映画コラム
【祝!アカデミー賞】ミシェル・ヨーってどんな人?
【祝!アカデミー賞】ミシェル・ヨーってどんな人?
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第95回アカデミー賞で、アカデミー主演女優賞を『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(『エブエブ』)のミシェル・ヨーが受賞。
2001年(第74回)にハル・ベリーが『チョコレート』でアフリカ系として初めて主演女優賞を受賞してから、20年以上かけてやっとアジア系女優が栄冠をつかみました。
ミシェル・ヨーの人種やジェンダー、年齢に切り込んだ情熱的なスピーチは感動的で力強いものでした。
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ミシェル・ヨーってどんな人?
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.ミシェル・ヨーは、表記によってはミシェール・ヨーだったり、ふた昔前だとミシェル・キングという名前だったりさまざまで、彼女のキャリアの幅と長さの証明の1つと言えるでしょう。
そんなミシェル・ヨーは、世代によって映画ファンの中でもイメージが大きく変わると思います。
私のようなアラフォー世代以上の人は「バリバリのカンフーアクションスター」というイメージで、若い世代になると「文芸作品も彩る国際派スター」のイメージがあるのではないかと思います。
デビューはカンフーアクション
ミシェル・ヨーは1962年に生まれ(信じがたいことですが還暦!?)で1984年から映画俳優としてのキャリアをスタートさせました。
香港映画でデビューを飾ったため中国出身かと思われがちですが、マレーシア生まれ。元々はバレリーナを目指していましたが、足のケガで断念した後に芸能の世界に入ります。
ミスマレーシアに選ばれるといった順調なキャリアスタートを切り、ジャッキー・チェンの兄貴分として日本でもおなじみのサモ・ハン(サモ・ハン・キンポー)の引きで1984年に映画デビュー。サモ・ハン人脈ということもあってスタートからアクション中心でした。
しかし、結婚を機にスパッと引退宣言。この引退期間は5年ほどで終わり、1992年のジャッキー・チェンの大ヒットシリーズ第3弾『ポリス・ストーリー3』でカムバックします。
体当たりアクションで国際派へ!
ミシェル・ヨーは『ポリス・ストーリー3』でジャッキーどころか映画全体を喰いかねない勢いで、まさに“圧巻”としか言いようのない存在感を見せました。本作のインパクトは本当に大きく、彼女のキャラクターを主役にしたスピンオフ作品(『プロジェクトS』)が作られたほどです。
本作はアメリカでも公開。ビジネス的なブレイクはもう少し後ですが、すでにジャッキー・チェンはハリウッドでも知られたアクションスターでした。その新作に、びっくりするようなキレキレのアクションを披露してジャッキーと並び立つインパクトを見せたミシェル・ヨーの顔と名前を、ハリウッドの業界人は一気に覚えることになります。
そして最初の大きなポイントとなるのが1997年。
『ポリス・ストーリー3』でのミシェル・ヨーの圧倒的アクションを見たハリウッドは、人気スパイシリーズ007『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』のヒロイン、いわゆる“ボンドガール”(現ボンドアクトレス)に抜擢します。 アジア系としては日本人の浜美枝と若林映子以来のボンドガールです。
『ポリス・ストーリー3』で演じた強いヒロインそのままに007の世界でもミシェル・ヨーは大活躍、当時ジェームズ・ボンドを演じたピアース・ブロスナンを完全に喰うインパクトでした。
文芸路線で新境地
アクションだけでなく、同じ1997年に非アクションの文芸作品実話歴史ものの『宋家の三姉妹』にも出演します。アクションを封印した文芸路線は本作がほぼ初めてといえる中で、見事にメインキャストを演じ切って「アクションだけじゃない!」ことを世界的に知らしめました。もちろん、それ以降も『ハムナプトラ3』『レイン・オブ・アサシン』『イップ・マン外伝 マスターZ』などのアクション映画に出演しています。
2000年代前半の時点でミシェル・ヨーはアクションと非アクション路線の二本立て路線を確立させます。このアクション+文芸路線の結びついた最初の一歩が2000年のアン・リー監督『グリーン・デスティニー』でしょう。台湾人監督による中国・香港合作の武侠映画です。
『グリーン・デスティニー』は当時としては本当に異例の大ヒットと批評的評価を受け、当時のアカデミー賞で作品賞を含む10部門ノミネートを受け、4部門を受賞しました。
さらに最初期のNetflixオリジナル作品の1本として続編の『ソード・オブ・デスティニー』が作られミシェル・ヨーは主演を張っています。
『トゥモロー・ネバー・ダイ』と『グリーン・デスティニー』の大成功を経て、一気に国際派俳優の地位に上り詰めたミシェル・ヨーは、『SAYURI』『サンシャイン 2057』『The Ladyアウンサンスーチー引き裂かれた愛』『ラスト・クリスマス』などハリウッド圏の非アクション映画にも多数出演するようになっていきます。
アジア系のパイオニアとして
“多様性”を求める風潮が強まった時期に、映画業界ではアジア系スタッフ・キャストを集めた企画が進むようになります。
そんな中で大きなポイントとなった映画に、2019年のミシェル・ヨーがメインキャストを務めた『クレイジー・リッチ!』があります。本作は、とりあえずバランス感覚を取るためだけにアジア系、アフリカ系に白人が演じていた役を振ったわけではなく、全てがアジア系のキャラクターである意味のある映画でした。
『クレイジー・リッチ!』(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT
結果として『クレイジー・リッチ!』は全米週末興行収入ランキング1位を獲得するなど大ヒットを記録しました。
この流れは『フェアウェル』、そしてMCU大作『シャン・チー/テン・リングスの伝説』にもつながったといって過言でないでしょう。そしてこの成功の流れが今回の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』に繋がりました。
これからも大作公開待機中
『ポリス・ストーリー3』から40年近くが経った中で、とうとうオスカーウィナーにまで上り詰めたミシェル・ヨーは、『エブエブ』以降も大作企画が目白押しです。
今年2023年公開予定の中にはあの大ヒットSFアクションシリーズの最新作『トランスフォーマー/ビースト覚醒』でボイスキャストを務めています。
さらにケネス・ブラナーによる『オリエント急行殺人事件』と『ナイル殺人事件』に続くアガサ・クリスティーもの第3弾の『A Haunting in Venice(原題)』も2023年全米公開予定です。クレジットの並びから見るとミシェル・ヨーはトップになっているようです。
続いて2024年にはあの『アバター』の第3弾の出演が決定。カリナ・モーグ博士という役どころです。
どれもハリウッドメジャーにとって勝負作の1本といえるビッグタイトル、その中にあってもミシェル・ヨーは引き続き抜群の存在感を放ち続けてくれそうです。
(文:村松健太郎)
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