© 藤本タツキ/集英社・MAPPA
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映画コラム

REGULAR

2022年10月15日

アニメ『チェンソーマン』OPのパロディから映画に「さあおいで」と全力でお迎えする特集

アニメ『チェンソーマン』OPのパロディから映画に「さあおいで」と全力でお迎えする特集

© 藤本タツキ/集英社・MAPPA

累計発行部数1600万部突破した超人気マンガを原作とした、『チェンソーマン』のアニメが、第1話から話題騒然だ。

・製作委員会方式でなく製作会社のMAPPAが100%出資(だから地上波放送でほとんどCMがない)

・主題歌担当は米津玄師(タイトル「KICK BACK」はチェンソーが使用者に跳ね返る現象を意味する)

・豪華アーティスト提供のエンディング曲が毎回変わる(音楽フェスみたいな状況)

・アニメそのものもが超絶鬼クオリティ(CGも併用されているが戦闘シーンの多くが手描き)

・地上波で流せる限界ギリギリアウトのグロ描写(しかもAmazon Prime Videoのレーティングはなぜか「NR:Not Rated 指定なし」)

などなど枚挙にいとまがないのだが、ここでは公開からわずか3日ほどで(しかもYouTubeだけで)1000万回再生を突破した、オープニング映像を猛プッシュしておきたい。



何しろこのオープニング、有名映画のパロディが満載なのだ。1話の放送からすぐに、映画ファンたちはこぞってそのネタぶりに笑いつつ感動し(筆者含む)、Twitterではすぐに元ネタの映画をあげる投稿が相次いだのである。

それぞれの映画のこのエッジの効き方がおすすめだ!

そのラインアップを見ると、かなりエッジの効いた映画ばかりであり、だからこそ同じく尖った内容である『チェンソーマン』のファンにこそおすすめしたい。

そんなわけで、ここでは『チェンソーマン』が大好きな人たちを、「さあおいで」と映画の世界へ招待するべく、パロられた元ネタの映画それぞれの『チェンソーマン』らしさ(あるいは影響を受けているかもしれない要素)と合わせて、魅力や特徴を簡潔に解説していこう。

『レザボア・ドッグス』




パロディ箇所:スーツを着たキャラクターたちが闊歩しているところ

『チェンソーマン』らしさ:殺し合ったりする殺伐さや残酷さ(タランティーノ監督作共通)



『キル・ビル』2部作などで知られるクエンティン・タランティーノ監督のデビュー作。強盗計画を実行した犯罪チームのメンバーそれぞれが疑心暗鬼になり、互いに拳銃を突きつけあったり殺し合ったり拷問したりする様がいちばんの特徴。カンヌ国際映画祭で「心臓の弱い方は観賞を控えてください」との警告が出るほどのショッキングさも話題となった。

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『悪魔のいけにえ』




パロディ箇所:幼少時のデンジがポチタを抱いているところ

チェンソーマンらしさ:殺人鬼がチェンソーを使ってるし、その悲惨な生い立ちも……



5人の若者たちが田舎の屋敷で次々に殺される、ホラー映画の金字塔。ラストシーンが特に有名でよくパロディの対象とされるが、今回は同じくインパクトが絶大な冒頭のパロディになっていることがミソ。墓を荒らし腕や足を切り取って作られたグロテスクな「アート作品」が大映しになる……これがどういう意味を持つかは、映画本編を確認してほしい。

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『パルプ・フィクション』




パロディ箇所:岸辺が震えつつ銃を構えているところ

チェンソーマンらしさ:殺し合ったりする殺伐さや残酷さ(やっぱりタランティーノ監督作共通)



こちらもクエンティン・タランティーノ監督作。タイトルの意味は「安っぽい小説」で、その通りの取り止めがなく時系列もバラバラの、意味のない会話や暴力が繰り返されるようでいて、それぞれのエピソードが絡み合い一種のグルーヴ感が生まれる。個人的な推しは日本刀を構えるブルース・ウィリス。余談だが、現在公開中のアニメ映画『バッド・ガイズ』にも『パルプ・フィクション』の秀逸なパロディがある。

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『貞子vs伽椰子』




パロディ箇所:ジャンプして井戸の上でぶつかり合うところ

チェンソーマンらしさ:「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」(劇中の名言)



『リング』の貞子と『呪怨』の伽椰子という、日本の2大ホラー映画キャラクターが夢の共演。しっかり怖いところもあるが、思わず吹き出してしまう「ギャグだろ!」なシーンの印象も強い。個人的にはここで挙げた映画の中でもイチオシ、ハリウッドの有名映画たちと肩を並べる作品であることが証明されたと言っても過言ではない。あと、貞子公式Twitterもこのパロディを受け「伽椰子姉さんの家で一緒に観ようかな〜?笑」などと投稿した。


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【関連記事】『貞子vs伽椰子』感想、これは世界中を幸せにする傑作だ!

