「舞いあがれ!」第21回:久留美が買い物で値切るしっかり者になったことを許容できるかできないか
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2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
本作は、主人公が東大阪と自然豊かな長崎・五島列島でさまざまな人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。ものづくりの町・東大阪で生まれ育ち、 空への憧れをふくらませていくヒロイン・岩倉舞を福原遥が演じる。
本記事では、第21回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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第5週「空を飛びたい!」(演出:田中正)
テスト飛行で負傷した由良(吉谷彩子)の代わりにパイロットになろうと決意した舞(福原遥)。鶴田(足立英)に相談すると、反対されます。舞が思うよりももっと大変だからです。実際、由良のやっていたトレーニングをやってみると、ほんのちょっとで汗だくに……。
「由良は210ワットで1時間半こぐつもりやった」でも舞は3分でもくたくた。
それでもやりたい舞。
「みんなで作ったスワン号、私が飛ばしたいんです」と真剣な舞に、ちょっと時間くれるかと保留する鶴田。ここで、「飛ばしたいんです」「よし!頼む!」とならないところが良き。
パイロットをやっていいとまだ言われてないにもかかわらず、舞はトレーニングのためにさっそくロードバイクを買いに行きます。舞の意思の強さの現れです。
冷静に見れば、主人公が活躍するために、由良が怪我する流れになっているわけで、この主人公ファースト感を薄めるためには「私がやります」というよりも、まわりにやってと頼まれて仕方なく……という流れのほうがカドが立たない気はします。でもそうしなかったのは、舞が自分の意志で動くことの大切さを描いているからではないでしょうか。
大事なのは飛行機のパイロットになることではなく、舞が自分の意思で、みんなの思いを背負おうと思うことなのです。
部員で多数決をとってみたら、全員賛成。無口な空山(新名基浩)が真っ先に賛成してくれました。
ロードバイクはなかなか高価な品で悩みますが中古でいいものを発見。久留美(山下美月)が値切ると協力してくれました。
さて、大人編になってから、ちょっと気になっていたことといえば、久留美のキャラ変です。
子供時代の久留美はクールビューティー系でした。ところが成長したら、バイタリティーある人に。クールな久留美が名残惜しく、「まかしとき」とぐいぐいおっちゃんに根切り交渉に向かうような、積極的で明るくチャキチャキした感じの久留美にまだ慣れない視聴者もいるでしょう
10年の間に久留美に何が……。それを想像することは難しくはありません。
父子家庭で、しかもお父さん(松尾諭)が定職につかず、経済的に苦労しているからしっかり者になるしかなかったのではないでしょうか。人は変わるものです。変わってないのは、さらさらストレートロング。そして、舞との友情。
子供編と大人編で変わるのは俳優だけでなく舞台も変わることがよくあります。子供編のときは地元の自然満載だったのが、大人編になると職場のセットになって抜け感がなくなりがちですが、「舞いあがれ!」は大人編で自然は減りましたが、街の様子もロケを多用しています。
古本屋デラシネの路地に入る前の商店街や、第21回の自転車ショップや、電車が走る脇の道など。なんだかふつーのドラマみたい! 朝ドラがふつーのドラマじゃないとは言いませんが、家、職場とセットが多く、べたっと平面的な印象なのです。それが今回はとても広がりを感じます。良き良き。
前述した、汗だくの舞のシーンも実際に舞がトレーニング機器で身体を動かしたことで肺がばくばく大きく動いているのがわかります。汗は水をスプレーしてそう見せることも可能ですが、呼吸はそれっぽくやるのは難しいです。「舞いあがれ!」はこういう自然な描写が多いところが魅力のひとつです。
【朝ドラ辞典 キャラ変(きゃらへん)】長い物語のなかで、あれ、このひと、こういう言動するキャラだったっけ?と疑問に感じることがたまにある。とりわけ子役から大人へ俳優が変わったときに起こりがち。人は月日や環境で変わるものということもあるし、ちょっとした都合のときもあるのでそっとしておくこと。
(文:木俣冬)
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