映画コラム

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2021年02月20日

『はじまりのうた』でわかった「世界は今、キーラ・ナイトレイを中心に回っている」

『はじまりのうた』でわかった「世界は今、キーラ・ナイトレイを中心に回っている」


「はじまりのうた」作品情報

ニューヨーク。シンガーソングライターのグレタ(キーラ・ナイトレイ)は、同じミュージシャンの恋人デイブ(アダム・レヴィーン)に裏切られ、失意のままライブハウスで歌っていた。そこに偶然居合わせた落ちこぼれの音楽プロデューサー、ダン(マーク・ラファロ)はグレタの才能に惚れ、彼女にデビューの話を持ちかける。ところが、その録音はニューヨークの街角で行うという。セントラルパークやチャイナタウン、橋の下、路地裏、ビルの屋上、地下鉄のホームなど、グレタのゲリラレコーディングは続いていくが、この無謀な企画が小さな奇跡を起こし始める。やがてアルバムが完成したその日、誰も予想できなかった最高のはじまりが待っていた……。 



出演
キーラ・ナイトレイ/マーク・ラファロ/アダム・レヴィーン/ヘイリー・スタインフェルド/ジェームズ・コーデン/モス・デフ/シーロー・グリーン/キャサリン・キーナー ほか

監督
ジョン・カーニー/ヤーロン・オーバック

上映時間
104分
 

世界は今、キーラ・ナイトレイを中心に回っている

劇中、何かあるとすぐに役者をチャリに乗らせて疾走させる男として有名なジョン・カーニーの傑作。本作でチャリに乗るのはキーラ・ナイトレイである。ちなみに、地動説が定説となって久しいが、2010年代前半頃から「もしかしたら、今、世界はキーラ・ナイトレイを中心に回っているのではないか?」といった「キーラ・ナイトレイ動説」が一部研究者から聞こえてきてはいたものの、過去にあった「ウィノナ・ライダー動説」のように、どうしても決め手に欠ける点がネックとなっていた。

しかし、『はじまりの歌』により、ついに「キーラ・ナイトレイ動説」は動いているのに不動のものとなった。それどころか、世界は、というかむしろ宇宙はキーラ・ナイトレイを中心として膨張を続け、やがて縮小に転じ、いずれは森羅万象がキーラ・ナイトレイに収束していくのでは、などという理論を唱える学派も登場した。



役者の枠を超え、宇宙の中心点であるキーラ・ナイトレイが主演しているのだから、映画が素晴らしくないわけがない。

だが、例えキーラ・ナイトレイが彗星のように本作から飛び去ってしまったとしても、作品の素晴らしさは何ら変わらないだろう。

マーク・ラファロ、ヘイリー・スタインフェルド、そしてアダム・レヴィーンといった衛星たちが、彼女に負けないほどの輝きをみせる。そして、本作は愛に満ち、音楽に救われた者にしか作り得ない傑作だからだ。同年に『セッション』が公開されたのは偶然ではない。

本作の原題は『Begin Again』である。キーラ・ナイトレイは、ジョン・カーニーは、本作によって音楽映画の宇宙を、見事にもう一度ビッグバンさせてみせた。

(文:加藤広大)

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