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<平岩紙>の魅力、癒しオーラにひそむ「強さ」と「ずるさ」

<「僕の姉ちゃん」特集企画>



2000年に松尾スズキが主宰する劇団・大人計画の新人オーディションに合格し、同年ミュージカル「キレイ 神様と待ち合わせした女」で女優デビューを果たした平岩紙。

多くの方は2012年からTVで放送された花王「ファブリーズ」のCMで平岩紙の存在を知ったのではないだろうか。同CMの“熱血家族編”で、夫役の松岡修造や3人の息子たちを優しく包む母親役で話題となった。

今やその姿を見ない日はないほど、舞台で培った確かな演技力を武器に多数のTVドラマに出演している名バイプレイヤーだ。

癒しオーラを纏いながらも、芯の強さが印象的な役柄をこなす

芸名の由来となった“紙”のように色白で透明感あふれ、どこか儚げな印象のある平岩紙。メインキャラクターではないのに目が離せない独特の魅力があり、「そう言えばこの人、あのドラマにも出演してたよね」と誰もが思い出せる存在感を放っている。

特に2021年に出演したドラマでは、どの作品でもインパクトを残した。

例えば、「監察医 朝顔」では主人公と同じく法医学教室に勤める法歯学者・藤堂絵美役を熱演。おっとりとした外見とは裏腹に竹を割ったような性格の持ち主で、ハッキリと自分の意見を述べ、板尾創路演じる夫を尻に敷いている感じが印象的だった。

一方で同時期に放送された「リコカツ」や「俺の家の話」では、ずっと不満を持っていた夫に離婚を切り出す妻を演じたことが話題に。

ご本人も自身のことを「むかしから正義感がやたら強い」と語っているように、癒しオーラの中に滲み出る芯の強さが平岩紙の魅力。

油断していると、突然まっすぐな瞳で心に刺さる言葉を投げかけられる。
だからこそ、彼女の存在に引きつけられていくのだろう。

話題作「僕の姉ちゃん」では、厳しくも頼りになる上司役に


9月24日よりAmazon Prime Videoにて先行配信がスタートしたドラマ「僕の姉ちゃん」にも平岩紙が出演している。

益田ミリの同名漫画を原作に、海外駐在中で両親不在の間、つかの間の二人暮らしを送ることになった姉妹の日常を描いた本作。素朴でまっすぐ生きてきた新社会人の弟・白井順平を杉野遥亮、ピュアな弟に辛辣にツッコむ姉・ちはるを黒木華が演じる。

平岩紙が演じるのは、まだ仕事に慣れていない順平の直属の上司・東海林明日美。

どちらかといえば、これまでフェミニンな衣装に身を包んできた彼女だが、今回はパリッとしたスーツを着こなす“キャリアウーマン”に変身。たとえ話を交え、新人である順平に的確なアドバイスをする東海林だが、その言葉はちょっと強めだ。

作中では、そんな東海林とそりが合わず、順平がもやもやする場面も。だけど不思議と「こんな上司いたら嫌だな」とは思わない。

それは台詞で十説明しなくとも、キャラクターの魅力を引き出す平岩紙のなせる技だろう。ちょっとした日常会話や順平を見つめる表情から、東海林が真剣に後輩と向き合っていることが伝わってくる。

本作は2022年からテレビ東京でも放映される。終盤にかけてどんどんと魅力的になっていく、平岩紙演じる東海林にも注目してみてほしい。

人間味あふれる人柄が共感を呼ぶ


「僕の姉ちゃん」を見ていて思い出したのは、2020年に大ブームを巻き起こした“恋つづ"こと、ドラマ「恋はつづくよどこまでも」だ。

平岩紙はこのドラマでも、上白石萌音演じる主人公・佐倉七瀬を優しくサポートするベテラン看護師・根岸茉莉子を演じていた。

印象に残っているのは、第5話。不整脈治療で自身が務める病院に入院することになった息子を思うばかりに、茉莉子はまだ新人ナースの七瀬を手術の介助メンバーから外してほしいと、佐藤健演じる医師・天堂浬に訴えるのだった。

もちろん、後輩に経験を積ませることは大切だ。“公私混同”と言われれば、それまでだろう。しかし、早く病気に気づいてあげられなかった分、治療だけは万全な状態で受けさせてあげたいと涙ながらに語る茉莉子の姿は多くの母親から共感を呼んだはずだ。

平岩紙が演じるキャラクターは決して、完璧な人間なんかじゃない。俯瞰してみると、ちょっと眉をひそめてしまうずるさや弱さだって持っている。だけど、それは誰もが普段は隠している素の部分だったりする。ゆえに、共感せずにはいられない魅力を放っているのだろう。

しかしながら、いくら設定上で人間味あふれるキャラクターだったとしても、演じる役者が役に入り込んでいなければ付け焼き刃にしかならない。平岩紙がすごいのは、繊細な演技でこれまでキャラクターが歩んできた道のりを想像させるところ。

どんな背景があって、その言動に至ったのかが伝わってくるからこそ、同じ痛みを抱える視聴者の共感を呼ぶのだ。

益田ミリ原作ドラマに引っ張りだこ!



そんな平岩紙は、2021年10月8日にテレビ東京で放送開始となったドラマ「スナック キズツキ」にも出演することが決定している。

このドラマは「僕の姉ちゃん」と同じく益田ミリの漫画が原作で、平岩紙は縁あってどちらの作品にも出演することとなった。

益田ミリの作品は、何気ない日常の中でさらっと流されてしまいがちな感情を描き、大人の女性を中心に読者から反響を呼んでいる。上記で挙げたような平岩紙の魅力が最も発揮される原作と言っても過言ではないだろう。

「スナック キズツキ」は傷ついた人だけがたどり着ける不思議なスナックを舞台に、原田知世演じるママ・トウコが日々悩みを抱える客を優しく出迎える癒しのドラマだ。

平岩紙は総菜屋で働く客の一人で、損しがちな性格の安達よしみを演じる。予告編では、思っていることをなかなか言えないよしみが「私ばっかり損している」とこぼす場面も。

どうやら溜まったストレスをコールセンターへの問い合わせで吐き出し、八つ当たりしてしまう……という二面性を持った役どころのようだ。

一見人当たりはいいが、意外と芯が強かったり、はたまた人には見せられない“裏の顔”を持っていたりと第一印象とはギャップのあるキャラクターを演じることが多い平岩紙。

だけど憎めない、むしろ彼女たちが抱える傷に共鳴してしまうような、等身大の演技から目が離せない。

(文:苫とり子)

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