俳優・目黒蓮の魅力:惹き込まれる感情の表現とは
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「silent」『月の満ち欠け』「舞いあがれ!」と、このところ放送・公開作品が次々話題となっている、Snow Manの目黒蓮。演技そのものが素晴らしいだけでなく、ファンですら新たな作品を観るたびに「こんな演技もできるのか」と驚くほど、想像を超えた演技を見せてくれている。
本記事では先ほど挙げた3作を中心に、目黒蓮の演技の魅力と彼が成長し続ける理由について紐解いていきたい。
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「silent」佐倉想:丁寧に演じる難役
© Fuji Television Network, Inc.放送のたびにTwitter世界トレンドに関連ワードがランクイン、TVerの再生新記録を何度も塗り替え、もはや社会現象となっているドラマ「silent」。
目黒はヒロイン・青羽紬(川口春奈)の高校時代の恋人で、18歳のときに発覚した病気のため中途失聴者となり、病気であることを紬に言わずに別れを告げた佐倉想(さくらそう)を演じている。2人が8年ぶりに再会するところから、物語は始まる。手話を使うという意味でも、声を出せない状況で感情を表現するという意味でもハードルの高い役だが、見事な演技で高い評価を得ている。
まず視聴者の心を掴んだのは、初回のラストの演技だろう。このシーンが彼の演技だけでなく、この作品全体の評価にもつながったと言っても過言ではない。紬と再会し、その場を立ち去ろうとする想。追いかけて話しかけ続け、肩を掴んで「私と話すの嫌?」と聞かれ、ついに感情があふれ手話で話すシーン。
「いつか電話もできなくなる、一緒に音楽も聴けない、声も聞けなくなる。そうわかってて一緒にいるなんてつらかったから。好きだったから」
「だから会いたくなかった。嫌われたかった。忘れてほしかった」
「何言ってるかわからないだろ? 俺たちもう話せないんだよ」
「うるさい。お前うるさいんだよ」
「言葉で話しかけないで、一生懸命話されても、何言ってるかわかんないから、聞こえないから」これだけ長い手話を覚えるだけでも大変なのに、途切れなく感情を乗せて演技していた。字幕で手話の内容を理解できるとはいえ、字幕以上に、彼の表情や息遣いから苦しい胸のうちが伝わってきて、観ているこちらも想と同じようにじわじわと涙してしまうような演技だった。
「楽しそうに話さないで、嬉しそうに笑わないで」
「高校卒業してすぐ、病気がわかった。それから少しずつ聞こえにくくなって、3年前、ほとんど聞こえなくなった」
「何で電話出なかったのか、わかったのか、これでわかっただろ?」
「もう青羽と話したくなかったんだよ」
「いつか電話もできなくなる、一緒に音楽も聴けない、声も聞けない」
「そうわかってて一緒にいるなんてつらかったから」
「好きだったから」
「だから、会いたくなかった」「嫌われたかった」「忘れてほしかった」
「何言ってるかわかんないだろ?」「俺たち、もう話せないんだよ」
「うるさい」「お前うるさいんだよ」
2話目以降も、いろいろな感情を見せてくれた。病気が発覚した後、紬と会うのがこれで最後だと自分だけ知っている想が、背を向けて泣きながら歩くシーン。大学のとき、少しずつ耳が聞こえなくなり、さまざまなことに傷つく中、出会った奈々(夏帆)に絞り出すように苦しさを伝えるシーン。紬が手話を覚えていたのに驚いて、少しずつ態度が軟化していくところ、ノートに書いた言葉で「再会できてよかった」という気持ちを伝えるシーン、紬の家で紬を抱きしめるシーン。一つひとつを丁寧に演じていて、心情が伝わってくる。
そして病気になる前の高校時代のシーンでは、甘酸っぱいキラキラした恋愛が音楽とともに描かれていて眩しい。「高校のとき目黒蓮と同じクラスになりたかった」と思ってしまう人が何人いたことか。
物語も終盤戦に差し掛かり、目黒演じる想の今後が気になるし、幸せになってほしい。
『月の満ち欠け』三角哲彦:一途な愛を貫くハマり役
妻と娘を不慮の事故で失い、悲しみにくれる主人公・小山内堅(大泉洋)のもとへ、三角哲彦(みすみあきひこ)と名乗る男性が訪ねてくる。彼はかつて愛した、小山内の娘と同じ名前を持つ女性・瑠璃(有村架純)のことを語りだすーー
直木賞を受賞した小説を映画化した『月の満ち欠け』。目黒は、人妻の瑠璃と道ならぬ恋に落ちる大学生と、時を経て小山内のもとを訪れる38歳、2つの年代を演じている。実際に撮影されたのは2021年で、「silent」や「舞いあがれ!」より前だ。
公開の第一報を聞いた際はまず、目黒蓮が大泉洋・柴咲コウ・有村架純と並んでメインビジュアルに載ることがすごいことだと思った。実際に作品を観て、彼の演技にいい意味で驚いた。大学生時代のまっすぐひたむきに愛する大学生、瑠璃亡き後もずっと彼女を想い続ける様子……一途な愛を貫くところが、雑誌のインタビューなどで恋愛系の質問があった際に「駆け引きは苦手、ストレートに思いを伝える」と答え「ひとつのことしか同時にできない」と語る彼にハマっている役だと思う。
撮影期間中は現場へ泣きながら向かうこともあったというほど入り込んだという演技からは、三角の感情がよく伝わってくる。ラスト近くのあるシーンは、こちらも一緒に涙してしまう。
