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『アンモナイトの目覚め』レビュー:二大女優による愛のドラマを通しての現代社会への意見具申

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■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナン、押しも押されぬ二世代の名女優共演によるラブ・ストーリー……ではあるのですが、その点だけに注目してしまうと本質を見誤りかねない、幾重にも深みのあるテーマ性を内包した名作です。



ケイト扮する主人公のメアリー・アニングは19世紀に実在した著名な古生物学者ですが、女性であることと労働者階級の出身であったことから、論文発表も学会入会も認められませんでした。
(メアリーの死後163年後の2010年、英国王立協会は彼女を「科学の歴史に最も影響を与えた英国女性10人」のひとりに選んでいます)

シアーシャ扮する上流階級の若き貴婦人シャーロットは、流産のショックから立ち直れずにメアリーのもとに預けられますが、そこには「女性は子どもを産まずして価値なし」とでもいった当時(今も?)の風潮に吞み込まれてしまった犠牲者としての一面も見え隠れしています。



そんなふたりが世代も階級の差もお構いなしに狂おしいまでに愛し合っていくドラマを通して、フランシス・リー監督は男性優位社会および階級差別が今なおはびこる現代社会への意見具申を成していると捉えても良いでしょう。

その一方で、ふたりの名女優が織り成す愛の行方の美しいこと、そして静謐ながらも激烈なことこの上ない両者の演技合戦がそのまま愛の熱情に直結しているかのようでもあり、とにもかくにもふたりが一緒のシーンの艶めかしさはそこらの官能シーンなど足元にも及ばないほど美しく気品高くエロティックに映えわたっています。



特に学術肌で人間付き合いがへたくそなメアリーを、ケイト・ウィンスレットは最初は彼女だと気づかないほどのみすぼらしい雰囲気で佇まいつつ、やがてシアーシャと絡み合っていくことで、徐々に徐々に輝き始めていくさまを実に自然に醸し出してくれています。



また、ここ数年のシアーシャ・ローナンが出演する映画は本当に外れがないといった意見が飛びかうようになって久しいものがありますが、本作でまたその記録が更新されたようです。

このところ性別や身分の別、人種の別などをモチーフにした作品がこのところ激増している感があり、特に女性の自立を促しつつ男性社会を撃つ姿勢の作品は世界的に当たり前といった風潮になってきています。
(日本でもようやく今年『あのこは貴族』みたいな秀作が出始めました)

その中でも本作は特に一歩飛びぬけて優れた作品として讃えたいものが大いにありますが、それはやはり優れた演出と優れた演技のコラボレーションの賜物と見て間違いないでしょう。

(文:増當竜也)

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