「こういう作品にこそ、出てみたかった」細田佳央太の念願叶った『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』
ドラマ「もしも、イケメンだけの高校があったら」(テレビ朝日)「ねこ物件」(テレビ神奈川)「家庭教師のトラコ」(日本テレビ)「クレッシェンドで進め」(日本テレビ※ZIP!朝ドラマ)、そして映画『女子高生に殺されたい』『線は、僕を描く』など、2022年だけでも数々の作品に出演してきた細田佳央太。
今回の映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』(略称:ぬいしゃべ)での主演は、彼にとって念願だったという。「こういう作品に、ずっと出てみたかった」と語る真意を聞いた。
「こういう作品を求めていた」“ぬいしゃべ”に込めた思い
▶︎本記事の画像を全て見る――『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』で細田さんが演じられた七森という役柄は、細田さんの雰囲気に合っていますね。
細田佳央太さん(以下、細田):本当ですか? よかったです、すごく怖かったので。『ぬいしゃべ』への出演が決まったときに「ずっとこういう作品に出てみたかった!」と思ったんです。でも、それと同じくらいプレッシャーもありました。
――プレッシャー、ですか?
細田:この作品が、観てくださる方にどう伝わるか……それよりも、自分がこの作品のなかでどう生きられるか、そこに心配や不安があったんです。ほかのキャストやスタッフさんをはじめ、金子由里奈監督も素敵で優しい方なので、どうにか力になれたらいいな、といった気持ちもありました。
――細田さんの優しい雰囲気が、作品にも役柄にも反映されていると思います。ただ、確かにこれまで細田さんが演じられてきた役柄とは、少し違うかもしれませんね。
細田:まったく毛色が違うと思います、内容も、撮影環境も。良い意味での“不安定さ”があるなかでこういった作品に関われたのが、とても嬉しかったですね。プレッシャーもありましたけど、ずっとやってみたかったような話だったので「やっとできる!」って思いました。
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――金子監督とは、七森という役を作り上げていくうえでどんな話をされましたか?
細田:「七森ってこういう人!」という“七森像”が、金子監督のなかに明確にあったんです。本読みの段階からその七森像を共有するとともに、七森の心情の変化や、浮き沈みの流れを大切にしてほしい、といった話をしてくれました。
たとえば、このシーンの七森の「落ち込み度」はこれくらい、とか。わかりやすく提示してもらえたので、心境の浮き沈みが掴みやすかったです。ただ、七森のキャラそのものを掴むのには時間がかかりましたね。
――言葉では理解できても、実際の表現へと落とし込むのは難しそうですね。
細田:そうですね。七森の心情に上手く寄っていけるまでは、スタートラインに立てない。反対に、そこに立てさえしたら早いな、とも思っていました。
常にお芝居をしていないと、不安
▶︎本記事の画像を全て見る――実際に脚本をご覧になり、そして七森を演じてみて、どういった点に難しさを感じましたか?
細田:余白の多い台本だったので、「この余白をどう埋めていくか」をずっと考えていました。
たとえばドラマだと、1時間のなかに入れ込む情報量が多いけど、この映画は対極なくらいに余白が多いんです。明らかに、ほかの作品とは違う難しさがありました。撮影期間も2週間くらいだったので、早くスタートラインに立たないと置いていかれちゃう。間違えてしまったら取り返しがつかない、そんな繊細さがありましたね。
――出演作が続いている細田さんですが、自分なりの「役作りのルーティン」みたいなものはあるんでしょうか?
細田:いやあ、ないですよ。でも、強いていうなら、ありがたくも多くの作品に出させてもらい、台本を読む回数も増えたので、安定した読み方ができるようになってきたかもしれません。台本からできる限りの情報を拾い上げて、自分なりに形にできるようになってきたのかな、と。
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――細田さんとしては珍しく、2023年1月期はドラマ出演のないクールでしたね。
細田:2022年は、ドラマに出ていない時期がなかったんです。ちょうど1月期のクールはドラマに出演していないので、実力の指標がなくなってしまっていて。
――指標、ですか?
細田:たとえば、同時に複数の作品が並行していると、なんとなく自分の力量みたいなものが測れる気がするんです。でも、いまの時期(取材は1月中旬に実施)はそれがない。これまで100%フルで走り続けてきたからこその“ガス欠”が、無意識に起こっちゃってるんじゃないかって、不安なんです。
現在進行形で、自分がどんなお芝居をしているかわからないからこそ、不安になっちゃいますね。
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――今回の『ぬいしゃべ』においては、共演したほかのキャストさんからどんな刺激を受けましたか?
細田:まさに個性の塊というか、自分にないものを持っている人ばかりの現場だったので、刺激しかなかったです。そういった意味でも、これまでの現場とは温度が違いました。それぞれの個性に引っ張られ続けていましたね。
今回のように、繊細なものが積み重なっている現場では、あまり余計なことはしないように気をつけています。なんというか、その瞬間からほつれていってしまう……と、直感的に思ったので。
「人にやさしく」細田佳央太の2023年の抱負
▶︎本記事の画像を全て見る――『ぬいしゃべ』は、長回しのシーンや長いセリフも多いですよね。
細田:僕、長回しや長セリフのシーンが好きなんです。ドラマのように細かいカット割がないぶん、感情に任せられるので、やりやすいですね。そのぶん長回しや長セリフは、登場人物の感情がマックスに近づく過程を捉えていることが多いので、集中力が必要なんですけど。
僕、そんなに体力も集中力もないんです。集中力が切れた瞬間に「あ、切れたな」ってすぐにわかるくらい。そこから頑張って戻そうとしても、なかなか難しくて……。どうやっても1時間くらいしか保たないので、もっと持続させられるようになりたいです。
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――1時間も集中できるって、相当だと思いますよ。そんな細田さんの、今年の目標を伺いたいです。
細田:「人にやさしくする」です。空気を読んで気持ちを誤魔化してしまうこともあるのですが、正直に伝えるのが本当のやさしさだよな、と思います。これまではできないことも多かったので、気をつけていきたいです。
――そう思われるようになったのは、『ぬいしゃべ』への出演がきっかけですか?
細田:まさに『ぬいしゃべ』を通して、人との接し方に少し変化が出てきたな、と感じていて。感覚が敏感になってきたというか、“人の目に宿る情報量の多さ”に気づいたんです。たとえば一緒にご飯を食べているときも、僕のふとした言葉に相手が目を見開いたら「嫌な思いさせちゃったかな」って思うようになりました。ただ敏感になってるだけかもしれないんですけどね。
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――多くのファンの方と同じように、やさしくない細田さんは想像できません。
細田:そう言ってもらえると嬉しいです。でも、きっとそれは、これまで僕が演じてきた役がやさしくて良い子ばかりだったからかもしれません。僕自身というよりは、僕のやった役を好きになってくれた方が多いと思うので。役には恵まれていると思います。
――まったくイメージの違う役をやってみたい、と思われることもありますか?
細田:あります! サイコパスな役とか、ずっとやってみたいんですよ。この間、1話だけゲストで出させてもらった「金田一少年の事件簿」(22年)で演じた誠くんも、とても楽しい役でした。僕としては、自分を大きく見せようとしちゃう可愛らしさがある男の子だと思っていて。もっとクレイジーな役も、やってみたいですね。
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(ヘアメイク=菅野綾香/スタイリスト=岡本健太郎/撮影=Marco Perboni/取材・文=北村有)
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(c)映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」