キスシーンやベッドシーンもあるため、どんな気持ちになるか不安な方もいるらしいが、そういった要素以上に物語全体と三角が素晴らしかった。きっと目黒くんのことをもっと好きになる作品だと思うので、ぜひ劇場の大画面で観てほしい。
「舞いあがれ!」柏木弘明:真逆の”嫌な奴”から変化していく
どちらかというと本人に近い要素がある役が多かった中、ある意味“らしくない役”を演じているのが2022年10月に放送開始された朝ドラ「舞いあがれ!」の柏木だ。
主人公・舞(福原遥)の航空学校の同期として登場。はじめの印象としては、めちゃくちゃ感じが悪い。父がパイロット・母が元CAという航空エリートの家で育った柏木は完璧主義の努力家である一方で、プライドが高く周りの学生とトラブルを起こしたり、自分のミスを認められなかったり。目黒自身は「好きな教科は体育、嫌いな教科は体育以外」というどちらかというと勉強が苦手なおバカキャラで、メンバー想いの“いいやつ”なので、真逆の役だと言ってもいいかもしれない。ただ、努力家という点は共通している。立て続けに航空用語と手話を勉強するのは大変だったろうと思う。
柏木はコミュニケーション能力に難ありだが、舞をはじめとした同期たちとの出会いで、少しずつ変わっていく。仲間を想っての言動も増えてきた。特に同室の水島(佐野弘樹)が試験に合格できず退所することになり、悔し涙を見せるシーンに涙した人も多いのではないだろうか。
本人も公式サイトのインタビューで「最初は嫌なやつだけど、そこからの感情の振り幅が大きな役だ」と言ってとおり、そんな変化を楽しむ役かもしれない。できることなら、長く物語に登場してほしい。
そしてここまで紹介した3作すべてに、印象的な涙のシーンがある。それぞれ異なった泣きの演技で、どれもが胸を打つ。「一度に2つのことができない」とよく口にするが、いつも目の前のひとつの役に全力で取り組み、繊細に演じ分けているのがわかる。
今後の作品でも、見たことのない目黒蓮を見せてくれるだろう。
「教場II」「消えた初恋」『おそ松さん』2021年~2022年に演じた役たち
本記事でご紹介した3役のほかに、この2年演じた役をご紹介したい。まず、デビュー後初のドラマ出演であり、大先輩である木村拓哉と共演した「教場II」では、警察一家で育ったエリート・杣利希斗(そまりきと)役を演じた。眼鏡にオールバックという硬くて真面目ながらさまざまな気持ちに揺れる様子を演じた。
また初の連続ドラマW主演となった「消えた初恋」では、硬派な井田を演じた。言葉は少ないが優しくて真っ直ぐな井田はまさにハマり役で、キュンとする視聴者も多かっただろう。
2022年3月に公開された映画『おそ松さん』では、6つ子の三男チョロ松役を演じた。第一報が入ったときは「目黒蓮がチョロ松ってどういうこと?」と思った人も多いのではないだろうか?
そもそもアニメ「おそ松さん」は、原作漫画「おそ松くん」の設定のままかなり一人ひとりの性格を変えたデフォルメしている。映画はアニメ「おそ松さん」のチョロ松っぽさを残しつつも、目黒蓮ならではの要素もプラスしていろいろな役を演じた(観ればわかる)面白い作品に仕上がっている。
ビジュアルも中身も実にさまざまな役を演じてきたこれらの作品も、いま話題の3作でのジャンプアップへの道をつないだ。来年公開となる『私の幸せな結婚』では今までになかったビジュアルで、新たな一面を見られるのが楽しみだ。
目黒蓮が成長を続けられる理由
目黒蓮はずっと演技派だったわけではない。個人の感想ではあるが、例えば2019年からSnow Manが座長となり毎年上演している舞台「滝沢歌舞伎」(※2020年は映画)内の演目「鼠小僧」で毎年演じている半兵衛という悪役は、2019年時点ではやや粗削りだったように思う。
だがその役も毎年ブラッシュアップされて「教場II」「消えた初恋」『月の満ち欠け』『私の幸せな結婚』と現場を重ねてきたことで、この数年で演技にどんどん磨きがかかっている。一方でSnow Manとしても精力的に活動し多くのセールス成績を残し、毎年ツアーも行っているほか、雑誌FINE BOYSで専属モデルもこなしている。
3足のわらじでもこれだけ成長できる理由は、彼のとことんひたむきに努力する性格によるところが大きいと思う。印象的なのは本人がドキュメンタリー「RIDE ON TIME」やTVなどで語っている、2017年の「滝沢歌舞伎」で負傷した他のJr.の代わりに急遽出演することになったエピソードだ。
夜の23時頃に代役を打診され、寝ずに映像を見て覚え、代役をこなした。その後2019年にSnow Manに加入。加入メンバーを選出した滝沢秀明に「僕がSnow Manに加入できたのはこのことがあったからですか?」と聞いたら「そうかもね」と言われたという。彼自身も不遇な時代があったというが、自身の根性や努力によって、道を切り開いたと言ってもいい。
そして、そんな風に努力し続けられるのは「メンバーがいるから」「自分の活動でグループに貢献したい」という想いがあるからだとよく言及している。自分のためではないから頑張れるというところが、実に彼らしい。
目黒蓮が今後見せてくれる演技と成長に期待!
掴んだチャンスに対して最大限努力し、成長していく姿を見せてくれる目黒蓮。彼なら今後ももっともっと演技でも私たちをいい意味で驚かせ続けてくれるだろうと確信できる。来年2023年に公開を控えている『私の幸せな結婚』をはじめ、今後目黒がどんな役を演じていくのか、楽しみで仕方がない。(文:ぐみ)
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