菅田将暉の狂気の魅力が開花した『ディストラクション・ベイビーズ』

(C)2016「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会

今一番注目を集めている若手俳優と訊かれたら、迷わず菅田将暉の名前を挙げます。

『仮面ライダーW』で歴代最年少ライダーを演じて注目され、その後『共喰い』『そこのみにて光り輝く』『溺れるナイフ』などの問題作から『帝一の國』『銀魂』のような漫画原作もの(『海月姫』では見事な女装も披露!)、そして現在NHK大河ドラマ『女城主直虎』に井伊直政役で出演。映画もまもなく『あゝ荒野』2部作が公開されます。
1993年2月21日生まれの24歳にして、既に映画賞受賞歴も多数。若手俳優として演技力も存在感も抜群で、また最近は音楽活動でも注目を集めています。

さて、今回はそんな菅田将暉出演作品の中から、2016年度公開の衝撃作『ディストラクション・ベイビーズ』をご紹介!

理由なき暴力に明け暮れる若者たち
その衝動と思いがけない顛末

『ディストラクション・ベイビーズ』は、インディーズ映画界でその名を馳せる眞理子哲也監督の商業映画デビュー作。彼がミュージック・ビデオの撮影で愛媛県松山市を訪れた際、バーのマスターから聞かされた実話を基に脚本を構築した青春と暴力の映画です。

舞台は愛媛県松山市。喧嘩に明け暮れる青年・泰良(“たいら”と読みます/柳楽優弥)は、ある日弟・将太(村上虹郎)の許から去り、繁華街で道行く人々に何の理由なく暴力を吹っ掛けていきます。

そんな彼に、地元の高校生・裕也(菅田将暉)が興味を抱きます。

共に行動をとるようになった泰良と裕也はその後も暴力を繰り返し、キャバクラ嬢の那奈(小松菜奈)を拘束。

まもなくして彼らのことはテレビやインターネットで話題になり始め、警察に追われるようになっていきます……。

この後、ストーリーは二転三転し、衝撃的な結末を迎えますが、そのあたりは見てのお楽しみとして、ここで描かれているのは若者たちの行き場のない焦燥からもたらされる意味のない暴力の衝動そのものです。

何せ何の恨みもない人をいきなり殴りつけ、しつこく追いかけ続ける主人公らの行動は常軌を逸しており、見る人によっては正視できないものもあるかもしれません。

しかし、臭いものにふたをするかのように、暴力を見て見ぬ振りするのではなく、暴力もまた困ったことに人間の行いの一つであることを認識しておかないといけないのではないか。

この世の中は綺麗事だけではなく、時には人間誰しも備え持つ深い心の闇みたいなものと対峙すべきではないか?

その意味では本作は、ある種の覚悟をもって、暴力とは何であるのか、見る側の心の痛みまで伴わせながら展開していく意欲作であります。

なおタイトルは、本作の音楽を担当した向井秀徳のバンド“ナンバーガール”の《DESTRUCTION BABY》から採られています。

「デストラクション」とは「気晴らし」や「動揺」「破壊」といった意味があります。そこに「ベイビー」が付け加えられることで、深い思慮のないままモノを壊し続ける無邪気な赤ちゃんと、暴力を繰り返す主人公らの行動をシニカルに暗喩しているのです。

(C)2016「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会

菅田将暉を含む若手俳優陣の
魅力が炸裂!

本作はおよそ地上波では放送できないであろう暴力性に満ち溢れた作品ですが、それゆえに若者たちのある種の闇の真実を突いた作品として屹立しており、、またそれを柳楽優弥や菅田将暉、村上虹郎、小松菜奈といった人気若手俳優らが喜々として演じていることも大いに注目すべきでしょう。

『仁義なき戦い』の名匠・深作欣二監督は生前、「若い役者はヴァイオレンスも含めたアクションを積極的にやり、自分の肉体をもって表現する術を見につけていくべきだ」と発言していますが、規制の厳しい今のテレビなどでなかなかそういった企画は通りづらいものがあり、しかし若手俳優たちはもっとワイルドに炸裂させたいという欲求が沸き起こっているとも想像できます。

本作は暴力の連鎖による人間の負を描いたものではありますが、それもまた人間のサガであり、むしろ映画はそういった負を魅惑的に描くことに長けたメディアでもあるとも思われます。

その伝に倣うと、本作のキャストの熱演も大いに納得できるところで、現に彼らは全てその年の映画賞を多数受賞しています。菅田将暉も例外ではなく、見る人によっては一番インパクトを与えるキレキレのキャラクターであるともいえるでしょう。

本作を含めて、菅田将暉出演作品群をまとめて観賞してみると、さぞ面白いことでしょう。

だって、どれ一つとして同じような役柄はありませんから。

特殊メイクなど全然してないし、顔そのものはみんな同じなのに、すべて別人に見えてしまうという、ある意味驚異のカメレオン俳優・菅田将暉。

そんな彼の魅力を発散させている1本として、ぜひとも一見をお勧めしたいと思います。

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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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