映画コラム

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2023年07月01日

『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』ケンカと暴力——本当に強い男って?

『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』ケンカと暴力——本当に強い男って?

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『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編-決戦-』が6月30日(金)に公開された。もはや言わずと知れた話題作である。かつての恋人・ヒナタを助けるために主人公のタケミチがタイムリープを繰り返し、過去を変えていく。
 
ヒナタは凶悪化された東京卍會によって殺された。そして現代ではドラケンが死刑囚となっている。拘置所で再会したふたり。そこでタケミチは衝撃的な事実を聞く。東京卍會ではある悲しい事件が起こり、創立メンバーのマイキー・ドラケン・場地・三ツ谷・パーちん・一虎はバラバラに。



東京卍會と敵対する芭流覇羅(バルハラ)の幹部になった一虎と、敵側に寝返ったマイキーの親友・場地。タケミチは馬地を東京卍會に連れ戻すのがヒナタを助けるためには必要だと考えるが、それはひいてはマイキーたちを救うことにもつながる……。

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もしかして、強い人ってカッコイイ……?


痛いのは嫌だし、痛い目に遭っている人を見るのも気分が良いわけではない。でも、戦うフォームが美しく、無敵感があると圧倒される。惹かれてしまう。え、でもそれってマイキーが美しいからでは?

一瞬の風になびくマイキーの金髪が美しいからじゃないの?いや、マイキーは確かに美しいが、それだけではないのだな、と思う。ひとつの様式美のようなものがあるのかな、とアクションの右も左も分からない初心者は思ったりする。


東京卍會と芭流覇羅の決戦でも驚いたのが、立会人がいることだ。あっ、そういう公平性みたいなのあるんだ……となった。なんというか、昔々、武将が名乗りをあげてから斬りかかる、みたいなのと一緒だろうか。

つまり人を殺さない、警察沙汰にしない、というのが前提であるのだろう。安心して観られるじゃん……となる。(そのあと、何も安心できない物語の展開となるが)

強いヤツが強い、けど


『血のハロウィン編-決戦-』でキーマンとなるのが、場地、そして千冬だ。高校に入学したばかりで不良たちをボコボコにした結果、多勢に無勢で報復を受けそうになった千冬。そんな千冬を助けたのが場地だ。その圧倒的な強さに魅了される。同時に、場地はとてもピュアな側面と、大切な仲間を絶対に守る、という強い意志がある。千冬にとっては、男の中の男が場地だった。

だからこそ、場地がマイキーを裏切ったことが信じられない。場地にとって、マイキーはかけがえのない守りたい存在のはずだし、そして自分のことだって……という思いがある。


心技一体というけれど、魅力ある強い男には何か一本、筋が通っているものがあってこそ、なのかもしれない。強い場地が、そんな筋の通らないことをするだろうか、という千冬の気持ちが感じられる。

ただ、東京卍會ってピュアな人が多くて、腕っぷしが強い人がピュアすぎると、その強さに心がついていかなくなる、強さに心が押しつぶされてしまうのではないか、と思ってしまう。これってなんて少年漫画的。

卑怯な暴力ってコワイ


越えてはいけない一線が定められているからこそ、その一線を越えた卑怯な暴力の理不尽さが際立つ。

企みを持つキサキや半間の得体の知れなさ。そして肚に何かを抱え、心と力の強さが伴っているとつぶれることがないんだなァ……と思ってしまう。憎まれっ子世に憚るってこういうことか。
 
で、観ているうちに考えさせられるのは、ケンカと暴力ってやっぱり違うんだな、ということだ。卑怯な手を使えばそれは暴力だし、何か信念を持った上で対等に拳が殴り合うのはある種、スポーツに近いというか……。


東リベでは、ケンカがいつ暴力になってしまうのか、という怖さがあるからこそ、目が離せなくなるのかもしれない。そして、暴力になることを止めようとしているのがタケミチ……ということだ。

タケミチの場合は、心が強いけどケンカはそんなに強くない。でもそんな彼を見ていると、心が体を凌駕するときがあるということがわかる。だから、彼の言葉は他人の心を打つわけなんだけど、それもまたピュアでないと響かないわけで……。ああもう全人類、ピュアであれ……。

理不尽さの気持ち悪さ


世の中には理不尽が横行していて、東リベの作中にも理不尽、納得がいかないことが頻出する。ただ、それがしっかりと違和感を与えてくれているのは優しいのかもしれない。

個人的には一虎の行動が映画で観る分には全く納得ができない。マイキーの兄を殺してしまった、いやマイキーを大事に思っている自分がマイキーの兄を殺すわけがない、殺すことになったのはマイキーのせいだ、マイキーのためにやろうとしたことで殺したんだから。だからマイキーを殺さないと。


なんで?となるんだけれど、これがもう強烈な違和感。一虎の過去を懇切丁寧に説明してもらっても、違和感になる気がする。

アクション!カッコイイ!だけで終わらない違和感が残るっていうのは、作品自体について考えることになるし、実はとても大切なことでは?

理不尽を考えさせられることによって、大事なものを見つけられる……のかもしれない。


……と、長々と書いてきたが、メインキャストたちのアクションがカッコイイのは間違いない。マイキーの無敵感、ドラケンの熱いハートがそのまま拳に籠っているようなフォーム、頼りになりすぎる三ツ谷の背中……とそのカッコイイシーンを挙げればキリがない。男同士のアツイ戦い、老若男女問わず、ぜひ迫力満点の劇場で観てほしい。

(文:ふくだりょうこ)

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©和久井健/講談社 ©2023 映画「東京リベンジャーズ 2 血のハロウィン編」製作委員会

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