【暇つぶしにも】年末年始におすすめな映画「5選」


早いもので気づけば2022年も残りあとわずか——。なんて定型文はさておき、みなさんは年末年始の予定をどのように立てているだろうか。自宅で、あるいは実家でのんびり過ごす?そんな時こそ、映画をゆっくり楽しむ絶好のチャンスではないか。

そこで今回は、年末年始の暇つぶしにぴったりな作品をノンジャンルでセレクト。頭を空っぽにするわけではない、けれど身構えることなく気楽に鑑賞できるおススメのタイトルをご紹介しよう。

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1:『プロジェクトV』

(C)2020 SHANGHAI LIX ENTERTAINMENT CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED

『プロジェクトV』
のスタンリー・トン監督と主演ジャッキー・チェンの信頼関係はかなり厚く、『ポリス・ストーリー3』を皮切りに本作で9作目のタッグとなることからもはっきり証明されている。さすがに歳を重ねたジャッキーよりも若手のアクションが中心だが、それでもジャッキーの存在感が薄れるなんてことは決してない。

本作はロンドンで実業家のチョン夫妻が拉致され、ジャッキー演じるトンが創設した特殊護衛隊「ヴァンガード」が出動したことで物語が動き出す。アフリカ・インド・ドバイと目まぐるしく舞台が移る中で、要所要所に用意された激しいアクションはまさにスタンリー・トン印といえる。(スタンリー・トンはアクション監督も兼任)

(C)2020 SHANGHAI LIX ENTERTAINMENT CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED

ジャッキーを筆頭にした格闘シーンはもとより、中盤に用意されたインドでの激しい銃撃戦はさらながらクライマックス並の迫力。他にも激流上での乱戦やドバイでのカーチェイスなど、アクション好きにはたまらない要素がてんこ盛りだ。

またジャッキーイズムを継承する若手キャスト、ヤン・ヤン、アレン、ムチミヤの3人も注目株。それぞれがアクションやドラマの見せ場を作ることで飽きることなく全編突っ走るハイテンポ感が、どこか90年代香港アクションの勢いを感じさせて心地良い。

2:『超高速!参勤交代』

(C)2014「超高速!参勤交代」製作委員会 

「参勤交代」という単語から江戸時代が舞台の作品=時代劇だとわかるものの、「超高速!」の文字によって頭の中が混乱してしまう。内容を知らない人からすればコメディ映画を連想させるだろうし、事実コメディ要素を盛り込んだ作品でもある。

しかしいざ本編が始まれば、国に戻ったばかりの藩主・内藤政醇があらぬ疑いから再び参勤交代を命じられ、家臣らとともにあの手この手で江戸へ向かうことに。“超”とはつくもののSFのような突飛な手段ではなく、打てる手を尽くして地道に参勤する姿を描いているのが特徴だ。

(C)2014「超高速!参勤交代」製作委員会 

そんな不条理な参勤交代を受け入れる内藤役・佐々木蔵之介を筆頭に、家老役の西村雅彦や奉行役の寺脇康文、道中の宿で出会うお咲役の深田恭子ら脇を固めるのも名俳優ばかり。内藤を支える彼らの姿から、藩主以前に内藤という人物がひとりの人間としていかに慕われているのかうかがえるのではないだろうか。

また内藤たちの参勤を阻止すべく暗躍する忍びたちと繰り広げる剣戟や、ワイヤーアクションも見どころのひとつ。一粒で様々な味わいを堪能できる時代劇だ。

3:『男はつらいよ お帰り 寅さん』

(C)2019松竹株式会社

日本を代表する人情派映画シリーズ『男はつらいよ』。主演の渥美清さんが亡くなられて久しく、誰にとっても「寅さん」はもう遠く懐かしい存在だったかもしれない。だからこそ、第1作公開から節目の50周年となる2019年に50作目の『男はつらいよ お帰り 寅さん』が公開されたことの意味は大きい。

そもそも『男はつらいよ』の“最新作”が制作されるというニュース自体に驚いた人も多いのではないか。何より主役が不在であり、たとえ過去作のシーンを切り貼りしたとして、最新作と呼べるのか?寅さん抜きで新撮された登場人物たちの現在を描くことに、意味があるのか……。

(C)2019松竹株式会社

筆者自身もそんな思いを抱きつつ劇場で鑑賞したのだが、不安は杞憂だったとすぐに思い至る。時を経て人間的に大きくなった登場人物たちと、その成長過程が垣間見える過去作のシリーズ映像(4Kデジタル修復)。そして何より—— “寅さん”という変わらない存在

ああこれほど、これほど「お帰り 寅さん」という副題がしっくりくる作品だとは。それが偽らざる感想だった。過去作を交えた丁寧な語り口のため、シリーズ未見でもOK。邦画の古き良き風情を詰め込んだ本作を、年末年始のお供にぜひ。

