「かしましめし」第6話:“キングオブ家飯”のお好み焼きみたいに人も愛せたらいいのに
おかざき真里の同名漫画を原作としたテレビ東京のグルメドラマ「かしましめし」が放送スタート。前田敦子、成海璃子、塩野瑛久が演じる、人生につまずいたアラサー男女3人がどんな日も美味しく“かしましく”ご飯を食べる模様を映し出す。
本記事では、第6話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
「かしましめし」第6話レビュー
©「かしましめし」製作委員会英治(塩野瑛久)が退院し、千春(前田敦子)も蓮井(渡部篤郎)の家に一晩泊まって帰ってきた。またナカムラ(成海璃子)を含めた3人の暮らしが始まる。最初にみんなで食べたのはお好み焼き。餅入り?こんにゃくも?と驚きがいっぱい。
誰かが作ったお好み焼きを食べるのって面白い。大阪風なのか、広島風なのか。豚バラ、シーフードミックス、桜えび、チーズ、キムチ……それこそ、具材を何にするかで味わいも変わってくる。出来上がったお好み焼きをピザみたいに切るか、格子状に切るかで巻き起こるプチ論争もまた一つの楽しみ。お好み焼き一つでその人のことをちょっと知れたみたいで嬉しくなってしまう。
やっぱりお好み焼きは英治の言う通り、キングオブ家飯なのだ。普通なんてどこにもない。自分に対しても、他人に対しても、そう思えたら楽なのに。
©「かしましめし」製作委員会
自分が受けた理不尽を忘れず生きていくと決めた千春。一方、英治は絵をまた描き始め、ナカムラは自分の気持ちを確かめるためにたぐっちゃん(倉悠貴)との旅行に出かけていく。「かしましめし」第6話では、3人の日常が静かに動き始めた。
お絵かき教室の子どもみたいに「大事なのは精一杯描けたかどうか」とはまだどうしても思えない英治。自分の絵に納得できず、もやもやする彼に蓮井は「君の目が変わったんだよ」と言う。デザイナーから営業に回されたのは英治にとって望んだことではなかったが、結果的に“選別する側の目”を手にいれた。
でも、それが英治の迷いに繋がっているのだろう。画家として、営業として、それぞれ自分の道をまっすぐ突き進んできた蓮井や上司である園田(福田麻貴)。その迷いのない背中に英治は感化される。英治に今必要なのはどちらかの道を選んで、納得することなのかもしれない。
©「かしましめし」製作委員会
だけど、自分で納得していても他人が納得してくれないことも往往にしてある。英治に「僕は誰にも性欲を持てないんです」と打ち明ける蓮井。ああ、だからか、と思った。
千春が蓮井に「この人は絶対に自分を傷つけてこない」という安心感を持てる理由。他人に性欲を持つことはけっして悪いことじゃないけれど、時としてそれは相手に恐怖感を与える。そのつもりは全くなかったとしても、期待させてしまった自分が悪いみたいで答えなきゃいけない圧のようなものを感じてしまうから。
でも千春が夜中に蓮井の家を訪ね、抱きついても彼は一切手を出してこない。何もせず、ただ寄り添ってくれることが千春にはありがたい。だけど、別れた蓮井の妻はそうじゃなかったのだろう。何もしないことがありがたいと思う人もいれば、寂しいと思う人もいる。
©「かしましめし」製作委員会
たぐっちゃんは多分、寂しいと思う側の人間だ。ナカムラとの間にある適度な距離に彼は満たされないものを感じている。美味しいものを食べたら真っ先に知らせたくなって、呼び出されたらいつでも駆けつけたくなるほど大好きなナカムラともっと一緒にいたい、同じ布団で朝まで眠りたい……。
たぐっちゃんの純粋さは見ていて微笑ましいものだけれど、それもまた受け取る人によっては怖くなるものなのだろう。彼がナカムラに向ける溢れんばかりの感情はいわば欲であり、期待だから。愛し合っているなら当然という世の中の風潮も相まって、それに答えない自分が何やら薄情に思えてしまう。
たぐっちゃんからの愛情が昼間は嬉しくて幸せだったのに、夜になると突然怖くなる自分を「私、なんかちょっとおかしいみたい」と自分で否定するナカムラ。人に期待されないことはありがたくて、寂しくて。どちらが正しいとか、間違っているとかじゃないのが今は少しだけ切ない。
(文:苫とり子)
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