<B級映画>に愛を込めて──。おすすめ“キラー〇〇映画”5選

(C)2021 RAVEN BANNER ENTARTAINMENT INC.

サメの時代は終わった
──。そんなイカしたコピーを引っ提げて『キラーカブトガニ』が全国公開を迎えた。『Crabs!(カニ!)』という原題も含め、あふれ出す絶妙なB級映画感。嫌いじゃないぜそのセンス。

兎にも角にも、カブトガニをチョイスするところに「モンスター映画の未来は明るい!」と歓喜せずにはいられない。モンスター映画に限らず、これまで星の数ほど生まれてきたパニックムービーの魂もきっと浮かばれるはずだ(死んでない)。

そして今回はCINEMAS+編集部からの「キラー◯◯特集やりましょう!」という胸がキュンとなるラブレターを受け、筆者がほぼ独断で選んだ「キラー◯◯(◯◯キラー)映画」5選をご紹介。

名作・迷作・珍作がひしめく底知れぬ“キラー映画沼”へようこそ。

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『キラー・ジーンズ』現代社会への警鐘(真顔)

(C)10619248 CANADA INC. / EMAFILMS 2019

人に牙を剥くのは何も動物に限ったことではない。たとえば首元限界まで上げていたジャンパーのファスナーが意思を宿したように下ろせず「もうこのまま一生ジャンパーを脱げないんだ。終わりだ」と死を覚悟したことはないだろうか。筆者はない。

そんな“衣類に殺される”という斜め47度くらいのアイデアを堂々映像化したのが『キラー・ジーンズ』だ。タイトルに捻りも高尚な意味もなく、衣料店を舞台に殺人ジーンズがスタッフたちを血祭りにあげていく。

(C)10619248 CANADA INC. / EMAFILMS 2019

確かにあらすじは「THE B級映画」といった風情。キャストのオーバーな演技はじつにクセが強く、殺人ジーンズの動きもチープ感は拭えない。

一方で、ほぼワンシチュエーションという強みを生かした画作りに不満はナシ。何より殺人ジーンズの出自と因果に、目を背けてはならない現代の社会問題を絡めた製作陣の意図にも注目してほしい。

『キラー・メイズ』段ボール版ミノス迷宮

(C)Dave Made An LLC. All Rights Reserved.

帰宅すると部屋に継ぎ接ぎだらけの段ボールハウスが建っている。いかにも子どもが作りそうな外観だが、中から聞こえてくるのはパートナーの声。室内に建てた程度のサイズなのに、ハウスの中で迷ってしまい出られないという。

そんな冒頭から物語が展開していく『キラー・メイズ』。段ボールの“迷宮”を作ったうだつの上がらない芸術家デイブを救うべく、ガールフレンドや友人、取材クルーたちが迷宮へと飛び込んでいく。ところが迷宮内には様々なトラップが仕掛けられており、パーティーから犠牲者が出始める──。

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なんとも不思議な作品だ。迷宮内はトラップを含む全ての素材が段ボール製。パっと見のルックは低予算映画のヴィジュアルながら、圧倒的な創造力がそれらのチープさを上回っている点が面白い。興を削ぐのも野暮なので詳細は伏せるが、リアリティを超越し、“映像で成し得る表現”を立て続けに盛り込んでいるところにビル・ワッターソン監督の才気を感じる。

首チョンパや串刺しなどの表現はあるものの、血飛沫まで紙でポップに表現されるのでグロ耐性がなくても無問題。ギリシャ神話の「ミノス迷宮」よろしく、段ボール製の牛頭になぜか体はリアルマッチョなミノタウロスが徘徊しているのも愛おしい。

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そして何より、豊穣なイマジネーションを持ちながらそれを形にできないという想像力と現実の軋轢に、思わず「わかる」と頷きたくなる人も多いのではないだろうか。

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『パペット・キラー』邪悪なエ◯モ!?