4:『ゾンビスクール!』

(C)2014 Cooties, LLC All Rights Reserved

イライジャ・ウッドという名前を見て、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのフロド役を思い浮かべるかもしれない。あるいは、今もなお子役時代の面影を重ね見る古参の映画ファンもいるかもしれない。ところが現在は一癖も二癖もある血塗れホラーを嬉々として製作するヤンチャボーイへと成長したのだから、人はどんな道を進むのかわからないものだ。

『ゾンビスクール!』はその邦題が示すとおり、数あるゾンビ作品の中でも子どもたちがゾンビ化して大人を襲うという捻りがある。さすがR15+指定作品とあってゴア描写も満載な一方で、生き残りを賭けて学校から脱出を図る教師陣のクセ強キャラっぷりが面白い。

(C)2014 Cooties, LLC All Rights Reserved

イライジャ演じるヘタレで見栄っ張りな臨時教師クリントをはじめ、教師陣はゾンビ化した子どもたちに真っ向から中指を立てるがごとく容赦ない。コメディ要素を多分に含んでいるためか、たとえ子ども相手でも大人たちの活躍にどこか爽快感にも似た感情を抱いてしまう。

ちなみに本作はイライジャの他にも、『ソウ』シリーズなどのホラー作品で知られるリー・ワネルが一際異彩を放つ教師ダグを怪演(共同脚本、製作総指揮も兼任)し、『glee/グリー』原作・脚本のイアン・ブレナンも自己中な副校長役で出演(同)。

そんな豪華すぎる背景にも注目しながら鑑賞すると、より本作が魅力的に見える……かもしれない。

5:『メランコリック』

(C)One Goose

筆者に限らず、温泉や銭湯が好きという人は多いだろう。近所にも昔ながらの銭湯があるのだが、さすがに「人を殺す場所」として閉店後の深夜に貸し出されているなんて発想は微塵も浮かばない。それを妙に身近に感じる肌触りで映像化したのが『メランコリック』だ。

うだつの上がらない大学生が働き始めた銭湯の“裏の顔”。タイルを染める血塗られた浴場と聞けばサスペンスともホラーとも受け取れるが、本作の魅力はひょいひょいと容易くジャンルを超越するストーリー展開にある。

(C)One Goose

名門大学を卒業していながら劣等感を内包する主人公・和彦と、高校時代の同級生・百合のどこかくすぐられるような距離感。拳銃を手に現場に乗り込み、冷静かつ着実に“仕事”をこなす金髪姿の松本。それぞれに個性があり、まったく予測のつかない物語の中で駒としてではなくしっかり息をして作品が形成されていく。

主演兼プロデューサーの皆川暢二、松本役とアクション演出を務めた磯崎義知、監督・脚本の田中征爾からなる映画製作チーム「One Goose」が明示した邦画の新たな可能性。コメディ要素もある作品なので下手に構えず、まずはフラットな気持ちで楽しんでほしい。

番外編:『MESSI/メッシ -頂点への軌跡-』


2014年製作のドキュメンタリー映画『MESSI/メッシ -頂点への軌跡-』が、これほど深い意味を持つ年が他にあるだろうか。サッカー日本代表の活躍も記憶に新しいFIFAワールドカップ・カタール大会。メッシを擁するアルゼンチン代表が激戦を勝ち上がり、決勝では延長の末にPKでフランス代表を破るという劇的な幕切れで優勝を飾った。

——と、知ったような風を装っているが筆者はサッカーについてとんと知識がない。それでもメッシというスター選手は知っているし、たとえサッカーをよく知らなくても本作に映し出されるメッシがどれほど素晴らしいプレーヤーかは十二分に伝わってくる。

(C)2014 Mediaproducción SLU

本作はホームビデオやテレビカメラに収められた実際の映像と再現映像を織り交ぜつつ、少年時代のメッシからじっくり天才の歴史をたどっている。またイニエスタやピケ、幼馴染たちがメッシの人物像を語っているため本作は情報量が途轍もない。と同時に、いつの間にかメッシのプレーだけでなく彼の人柄そのものにも惹かれているはずだ。

2014年の作品のため、当然のことながら今回のカタール大会への言及はなし。それでもメッシとW杯については触れられているため、今回の結果を踏まえて鑑賞すると非常に感慨深いものがある。いずれにせよ「世界最高峰のサッカー選手」と讃えられるメッシの天性の才能はこれからも多くの人々を魅力するに違いない。

まとめ

何か特別なことをしなくても、普段と変わらず……いやそれ以上にのんびり映画を楽しめるのは年末年始の特権。アハハと声を出して笑ったり、時にはうるっと涙をにじませたり。今回ご紹介した6作品に加えて、普段は観ないようなジャンルに手を伸ばすチャンスでもある。

映画がもたらしてくれる至福のひと時に身を委ねながら、年末年始を過ごしてはいかがだろうか。

(文:葦見川和哉)

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