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2023年05月02日

「かしましめし」第4話:一貫性のないパーティメニューみたいな世界を楽しく

「かしましめし」第4話:一貫性のないパーティメニューみたいな世界を楽しく

©「かしましめし」製作委員会
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おかざき真里の同名漫画を原作としたテレビ東京のグルメドラマ「かしましめし」が放送スタート。前田敦子、成海璃子、塩野瑛久が演じる、人生につまずいたアラサー男女3人がどんな日も美味しく“かしましく”ご飯を食べる模様を映し出す。

本記事では、第4話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

「かしましめし」第4話レビュー

©「かしましめし」製作委員会

「自分で言ったから言うけど、あるあるだね」
『なんだよ、その自分で言ったからって』

「他人から無責任に言われると傷つく言葉じゃない?あるあるって」
『いいね。そうやってほんのり気を遣い合うから一緒に住めるんだろうな』

榮太郎(若林拓也)のその言葉に思わず、うんうんと頷いた。この世界はみんながみんな、自分に優しいわけじゃない。チクっとするような言葉をかけられることも、モノみたいに雑に扱われることもある。

なんでそういうこと言うの? 今の傷ついたんだけど。

そう言えたら楽なのに、傷つけられたのは自分なのに、なんだか場をしらけさせたり、相手を責めた感じになって逆に悪者みたいになりそうだから口をつぐむ。そのうえ、ヘラっと笑ってみたり。

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千春(前田敦子)とナカムラ(成海璃子)と英治(塩野瑛久)は相手にどんな言葉を向けるか、どういう態度で接するか、とても慎重に選んでいるように思う。

3人とも他人に深く傷つけられたことがあるから。そして何より、彼らが出会ったのは自ら命を絶った同級生のお葬式だった。

もう本人に会えない以上、理由を問うことはできない。ただ、人間は強いものだと高を括っていたら、知らないうちに誰かを死の淵に追いやってしまうことだってある。

千春たちの気遣いは「人間は強い」ではなく「人間は弱い」から出発しているからこそ自然と生まれるものなのだろう。

©「かしましめし」製作委員会

だけど、自分の気遣いや優しさだけで大切な人を守れるわけじゃないことも千春たちは知っている。英治が取引先の人が何気なく口にした言葉に傷ついたり、ナカムラが恋人の田口(倉悠貴)と過ごす時間にちょっとした違和感を抱いたり、千春がふとした瞬間に蘇る記憶に苦しめられたり。

それぞれの日常に入り込んでまで、痛みや苦しみを取り除いてあげることはできないのだ。

本人だってそれを望んでいない。しんどいことや辛いことがあったって、仕事をしている時間も恋人と過ごす時間もその人にとっては必要なのだから。でも、無理がたたれば自分でも気づかないうちに疲弊していることもある。

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「笑うのってゆっくりした自殺みたいや」

英治の言葉にどきりとした。そう、人は弱いけど、その弱さを隠すのが得意だから怖いのだ。

場合によるけれど、人が自ら命を絶った時、あまりに突然すぎて信じられないことがある。だけど、多分突然じゃないんだろうな。気づかなかっただけで、その人はずっと目の前でゆっくり自殺していたんだろうなと思う。

だから千春たちのように、大切な人にはせめて自分の前だけでは無理に笑わなくてもいいような時間を作ってあげたい。誰かに優しくされることで、自分を優しくできるようになったりもするから。英治が、浮気して自分を傷つけた彼氏の辰也(吉村界人)を「もう好きじゃない」と思えたように。

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そういえば、「かしましめし」第4話は千春への賛美が溢れた回だった。

「あのオレンジはすごかったね。他の人には塗れないよ。初めて見た。度胸あるね。いいセンスだよ」(蓮井(渡辺篤郎))

「何より千春がすごいのはね、普通でいること」(ナカムラ)

「天才!」(お絵かき教室の子供)

お前はダメだダメだと言って千春の自信を奪う人もいれば、彼女が自信を取り戻せるような言葉をかけてくれる人もたくさんいる。お客さんを招いた千春の家のテーブルに並ぶメニューみたく、この世は一貫性がなく色んな人がいる。

だけど蓮井が「一貫性がないところもいいな」と言うように、その多様性を楽しみ、傷つける言葉じゃなく、あれも美味しい、これも美味しいと相手が喜ぶような言葉をかけられたらいい。

(文:苫とり子)


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