「虎に翼」よね(土居志央梨)の毒舌健在「度肝を抜かれるほどの生ぬるさだな」<第108回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となるヒロイン・寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第108回を紐解いていく。
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寅子、育休制度獲得に動く
平等が損になる人もいる?優秀でも不良でもない中間にいる人が平等社会では取り残される?
なかなかいい着眼点が示されました。
勉強会に来た学生の、なぜ、女性は働かなくていいのに働くのか、という疑問を、小橋(名村辰)が肯定します。
小橋は、稲垣(松川尚瑠輝)に先に出世され、どうやらちょっとくすぶっているようです。女性ながら寅子(伊藤沙莉)は目に見えて出世頭です。男の自分の立つ瀬がない。
頑張らなくていいのに頑張る女たちに無性に腹が立つ、と小橋は声を大にします。
女性が平等を勝ち取っていくと、自分の立つ場所が失われる。女性は結婚し養われる可能性と自ら働く、ふたつの可能性を選べるけれど、男性は問答無用に働いて家を守ることを強いられている。その状況を小橋は嘆くのです。
小橋は頑張りたくないのです。平等といえば、確かに頑張らない人の自由もあるはずで、でも世の中は頑張る人が優先になっています。
そういうとき、弱そうと思われる者に怒りをぶつけると、平等な社会を拒む邪魔者になるのだと、小橋は学生に忠告します。
「一番になれなくてもさ、おまえのことをきちんと見てくれる人間は絶対いるからさ」と長い話を纏めた小橋に、寅子は「とてもいいお話だった」と称えました。
小橋が過去、寅子たちに攻撃的だったのは、弱者と思って叩いていたのでしょうか。それとも、寅子たちは強いと認めていたのでしょうか。弱者と思っていたら、意外と強かったということかもしれません。
勉強会はあっさり終了。
帰りに、秋山(渡邉美穂)が「子供を授かってしまいました」と寅子に相談します。勉強会の前に生あくびしていたのは、たぶん、体調の問題だったのでしょう。
5倍がんばって、いつもきれいな姿でなんてことないふりをしたおかげで、ようやく道が切り開けたのに諦めないといけないのかと泣く秋山。これに共感する働く女性はたくさんいるでしょう。
寅子は秋山はいま、過去、自分が味わった「地獄」にいると感じ、後輩の願いどおりにできるように動きます。
後輩は自分のような思いを味わわないように。
現在、出産の前後6週間しか産休がないところ、育児期間の時短や育休のための長期休暇を取得できるように、桂場(松山ケンイチ)に意見書を提出しました。
ところが、「時期尚早」と桂場はけんもほろろ。
これは、昔、寅子が妊娠したとき、穂高(小林薫)がまずは出産、育児に専念すべきと勧め、「雨だれ石を穿つ」だから、いまは制度が整わなくても耐えるように説いたことの繰り返しになります。
桂場だって、当時、穂高をこっそり寅子の知らないところで責めていたのに。そのとき「時期尚早」と桂場が穂高に言ったのは、最後まで寅子の味方であってあげてほしかった、育児を優先しろと言うのは「時期尚早」という意味だったようです。ややこしい。
寅子の味方だった桂場も、自分が上に立ったら「時期尚早」と保守的なことを言ってしまうのです。
「そのときとはいつですか」と問う寅子に、「あさイチ」では「いまでしょ」とやや古い流行語でツッコんで笑っていました。
回想シーンが出てくると、伊藤沙莉さんがじょじょに老けていてるのがわかります。昔は若くてはつらつとしていて、いまは大人の落ち着きがすこし加わりました。
寅子は諦めません。竹もとに女性の賛同者を集めます。
中山(安藤輪子)は結婚を祝う会にもいましたが、後輩の小泉(福室莉音)、山下(おぎのさな)、玉木(平体まひろ)、吉永(川久保晴)となつかしい顔ぶれが揃い、集まった署名を寅子に渡します。タイトルバックで踊る女性たちのような、麗しき女の連帯を待ってました!
感動シーンですが、よね(土居志央梨)が、秋山に「度肝を抜かれるほどの生ぬるさだな」と苦言を呈します。秋山とよねは司法研修所で同期で、よねが化粧をしないことを秋山は批判していたようですが、よねはお化粧しなくても肌がきれいなので大丈夫かと。
よねは「類は友を呼ぶってやつか」と寅子にも嫌味を。よねみたいな存在にちょっとホッともしました。そう、このドラマは、仕事を選んで子供を産まないという選択をする女性、あるいは子供がほしくないと考える女性についてはあまり言及されず、毎度、出産と仕事を両立させたいケースが主題になっています。それは令和の価値観として、出産が大事だからでしょう。
昭和、平成、令和と時代が変わり、少子化になったとき、その状況に歯止めをかけるため、仕事する女性も出産がしやすいような制度を整える必要性が来ることを、この時代(昭和30年代)の人たちは思いもよらなかったでしょう。先送りしていたら、大変なことになってしまったのです。
なお、ネットで調べると、女性公務員の一部(教員、看護婦、保母等)を対象とした育児休業法が成立したのは、1975年だそうです。
本日の小姑チェック
秋山の「授かってしまった」の「しまった」
航一(岡田将生)「僕の子供たちだなあと思ってしまって」の「しまって」
まっすぐ物事を言わない、ちょっと斜めに言う現代口語だなあと思ってしまいました。
(文:木俣冬)
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