノーマンの出荷が告げられてしまいます。見送ることしかできずに無力感にさいなまれるエマとレイ。イザベラは運命には逆らえないと言うこと強烈につきつけます。

徹底的に再現された世界観



GFハウスに出荷される期限が12歳から16歳に変更されましたが、それ以外は原作にかなり忠実に作られています。北川景子にイザベラ役のオファーが来た時には“原作に忠実であること”が条件として出されたというエピソードがあるくらいです。原作の改編をほぼ行わず、全国津々浦々を巡って、GFハウスに相応しい建物、世界を創り上げる森を見つけ出しました。

風格の漂うGFハウスには福島県にある国の重要文化財の天鏡閣の外観と丁寧に作りこんだ内部セットを使い分けて対応。森は長野の高原を探し出しました。森の撮影の時には毎日軽い登山をしないとたどり着けなかったと言うことですが、その甲斐もあって時には子供たちを包み込み、時には子供たちの前にそびえる壁のような存在感を得ることができました。

座長の風格・浜辺美波の存在感



孤児院が舞台と言うこともあって、子役が多い現場をまとめ、引っ張っていっるのはやはり主演の浜辺美波です。

ブレイク作で、北川景子との初共演作品となった『君の膵臓をたべたい』から3年。『映画・賭ケグルイ』『屍人荘の殺人』などでメインを張り続けるようになり、今ではすっかり日本映画を代表する“主役型”の若手俳優となりました。

今回の映画『約束のネバーランド』でも陽性でポジティブなヒロイン・エマを好演しています。原作の熱烈なファンだったと言うことですが、その原作愛を原動力にこの突飛な世界観にリアリティと説得力を与えています。

また、かねてから見え隠れしていた身体能力の高さが今作ではフルに発揮されています。

大抜擢に応えた城桧吏と板垣李光人とそして圧倒的な存在感の北川景子



浜辺美波演じるエマと共に脱獄計画を練る二人の少年にレイとノーマンという役に抜擢されたのは城桧吏と板垣李光人。

城桧吏はあの『万引き家族』の長男役をオーディションで勝ち取った存在で、現在14歳の期待の新鋭。一方の板垣李光人は『仮面ライダージオウ』にレギュラー出演して注目を浴びたモデルとしても活躍する18歳です。

ヒロイン・エマの浜辺美波に引っ張られるようにこの二人が存在感をどんどんと増してくるところもこの映画の見どころの一つです。

存在感ということで“ママ”ことイザベラを演じる北川景子はやはりというべきか別格の存在感です。



『ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-』『ファーストラヴ』と主演作・話題作が続きますが、“裏主役”ともいうべきイザベラ役を演じた今回の『約束のネバーランド』では若手キャストを受け止める側に回って抜群の存在感を見せています。

渡辺直美演じるクローネという飛び道具的なキャスティングの登場にも動じることもなく、見事に受け止めています。

周りのキャストが本格的な俳優でなかったり、キャリアが浅かったりしする面々が揃っていることもあって、この北川景子と浜辺美波の“裏表主役対決”は特に際立って見えます。



突飛でファンタジックな世界観という邦画においては鬼門と言えるジャンルをキャストの熱演とスタッフが築いた説得力と選び抜いたロケーションで成立させている『約束のネバーランド』。

また、ダークファンタジーであると同時に『カイジ』や『今際の国のアリス』などの頭脳戦バトル映画の要素も盛り込まれているのも見どころです。

何でも実写化することには賛否が分かれるところでしょうが、映画『約束のネバーランド』は想像以上にしっかりした作りの映画に仕上がっています。
こういう映画はちょっとと思い、『進撃の巨人』の映画版などを想像された方こそ、いい意味で裏切ってくれる映画になっているのでお試しください。。

(文:村松健太郎)

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©白井カイウ・出水ぽすか/集英社 ©2020 映画「約束のネバーランド」製作委員会

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