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アラサー独身男性が本気で観た『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』


出番は少なめ。でも、存在感は人一倍大きい野原一家の愛



体験入学のため寮生活を送ることになり、カスカベ防衛隊やしんのすけと風間くんの友情にフォーカスが当たりがちな本作では、ひろし・みさえ・ひまわりら野原一家の出番は非常に少ない。「野原一家ファイヤー!!」的な展開も訪れない。だが、それでもやっぱり野原一家の絆は健在で、数少ない登場場面でも確実に見る者の心を揺さぶってくる。体験入学へ出発するしんのすけを見送る際のみさえ。しんのすけがいない日常に違和感を抱くひろしとみさえ。体験入学最終日となり、しんのすけを迎えに来た際にひろしとみさえが発する言葉など、人によっては涙が溢れ出てしまうことだろう。

今回久々に『クレヨンしんちゃん』というものにガッツリ触れてみて、気が付いたことがひとつある。それは、自分が大人になったことで、子供時代とは異なる感覚で『クレヨンしんちゃん』を捉えられるようになっていたことだ。記事タイトルのように、僕自身は独身のため子供はいない。そのため、しんのすけら子供たちに我が子を投影するといった芸当はできやしない。しかし、しんのすけに幼少期の頃の自分を、ひろしとみさえにかつての両親を重ねることで、在りし日の両親の心模様に触れ、どれだけ自分に愛情を注いでくれていたのかということを理解することが可能であった。要は、僕のような独身の人であろうとも本作は楽しめる。野原一家の絆を通して、感動できる余地はいくらでもあるということだ。

無論、実際に子供がいる人ならば、しんのすけに我が子を重ね、我が子を案ずる気持ちをひろしとみさえに重ね、なおのこと引き込まれてしまうに違いない。『クレヨンしんちゃん』とは、なんて受け皿の広い作品なのだろう。

最後に…



本作においてその答えが言及されているわけでもなし、結局は「エリートポイント」を発端とする数多の問いに明確な答えなど見出せない。どういった教育や生き方、人生との向き合い方がベストなのかも定まらない。この先、競争社会が激化していくのかも、『ターミネーター』の如くAIが人間を凌駕してしまう日が訪れるのかも、自分の人生に納得して生きていけるのかも、誰にも分からない。

ただ、ひとつだけハッキリとしていたことがある。本作を目にして心が震える瞬間であったり、涙がこぼれ落ちてしまうといったことは、およそ非理性的で不合理なことであり、効率や成果ばかりを最優先したシステマチックな仕組みの世の中では生じにくいものであるということ。そういったものに価値を抱くことができる以上、僕たちにはより良き道を模索していける可能性が残っている。

たかが子供向けのアニメーション、されど子供向けのアニメーション。僕自身決してナメていたわけではありませんが、『映画クレヨンしんちゃん』というものが、目にする者の心をこんなにも高度な領域へと誘ってくれる作品だとは夢にも思っていなかった。実際にお子様がいる人はもちろんのこと、僕のように独身であったり、長らく『クレヨンしんちゃん』から離れていた人にも目にして頂きたい。笑って泣けて多くを考えさせられる実りある時間があなたを待っています。是非ご覧ください。

(文:ミヤザキタケル)

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(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2021