「ちむどんどん」第119回:歌子と智も暢子の決意も流行りの倍速視聴派に向けて作られているのかもしれない
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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第119回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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ようやく歌子と智が結ばれたけれど
暢子(黒島結菜)が催したお食事会に意を決してやってきた智(前田公輝)。暢子が空気を読まない言動で一瞬、気が削がれますが、みなが固唾を飲んで見守るなか、歌子(上白石萌歌)が歌を歌います。
その歌声に「ちむどんどん」した智はついにプロポーズ。
よかった、よかった。みんなでカチャーシーを踊ります。
智は暢子のときにひとり相撲したことがトラウマになってなかなか打ち明けられなかったのかもしれませんね。暢子からすぐに歌子に乗り換えたと周囲に誤解されるのも恥ずかしかったのでしょう。
歌子もお店で歌っているときはペンダントをしていましたが、こういうときもペンダントをしていたらいいのに。もらったペンダントをずっとしていたら、智も自信を持てたんじゃないでしょうか。いつも身につけるには大きくて派手過ぎたのかなあ。
このとき、2日連続、山田裕貴さんの演技が光っていました。後ろで祈っている姿が、博夫はいい人だなあと思わせます。彼もまた、お嫁にいってしまいそうな良子(川口春奈)を止めに、比嘉家に来たから、智に心を寄せているのでしょう。
爪痕を残すとはこういうことだなと感じた瞬間です。ちょっとしか出てなくても博夫の気持ちと時間の流れがちゃんと繋がっています。
「あさイチ」に高瀬耕造アナが登場し、朝ドラ受けとして、歌子は「アババの呪い」にかかっていて、それがようやく解けたのだと解釈していました。
さすが、朝ドラ送りを長らくやってきた、いまは「ひまわり」再放送受けをしていて、たぶんいまNHKで最も朝ドラに詳しい高瀬アナ。つぼをついています。
なんかこうほんわかおもしろい方向で「ちむどんどん」を受け止める人がいたらよかったですよね(他人事)。高瀬アナも一回限りだからよかっただけで、毎回だったらどんなコメントをしていたか、いいときに「あさイチ」を外れた気もしますが。
さて、暢子(黒島結菜)です。
暢子が畑で芋をもって立ってる画は最高に絵になります(前にもあったけど、アニメにおけるバンクーー使いまわしではないようです)
高校生のとき、自分が何をしたらいいかわからないと悩んでいたとき、優子(仲間由紀恵)に「この村に生まれて、女に生まれてよかったと思うときが来ると思うよ」と言われた、そのときが来たと言う暢子。
「この村に生まれた。女の子に生まれた。それは誰にも変えられない。それがいま、うちはうれしくてうれしくてたまらないわけ」
ここは本来、118回、続いてきて、相当の感動ポイントです。暢子は宿命を受け入れるということです。……と思うものの、積み重ねがまったくないので感動しないのです。流行りの倍速視聴派だったらここだけ見て感動できるのでしょうか。
昔ながらの視聴派ーーなんなら何度も繰り返し見る派としては、この村に生まれてはあるとしても、女に生まれて云々は、暢子の葛藤は描かれていなかったと感じます。
男の子顔負けで走り回っていて恋など縁遠かった暢子が結婚して子どもができたことが「女に生まれてよかった」ことなのだろうか。そうでないなら、そうでないことが全く書かれていないのに、「地球に生まれてよかった」みたいで残念な気持ちになりました。
ただし、この暢子と会話する仲間由紀恵さんの表情はとてもよかったです。
細かいことは関係ない、「ちむどんどんする」という魔法の言葉さえあれば、すべてがうまくいくのが「ちむどんどん」の世界です。
暢子はちむどんどんする心に任せ、やんばるに戻ることを決意します。
「長年暢子が苦労して花を咲かせた店」(by和彦)と言うものの、東京でのお店経営の話があまりにも短くて、東京のお店に対する愛情が感じられないし、杉並の商店街の人や客との交流もほぼなく。
そして故郷に「移住」したいと言う。ここだけ、ものすごくいまっぽい言語感覚。暢子だったら「帰って来たい」で良さそうだけど、いま「移住」ブームなので視聴者に刺さる言葉を使ったのかなと想像します。
ちむどんどんすることに流されていく暢子。考えるな、感じろ、byブルース・リー 的なことなのでしょうけれど、考えるな感じろ は使いたいけど「ちむどんどんするかしないか」はあんまり使いたくない気持ちになってきています。そのため、和彦が三線を弾いた!というところを記録することすら忘れるところでした。
(文:木俣冬)
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