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『ブラック・ウィドウ』スカヨハの訴訟の根本問題。新たな配給システムには新たな報酬モデルが必要だ


定額配信サービスはブラックボックス


アメリカの俳優組合SAGに所属するShiro KawaiさんがQuoraで質問に答えていますが、Netflixの作品の場合は、制作予算に応じてインセンティブの支払い上限が決まっており、再生回数などでロイヤリティが上下することはないようです。

Netflixはあらかじめ見放題プランで配信するので、成績に応じたインセンティブを計算がしにくい性質です。基本的には固定のギャランティをベースにもらって、あとはShiroさんのいうような基本マージンが発生するということになるのでしょう。

しかし、そもそも配信の場合、儲けや利益をどう計算すればいいのか不透明な部分が多いです。なぜなら、作品がどれだけ見られたのか、また新規契約の増加や既存会員の繋ぎ止めなど、利益にどの程度貢献したのかを計算しようにも公的なデータがないからです。

このことは、タレントエージェントや契約をまとめる弁護士たちの頭を悩ませています。NYタイムスは、NetflixやAmazon、Disney+のようは配信業者は、自社の数字を非常に厳密に保護しており、どの作品がどれだけ視聴されているかのデータは、共有されたとしても大変限定的だと指摘しています。

例えばテレビの場合、ニールセンやビデオリサーチのような第三者機関が視聴率を調査しています。これは広告取引をするにあたり、より信頼できる数字が必要なためです。もし、テレビ局自身が視聴率を調査して、その数字を元に広告取引は行われるような仕組みだった場合、テレビ局は数字を盛り放題ですよね。映画館の興行成績も日本なら興行通信社のような、第三者機関がまとめていることが多いです。

そのような客観的な数値は、広告取引以外にもタレントの価値を測ることにも用いられるでしょう。配信サイトの場合、客観的に取引に用いることのできそうな指標がまだ存在していません。このことが、エンタメ産業の弁護士たちの頭を悩ませているようです。

NYの法律事務所の方は、インディーワイヤーの記事で配信の場合「配信プロジェクトの視聴率の統計がほとんど公表されていないため、プロジェクトがどれくらい価値があるのかを知ることすら難しい。すべてが機密で、すべてがブラックボックスの中にある」状態で交渉をしなければいけないと語っています。(筆者による意訳)

『ブラック・ウィドウ』のDisney+での売上は初週で6000万ドルだったと発表されています。しかし、これはディズニーによる発表であり、第三者機関による調査ではありません。別に嘘をついていないと思いますが、事実かどうかを証明する方法はありません。

ちなみに、ニールセンがストリーミングの視聴率計測モデルを開発・改良を進めていますが、それが客観的指標となるのかはまだわかりません。

新しい報酬モデルの確立を

アメリカのエンターテインメントWebサイト「バラエティ」の記事では、ハリウッドの伝統的な企業は相次いでストリーミング事業に進出しているが、それに合った新たな報酬モデルを確立できていない。コロナがその欠陥を露呈させた」と指摘しています。

つまり、ハリウッドは急速に配信事業へシフトしようとしているが、実態は俳優や監督などのクリエイターたちの権利がおざなりになっている可能性があるということです。

配信はもはや無視できないものですが、クリエイターの権利もまた無視してはなりません。もし、配信がスターや監督を不利にするものならば、その未来はそれほど明るくないかもしれません。なので、ハリウッド各社はまずはきちんと報酬制度と、透明性のある数字の好評するためのシステムを整備するべきなのではないでしょうか。スカーレット・ヨハンソンの起こしたアクションは、それをハリウッドに広く知らしめたという点で、非常に価値ある、勇気あるものだったと思います。

(文:杉本穂髙)
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