『パペット・キラー』の鍵を握るのは、幼い少年ジェイミーが母親からプレゼントされたピンク色のパペット。セ◯ミ・ストリートに登場するエル◯に似たパペットは「サイモン」と名づけられ、ジェイミーにとって唯一の友達となる。

とはいえこの家族自体なかなか特殊で、クリスマスに揃ってホラー映画を観るのが習慣。案の定ジェイミーの継母はホラー映画鑑賞を楽しむ幼いジェイミーに危機感を覚えるのだが、継母は何者かの手によって惨殺されてしまう。

それから10年後のクリスマス。高校生のジェイミーはガールフレンドを含めた友人たちと、かつて家族と過ごした別荘を訪れる。しかし地下室からサイモンが見つかったのを契機に、友人たちがひとりまたひとりと殺人鬼の餌食に……。

コメディテイストの香りが漂うも、本作はちょっとした捻りも効いている。「サイモンが人を殺しているのではないか」と疑うジェイミーと、“現実と妄想の区別がつかないジェイミー”を俯瞰する観客の2つの視点によって、物語を混乱させる構造になっているのだ。

などと真面目に書いてはいるものの、本作最大の“謎”は高校生になったジェイミーを映画製作時点で50歳の俳優アレクス・ポーノヴィッチが(なんの説明もなく)演じていることだろう。想像してみてほしい。見た目50歳の高校生が目を輝かせながら友人たちに「ホラー映画観ようぜ!」とはしゃぐ姿を──。

『殺人魚フライングキラー』巨匠自ら黒歴史認定


殺人魚フライングキラー』と聞いて、「ああキャメロンのね」と返す人はなかなかの映画通。本作はのちに『ターミネーター』シリーズや『タイタニック』『アバター』シリーズを手掛けるジェームズ・キャメロンの監督デビュー作だ。

邦題からは読み取れないが、本作は『ジョーズ』人気に便乗したジョー・ダンテ監督作『ピラニア』の続編に当たる。とはいえストーリー・登場人物ともにつながりはなく、単発でいきなり鑑賞しても問題はない。

前作を踏襲していることもあり「軍が極秘開発した殺人魚」「空飛ぶ殺人魚」「ビーチを血に染める殺人魚」とどこを切り取ってもB級映画として香ばしい。キャメロンは急遽監督に駆り出された挙げ句途中で解雇されたこともあり、本作をデビュー作と認めたくないと公言している。

キャメロンが嫌悪感を示すとおり、確かに本作は褒められるところが少ない。編集のリズムは悪く、肉を削がれた死体はこれでもかと映すのに肝心要の殺人魚はその姿をはっきりせず。パタパタパタ〜と響くかわいらしい飛行音には思わず笑ってしまう。

それでもなぜか嫌いにはなれず、映画史の中で脈々と語り継がれている珍作なのだ。

『カニング・キラー/殺戮の沼』実在する巨大人喰いワニ


日本には野生のワニが存在しないため、その恐怖はいまいちピンとこないかもしれない。とはいえ海外では、米映画『アリゲーター』や米・伊合作の『キラー・クロコダイル』のようにジャンル映画として長い歴史を誇る。そして数ある作品の中で、アフリカ・ブルンジ共和国の湖に実在する巨大人喰いワニ「ギュスターブ」をモチーフにしたのが『カニング・キラー/殺戮の沼』だ。

しかも歴代のワニワニパニック作品とは異なり、部族間抗争も物語のテーマに据えているところが珍しい。川には巨大人喰いワニ、陸には残虐な政府軍という逃げ場のない状況下で、メインキャラでも命を落とすシビア路線に徹底している。

ここまで読んでいただければ伝わると思うが、モンスターパニック映画としてはかなりリアルに寄せた作品だ。もともと気性が荒いナイルワニの設定とはいえ、人を襲うようになったのも「川に遺棄された抗争の犠牲者の味を覚えたから」という理由に「なるほど」と納得させられてしまう。

残念ながらワニ映画はサメ映画に比べて影が薄い。しかし本作のワニは巨大にして俊敏、重量をしっかり感じさせる襲撃シーンの連続で存在感は抜群。「サメはもう飽きてきた」という映画ファンには、ぜひとも本作をきっかけにワニ映画を開拓してみてほしい。

(文:葦見川和哉)

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| 2017年 |アメリカ  |80 分 | (C)Dave Made AnnLLC.All Rights Reserved.  | 監督:ビル・ワッターソン | ミーラ・ロフィット・カンブハニー/ニック・サン/アダム・ブッシュ |アンヌ・マリヴィン/セオ・フェルナンデス/フランシス・ルノー

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