『ノー・カントリー』



パロディ箇所:暴力の魔人がベッドに座っているところ

チェンソーマンらしさ:理不尽に殺されたり暴力を振るわれまくる様



『ファーゴ』のコーエン兄弟監督作で、会う人会う人を殺していく、おかっぱのようなヘアースタイルの殺人鬼に追われる様を描くスリラー。こちらの常識や倫理が通用しないような相手であり、一方で理詰めで問答をしてきて、あまつさえ「コインの裏表」で自分の考えを押してくる様がめちゃくちゃ怖い。原題は「No Country for Old Men」であり、それは老人だけでなく、良識的な考えを持つ者の居場所もないということを、皮肉的に示していたのかもしれない。

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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』



パロディ箇所:自動車の後部座席から運転を眺めるところ

チェンソーマンらしさ:とある過酷な運命に対して……(ネタバレになるので秘密)



3本目のクエンティン・タランティーノ監督作。どんだけ好きなんだ。 1969年に起きた実際の事件、女優シャロン・テート殺人事件を題材としており、その運命の日に至るまでの、落ち目の役者のレオナルド・ディカプリオと、その相棒のブラッド・ピットのブロマンスな関係も見どころ。古き良きハリウッド映画のネタも満載。

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『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』



パロディ箇所:むちゃくちゃ狭い会議室の机になんとか座ろうとするところ

チェンソーマンらしさ:妙な悪魔というかバケモノをぐちゃぐちゃにしながら戦うこと



Z級映画としてむしろ超有名な作品で、机の上を移動する動きが精密にパロられていた。中毒性抜群のオープニング曲、トマトが襲いくる様の設定のバカバカしさ、カットによって昼夜が異なる雑な作り、同じ場所を撮影しながら「別の場所です!」とテロップで示す開き直り精神、そこそこに繰り出されるミュージカル、興味をそそられない恋愛パート、とんでもないオチなど、全編が脱力感に満ちている。

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『女優霊』



パロディ箇所:デンジがカメラ目線でめちゃくちゃ怖がっているところ

チェンソーマンらしさ:日常的な光景から、時に恐怖を覗かせる様とか……



中田秀夫監督による『リング』の前身、ジャパニーズホラーの礎(いしずえ)ともされる作品。新人映画監督が、自身の作品のカメラテストで、別の映像が紛れていることに気づく……というあらすじで、この時代のフィルムならではの荒い映像がむしろ恐怖を呼ぶ。モンスターが派手に襲ってくるような内容ではないが、じわじわと来る恐怖を求める方にはおすすめ。

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『ジェイコブス・ラダー』




パロディ箇所:階段に天使の悪魔が座っているところ

チェンソーマンらしさ:悪夢的な内容そのもの



ベトナム帰還兵が、悪夢なのか現実なのかもわからない恐怖に直面していくスリラーで、ゲーム『サイレントヒル』などに影響を与えた、知る人ぞ知るカルト作。グロテスクかつシャープな画が特に印象に残る。シーンごとに解釈が分かれる、どんでん返しとも言えるラストなど、難解だからこそ語り草になる要素が多い。旧約聖書のヤコブのはしごの物語に着想を得ている。『ホーム・アローン』のマコーレー・カルキンも出演している。

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『コンスタンティン』



パロディ箇所:夜に向かい合っているところ

チェンソーマンらしさ:悪魔祓いの話である



悪魔や天使を見分ける特殊能力を持つ私立探偵が、死後に自分が地獄へ送られる運命を知り、悪魔を倒すことで天国に行くことを目指す。ミュージックビデオ出身のフランシス・ローレンス監督による悪魔のビジュアルや地獄の光景、ホラー要素強めのアクション描写は多くのファンを持つ。2022年9月に、続編製作へ正式にゴーサインが出たことも映画ファンの間で話題となった。

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『ビッグ・リボウスキ』




パロディ箇所:デンジたちがボーリング場にいて、ボールを拭いているところ

チェンソーマンらしさ:巻き込まれ型の不条理な物語



2本目のコーエン兄弟監督作。同姓同名の大金持ちと間違えられ強盗に押し入られた挙句、誘拐事件に巻き込まれてしまう、うだつの上がらない中年男性の行く末を追うブラックコメディで、良い意味で脇道に逸れまくる様が人生の不条理性を描いているようだった。やたらとボウリング場に行くシーンが多い。ジョン・グッドマン演じるパートナーの男がめちゃくちゃな性格をしたトラブルメーカーであり、実質パワーちゃんみたいなヤツだった

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『ファイト・クラブ』




パロディ箇所:パワーがハンマーで巨大な鉄球を打つところ

チェンソーマンらしさ:主人公が怪しい組織に入ってさらに血みどろの事態に



デヴィッド・フィンチャー監督による、暴力的であるがゆえに好みが分かれるものの、映画史に残る傑作とされる1作。拳闘をする秘密のクラブが、やがて恐るべきテロ集団へと変貌していく様を描き、とあるネタバレ厳禁のどんでん返しの要素は多くの模倣を生んだ。性格も体つきもマッチョなブラッド・ピットと、それとは外見も内面も対照的なエドワード・ノートンの怪演も見どころ。

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この他の『チェンソーマン』のオープニングのパロディには、『ソー:ラブ&サンダー』のロゴのカラーリング、『新世紀エヴァンゲリオン』、「Perspective」という読書量の差で見える世界の違いを表す風刺画、原作者である藤本タツキの『チェンソーマン』第2部の第1話や『さよなら絵梨』の後方で爆発する構図がある。短い時間にどんだけ詰め込まれているんだ

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