『犬も食わねどチャーリーは笑う』どの夫婦も戦慄のブラックコメディ!なのに泣ける理由
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「夫婦喧嘩は犬も食わない」と聞く。ケンカ、とくに夫婦のケンカは放っておいても勝手におさまるものだから、親切心で仲裁に入るのは止めておけ、といった類の忠告である。
夫婦喧嘩、痴話喧嘩に巻き込まれることほど疲れるものはない。映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』のタイトルとあらすじを読んだ瞬間に「そうか夫婦喧嘩モノか」と納得しかける自分がいた。
そんなジャンルがあるのかは不明だけれど、それとは別に、何か引っかかるものがあると感じたのも事実。本映画のあらすじを見ながら、その理由を考えてみたい。
ある日見つけた“旦那デスノート”の投稿者は
2019年公開映画『凪待ち』から数年、ふたたび主演として名を張ることとなった香取慎吾。今回演じるのは、ちょっとダメでちょっと情けない夫・裕次郎。ホームセンターの副店長として働く彼は、筋トレが趣味で毎日のプロテイン摂取を欠かさない。朝食の準備をするのも妻、プロテインの定期便を管理するのも妻の仕事。それに疑問を持たないでいる。
妻・日和を演じるのは、『愛がなんだ』『やがて海へと届く』などでの新鮮な演技が好評な岸井ゆきの。夫の裕次郎とはホームセンターで出会い、少しずつ関係を深めていく。やがて結婚し、仲睦まじい夫婦となったはずが、いつしか積もり積もったストレスが爆発寸前に……。
そんな彼女が選んだのは、飼いフクロウ・チャーリーの名を借りて“旦那デスノート”へ鬱憤を書き込むことだった。
決して夫へ不満をぶつけることなく、秘密裏に発散し事なきを得ていた妻。しかし、ひょんなことから投稿者が日和であると、裕次郎が気づいてしまう。
香取慎吾×岸井ゆきのが“魅せる”夫婦の在り方
日和の行動に気づいてからというもの、裕次郎は大いに戸惑い、慌てふためく。世の旦那さんは、奥さまから不満をぶつけられたり、はたまた離婚を切り出されたりするまで兆候に気づかないというが、本当なんだろうな……と感じさせられるリアルさだ。あの手この手で探りを入れるわ、行き違う考えにヤキモキするわ。夫婦としてお互いを思っているからこその“ボタンの掛け違い”は、応援したい気持ちと、やれやれ……と首をふりたい気持ちの両方を喚起させる。
香取慎吾が表現するダメ旦那っぷりもさることながら、岸井ゆきののピリッとスパイスが効いた演技も良い。彼女がどんな過程で夫に対する気持ちを変化させていったのか、そのすべてが劇中で描かれることはないが、十分に背景を想像させてくれるのだ。
あなたにパートナーがいるとしたら、日頃から腹を割って本音を話せる関係性を築けているだろうか?
妻・日和が旦那デスノートへ投稿する文面を見ながら、あるある! と笑える方がいる反面、片や裕次郎のように「自分には関係ない」もしくは「自分もこう思われているかも……」と冷や汗覚える方もいるだろう。
細部がリアルに構築されているからこそ、見ているこちら側の現実に照らし合わせ一喜一憂できる。お互いに不満を抱えていることを知った日和と裕次郎が、夫婦としてどんな結末を選ぶのか? 妻を思い、夫を愛するからこそ手にした二人の選択は、どの夫婦にも当てはまる可能性があるからこそ“泣けてくる”のである。
香取慎吾と岸井ゆきの、そしてオリジナル脚本で勝負する市井昌秀監督の組み合わせは、観る人全員に“ブラックな笑い”を提供するとともに、これからの”夫婦の在り方”について選択肢を与えてくれるはずだ。
『犬も食わねどチャーリーは笑う』は2022年9月23日公開。恋人同士や夫婦で観に行くのも止めはしないが、この映画がどんなきっかけとなるかは保証できないので、悪しからず。
(文・北村有)
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