映画コラム

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2017年10月07日

『パーフェクト・レボリューション』障害者同士の愛とSEX!清野菜名が風俗嬢を熱演!

『パーフェクト・レボリューション』障害者同士の愛とSEX!清野菜名が風俗嬢を熱演!



(C)2017「パーフェクト・レボリューション」製作委員会



障害者同士の恋愛を描いた話題の映画、『パーフェクト・レボリューション』。

9月30日から劇場公開された本作を、今回は初日のTOHOシネマズ新宿で鑑賞してきた。上映館数が少ないためか、場内は8割程度の入り。実際に車いすの方もお2人来場しており、女性一人での鑑賞が多かったのが印象的だった本作。どうしても興味本位の目で見られがちな内容だが、果たしてその出来はどんな物だったのか?

予告編


ストーリー


幼少期に脳性麻痺を患ったクマ(リリー・フランキー)は、手足を思うように動かせず車椅子生活をしている。ただし彼はセックスが大好き。身体障害者にとっての性への理解を訴えるために活動している。そんなある日、彼はピンクの髪の美少女・ミツ(清野菜名)と運命的に出会う。
障害者であるにもかかわらず溌剌と生きているクマに、ミツは「あなたとわたしみたいなのが幸せになれたら、それってすごいことだと思わない? 」「それを世界に証明するの!」。と、一方的に交際を迫るのだが・・・。


最強の二人が夢見た「完全な革命」!その結末とは?


自分達の様に不完全な者同士が結ばれて幸せになること、それこそが「完全な革命」だと一方的に力説するミツに圧倒されて、クマとミツの年の差カップルの関係はスタートする。

幼少時からの車いす生活のため、日常生活にも介助が必要なクマと、外見からは一見分からないが、実は境界性パーソナリティ障害を抱える風俗嬢のミツ。クマが書いた書籍の出版イベントで、運命的な出会いをした二人。最初はミツの強引なアプローチに押されて断りきれずにいたクマだったが、次第に彼女の存在が必要だと感じる様になって行く。

こう書くと最近流行の「泣ける難病物映画」か、「甘い恋愛映画」の様に思われそうだが、もちろん本作で描かれるのは、こうした甘い夢の様な部分だけでは無い。原作者の実体験にもとづく内容だけに、そこには障害者にとっての厳しい現実が様々な形で描かれている。

例えば、二人で食事に行った店で客から受ける容赦ない偏見と差別の言葉や、視聴者が抱く勝手なイメージを押しつけようとするテレビ局のスタッフ。更には、もっとも身近なはずの親族から結婚を反対されるなど、二人が直面する厳しい社会の現実は実にリアル!

特に印象的なのは映画のラスト、厳しい現実の壁に阻まれ、ついに二人の革命が挫折するかに思えたその時、果たして何が起こるのか?
正直、このラストに違和感を持つ観客もおられるとは思うが、自分達二人では実現出来なかった革命が、周囲の人々の協力を得て再び進行する、という展開には、本作が伝えようとする強いメッセージが込められている。

まずは少しでも興味を持ち、そこから理解を深めて障害への固定観念や偏見意識を変えて行くこと。革命の第一歩がそこにあることを、本作は我々に教えてくれるのだ。
もしも本作を見て、貴女が少しでも障害に対して考えたり思うところがあったなら、この映画の革命は成功したと言えるだろう。



(C)2017「パーフェクト・レボリューション」製作委員会



最後に


全編を通してやはり印象に残るのは、一見いい加減で弱そうだが、実に魅力的な主人公クマを演じる、リリー・フランキーの演技だ。

日常的な車いす生活のため、常に人から見下ろされ、また自身は人を下から見上げることに慣れてしまっている、その眼差しと表情が実に見事!障害者=聖人君主という世間の勝手なイメージに対して、自分は「ただの生きている人間だ」と、カッコつけず普通にふるまう姿は、逆に観客に対して障害という問題を雄弁に語りかけて来るのだ。

更に驚いたのは、このミツという難しい役柄に生命を吹き込んだ、清野菜名の成長振り!4月に公開された「暗黒少女」では残念ながら他の女優の強烈な個性に押され、今ひとつ印象に残らなかった彼女だが、その後はテレビのCMやドラマ「やすらぎの郷」に出演するなど活躍の場を増やすことに。

先日公開された「ユリゴコロ」の体当たり演技に続き、本作でも障害者同士のSEXシーンや、突然狂暴になって感情を爆発させるなど、難しい役柄に果敢に挑み、しかも見事に成功させているのはさすが!

厳しい現実と壮絶な愛の戦いを描きながら、本作の印象はあくまでもポップでどこかユーモラス。それはこうした主演二人の演技と存在感によるところが大きいと言えるだろう。

幸い観客からは、高評価をもって迎えられている本作。「完璧な革命」のための壮絶な戦いの末、二人が出したある結論とは何か?

難しいテーマを扱いながらも純粋なラブストーリーとして楽しめる本作、全力でオススメします!

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(文:滝口アキラ)

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