映画ビジネスコラム

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2021年02月06日

2020年 映画産業分析:コロナに耐えた東宝&配信を巡る「2つ」の現象

2020年 映画産業分析:コロナに耐えた東宝&配信を巡る「2つ」の現象


コロナの逆風に耐えた東宝

さて、全体の興行収入は54.9%の大幅ダウンでしたが、そんな状況でも東宝だけは好調をキープしています。今年の邦画の売上上位21本中、15本が東宝配給(うち一本はアニプレックスとの共同配給)と上位を独占。邦画全体の今年の映画産業は極端な「邦高洋低」と先に書きましたが、その実態は東宝の一人勝ち状態です。



驚くべきことですが、2020年東宝配給事業部の成績は前年比で93.3%をキープしており、ほとんど落ちてないんです。もちろん、これは『鬼滅の刃』のメガヒットが最も大きな要因ですが、そのほかにも東宝は『今日から俺は!!劇場版』や『コンフィデンスマンJP プリンセス編』などの話題作を、コロナ禍で座席販売数が制限されている中でも積極的に配給したことが功を奏したのでしょう。(参照

東宝など、日本映画各社がハリウッドメジャーに比べ積極的に作品を配給した理由は、いくつかあると思いますが、その一つに日本の映画会社は自社でたくさん映画館を運営していることが挙げられるでしょう。

映画館の運営が傾くと、それはグループ全体の業績の低下を意味します。反対にハリウッドメジャーは映画館を所有していないので、映画館の業績悪化は直接関係ないという立場です。これは各社のビジネスモデルや日米の法律の違いも絡んでくる問題ですが、制作・配給・興行を一社が全て束ねる日本式の運営方法は、コロナ禍で映画館を守るという点についてはプラスに働いたと言えるかもしれません。

同じことは松竹や東映にも言え、東宝ほどヒット作に恵まれていませんが、やはり2社ともそれなりに作品を配給し続けました。アメリカと日本では、コロナの蔓延状況も異なりますが、映画館の業績悪化は映画会本体の業績悪化につながる事業構造ゆえに、作品配給を止めない方が良いという判断もあったのだと思います。

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