「舞いあがれ!」うっきうきの舞に対して、貴司が短歌に行き詰まって暗い<第119回>
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2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
本作は、主人公・岩倉舞(福原遥)がものづくりの町・東大阪と自然豊かな長崎・五島列島で人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は第119回を紐解いていく。
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もうこういう歌は詠めません
祥子(高畑淳子)はすっかり読書に夢中。新たな趣味を獲得です。
貴司(赤楚衛二)の歌集「デラシネの日々」も読み、好きな短歌を読み上げます。
”海水の砂に手差して冷たさに痺れた指を水でぬくめる”
(貴司の短歌)
「ぬくめる」がひらがなで良いと評価する祥子。たぶん、この歌は貴司が五島にいたときに作ったものではないでしょうか。きっと祥子も海水で指をぬくめた体験があるように感じます。
でももうそういう歌は作れないと悩む貴司。孤独な旅のなかでつくっていましたが、いまは孤独じゃないからでしょう。妻も子もいる、おだやかな毎日に、歌が出てこなくて苦しんでいるようです。
2階に水回りあるのに1階のキッチンに水を入れに行く貴司。2階の水回りは飲料水ではなくあくまで手を洗う用だけなのですね。お茶もいちいち1階に行かず気軽に飲めるようにしているのかと思いましたら違うようです。
ひたすら暗い貴司と違って、舞はうっきうき。
空飛ぶクルマに夢中です。ついには悠人(横山裕)を呼び出し投資家探しを頼みます。
悠人「ほんま飛行機好きやなあ」
舞「ふつうの飛行機ちゃうよ 空飛ぶクルマやでえ」
こんなふうに言ってますが舞が淡々としていて、夢中な感じがあんまりしません。なにわバードマンのときの実際に体(足)を動かしていたときだけ本物の熱がありました。「舞いあがれ!」の残念なところは熱っぽい言葉と丁寧な取材に依りすぎてそれを身体に置き換え可視化できなかったことでしょう。
その点、松尾諭さんは何かしら動きを入れてきます。タックルとか担ぎ上げるとか。今日は客のハンバーグを切ってあげていました。こういうことで体温がちょっとあがる気がします。
悠人はまだ存在しないものに投資するのは難しく、トップのカリスマ性が必要だと説きます。舞は刈谷先輩ならそれがあると信じています。トップのカリスマ性の内面はあっても見た目がちょっとーー素材はいいけど髪の毛がぼっさぼさとか服のセンスが……とかで刈谷をカリスマに改造するとか、何かそういう動きのある場面が見たかったです。まあもう刈谷に時間をこれ以上かけられないのはわかりますが。
なにせあと7回しかありません。
それにしても、存在しないものに人はピンと来ないという話はひじょうに共感します。歴史ものや、実在した人物の物語が人気であることはそういうことです。
たぶん、今日はWBC決勝をみんな見ていると思います。
その頃、めぐみは、章(葵揚)に社長を譲ることになります。いよいよ、めぐみが五島に行く、人生の転換点になりそうです。章は誠実で、能力もあり、たぶん、カリスマ性も発揮することでしょう。
【朝ドラ辞典 BK(びーけー)】NHK大阪放送局の略称。日本の放送局所の呼出符号のNHK大阪放送局がJOBKだから。東京放送局はAK。朝ドラは、AKとBKが半年ずつ交代で作っている。AKが前期、BKが後期。東京と大阪では作風が違うと言われそれぞれの朝ドラのファンもいるらしい。BKの朝ドラの場合、ヒロインほかメインの出演者は大阪に引っ越して撮影を行うことが伝統になっている。
関連語:AK
(文:木俣冬)
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