映画コラム

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2021年03月08日

『ワン・モア・ライフ!』レビュー:92分だけ生き返った男の人生の懺悔と家族への愛

『ワン・モア・ライフ!』レビュー:92分だけ生き返った男の人生の懺悔と家族への愛



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

交通事故で死んだものの、寿命計算システムの故障で92分間だけ生命が延長されることになった主人公パオロの、ほんの少しのワン・モア・ライフ。

設定から、その92分をリアルタイムで突き進む話かと思いきや、意外にも回想シーンが主体で、主人公の生前の浮気癖を中心としたいい加減な生きざまが、時間軸を錯綜させながらノスタルジックに次々と描かれていきます。



要するに、これは生前ダメダメな人生を歩んでいた男の懺悔録みたいなもので、またそれゆえに彼は妻や思春期の娘、まだ小さい息子との家族仲を短い時間の中で復活させようと望むわけですが、それが叶うのかどうかは見てのお楽しみ。

(余談ですが、この作品、石田純一に見せたらどんなコメントするのかなと思いつつ公式サイトを開いたら、ちゃんと彼のコメントが載っていたので思わず吹き出してしまいました!?)



ゲラゲラ大笑いする類いのコメディではなく、かといってクスクスでもない、どちらかといえばシニカルな苦笑いが大半を占める作品。

ただし、舞台となるシチリア島の雰囲気が「死」の重々しさを払拭するとともに全体的にイタリア映画ならではの陽気な「生」を醸し出す効果をもたらしてくれています。

主人公に扮するピエール・フランチェスコ・ディリベルト(通称ピフ)の情けなくも妙に憎めない中年男っぷりもさながら、彼を監視する天国の役人(とどのつまりは死神です)に扮したレナート・カルペンティエーリの飄々とした存在感が何気にナイス。



映画の後半は彼を交えながらのリアルタイム劇がクライマックスを迎えますが、それにつれて一気にテンポもテンションも高まり、そしてラストは……!

最終的にはロマンティックな家族愛に集約されていくあたり、世の家族を持つ男性たちの共感を得られやすい作品ともいえるでしょう。

(あとは主人公みたいに愛娘に疎まれないよう、日々のマナーはちゃんとしておくことですね!?)

なお、本作の原作を直訳すると『取るに足らない幸せの瞬間』『取るに足らない不幸の瞬間』とのこと。

まさに人生とは幸も不幸も合わせての、取るに足らない瞬間の連なりであることを痛感させられること必至です。

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