映画『椿の庭』公開初日舞台挨拶レポート|富司純子「この作品は、最後の宝物のよう」
写真家・上田義彦が脚本・監督・撮影までを手掛けた初監督作品『椿の庭』が2021年4月9日(金)に公開初日を迎え、東京のシネスイッチ銀座にて初日舞台挨拶が行われた。舞台挨拶には主演の富司純子、シム・ウンギョン、鈴木京香、上田義彦監督が登壇した。
映画を観終わったばかりの観客を前にして主演の富司純子は「コロナ渦でなければ去年封切りのはずだったこの映画をずっと耐えてきて、今日こうして暖かい皆様の前で初日を迎えられて本当に幸せです」と客席に微笑みかけながら挨拶。上田監督の撮る映像美に触れ「観ていただいた皆様はおわかりだと思いますが、本当に繊細で素晴らしい映像で私にとっても宝物になりました」と語った。
孫娘・渚役のシム・ウンギョンは「今日、この映画を観に来てくださった皆さんに心から感謝します」と観客への感謝の気持を込めて挨拶。
次女・陶子役の鈴木京香は「四季折々を通して美しいお庭での撮影でしたが、海の見える日本家屋での撮影が毎回楽しくて幸せな時間でした」と、撮影を振り返り、「メイクをする際にも美しい海が見え、素敵な家具に囲まれながらふと遠くに目を向けると最高に美しい富司さんがいらっしゃる。ウンギョンちゃんが本当に切ないくらいに家族のことを思っている姿も伝わってきて、たまに遊びに来た親戚のような気持ちで見惚れるようにして時間を過ごしていました。上田監督の美意識が詰まったこの作品を沢山の人に観て頂きたいです」と撮影時を振り返りながら挨拶。
上田義彦監督は「僕はこの映画で日常時間を撮るにあたって"無常"ということを思いつつ撮っていました。一般的に日常というのは何でもない時間というように捉えがちですが、そこにじっと目を凝らすと真実とか存在というものが見えてくると信じて撮ってきました。その中でこの"無常の時間"をゆっくりとひとつひとつ紡ぎ出して丁寧に繋げていくことで"無常"という姿が見えてくるんではないかと思い、そんな映画が撮りたいとずっと思っていましたので今日この場で観ていただけたことは一生忘れられないと思います」と、映画に込めた思いを静かに語りつつ、「実は僕も後ろの席で皆さんといっしょに観ていました。自分の映画なのにちょっと泣いてしまいました」と打ち明けて会場を和ませた。
主演作が14年ぶりとなる富司は撮影を振り返って「1年間を通して撮っていただきましたが、本当に楽しくて、あっという間に終わってしまった感じがします。ウンギョンさん、京香さんとご一緒させて頂いて本当の家族のようで本当に楽しかったんです」と、共演者との思い出を語りつつ、「先生(上田監督)の目を通して、良いアングルで(日常の)ありのまま姿を撮って頂いたので女優としてこの作品、そして上田監督に出会えたことを本当に感謝しています。鈴木さん、ウンギョンさんを本当の家族のように感じられてとても幸せな時間でした」と感謝の気持ちを語った。
公開は前後しているが、本作が日本映画の現場として初体験だったシムは「初めての日本映画の現場で1年を掛けて撮った作品でしたし、台詞も日本語だったので自分がどう演じれば良いのか始めのうちは少し悩んだりもしましたが、上田監督をはじめ、富司さん鈴木さんにも温かく見守って頂いて渚の気持ちをゆっくり感じながら撮ることができました。普段はしっかりと演技プランを考えるのですが、この作品では特に考えすぎないようにその日の撮影現場の雰囲気を感じながら撮りました。ありのままに演じて、ドキュメンタリなのか演技なのか曖昧な部分が見せられたいいなと思って意識して撮影に望んでいました。今まで自分が演じたことのない役柄でしたので渚を自分そのものと感じて共に成長していこうという気持ちで、素敵な家や自然をたっぷり感じながらその感じたものを出していこうと心掛けました」と現場の雰囲気、そして作品に込めた思いを語った。
鈴木は「富司さんはずっと憧れの女優さんでしたが、今回初めて撮影現場でしっかりとお話できる機会ができて私の理想の女性像というものがより一層高いイメージになってしまいました。(劇中で)旦那様が愛したであろう椅子に座ってくつろいでいる姿、孫や娘を気遣ってうちわで仰いでいる姿、どこを切り取っても一幅の絵のようで、こんなふうに素敵なたたずまいになれるにはどうしたらいいのか誰か教えて欲しいです」と微笑んで会場を和ませつつ、「ウンギョンさんは新しい世界にひとりで飛び込んでくる姿が渚と重なって、切ないくらいに綺麗でした。お二人と共演できたことは本当に幸せでした」と富司やシムとの共演について振り返る。
最後に主演のふたりから挨拶があり、ウンギョンは「渚は私自身でもあったので一緒に成長できたかなと思っています。この映画は出会いがあれば別れがあるけれどもまた頑張って人生を生きていくといったメッセージがあると思っています。普通の人生を描いているのかもしれませんが、上田監督が繊細に描いたことによって皆さんの心にもそのメッセージが刺さるのではないでしょうか。私にとって最初の日本映画がこの作品だったので、この『椿の庭』という作品がなかったら今の自分はいないと思っています。今日から公開となりましたが皆さんまた劇場に足を運んでいただけたら嬉しく思います」と呼び掛けた。
続けて、富司から「この作品は監督がフィルムで撮影しましたので、陰影や繊細な部分にフィルムでないと出せないような美しさが沢山あります。それぞれのシーンを感じながら何度でもご覧いただきたいと思います。観ていた方にしか映画の良さはわかりませんので、是非皆様に伝えていただいて、ひとりでも多くの人に観ていただけますように願っています」と呼び掛けて会場は割れんばかりの拍手に包まれ、舞台挨拶は締めくくられた。
映画『椿の庭』はシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
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