オスカー受賞兄弟の弟ケイシー・アフレック主演!70年代映画のオマージュ『セインツー約束の果てー』

(C)2013 ATBS Production LLC

現在公開中の『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でアカデミー賞主演男優賞をはじめ数々の賞を獲得したケイシー・アフレック。そして『セインツー約束の果てー』は、彼が2013年に主演したピカレスク・ロマン映画です。

アメリカン・ニューシネマを彷彿させる
カップル強盗のその後の顛末

まずは作品について紹介しますと、舞台は1970年代のテキサス。そこでボブとルースのカップルが強盗を繰り返しながら生きてきましたが、ルースの妊娠を機に、足を洗うことを決意。しかし、最後の仕事と決めた銀行強盗に失敗し、激しい銃撃戦の果てにふたりは投降。保安官パトリックの肩を撃ったルースを庇い、ボブだけが収監されます。

数年後、娘を産んだルースの許にパトリックがやってきて、ボブの脱獄を告げます。かつて自分を撃ったのがルースであることを知らぬまま、パトリックは彼女をひそかに愛するようになっていました。

一方、ボブは仲間を裏切って隠していた大金を手に、ルースの許へ向かいますが、それを知った組織のボス、スケリットは部下にボブの抹殺を命じます……。

それぞれの思惑が錯綜しながら、やがて……といったストーリー展開からは、どことなく1960年代後半から70年代前半に世界を席巻したアメリカン・ニューシネマを彷彿させるものがあります。端的に言えば、『俺たちに明日はない』(67)や『明日に処刑を…』(72)のカップル強盗を70年代に置き換えて、もし彼らが生きていたら?とでもいったテイストなのです(特にマーティン・スコセッシ監督が撮った後者の影響が濃いようにも、個人的には感じています)。

また、本作は名匠テレンス・マリック監督のデビュー作『地獄の逃避行』(73)に倣うかのような神秘的な映像美あふれるもので、ここにも70年代映画へのオマージュがたっぷり感じられます。

ユニークなのは、これまたロバート・アルトマン監督の傑作音楽群像映画『ナッシュビル』(75)などの個性派スター、キース・キャラダイン(『明日に処刑を…』主演のデヴィッド・キャラダインの弟。ちなみに『ナッシュビル』で自作曲《I am Easy》を披露し、アカデミー賞歌曲賞を受賞しています)がスケリット役で出演していることで、ここにも70年代映画へのオマージュが巧みに感じられるところです。

監督は学生時代からインディペンデント映画を撮り続けてきたデヴィッド・ロウリーで、本作は初の日本上陸作品。ノスタルジックな雰囲気の中にもクリミナルな悲劇を描出していく手腕を目の当たりにして、かなりニューシネマの洗礼を受けている才人と思いましたが、本作の次に監督したのは何とファンタジー『ピートとドラゴン』(77)のリメイク『ピートと秘密の友達』(16)と、実はなかなか多彩なセンスの持ち主でもあったようです。

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アフレック兄弟の
秀逸なる映画的才覚

ところで、本作でカップル強盗に扮したケイシー・アフレックとルーニー・マーラは、奇しくもともに俳優兄弟&姉妹の弟&妹にあたります。ケイシーの兄はベン・アフレック、ルーニーの姉はケイト・マーラ。

ここで特にアフレック兄弟に注目しますと、兄ベンは『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)でアカデミー賞脚本賞を、そして監督作品『アルゴ』(12)ではアカデミー賞作品・脚色・編集賞を受賞、そして今年5月20日には最新主演&監督作品『夜に生きる』が公開と、ハリウッドを代表する映画人として屹立して久しいものがあります。

一方、弟のケイシーも俳優のみならず製作・脚本業にも進出し、2010年の『容疑者、ホアキン・フェニックス』では監督・脚本・製作・撮影を務めています(これは俳優ホアキン・フェニックスが突然ヒップホップ・アーティストに転向するも、それがフェイクであったことを公表するまでの2年間の彼の奇行などを描いた異色のフェイク・ドキュメンタリー=モキュメンタリー映画でした)。

またケイシー・アフレックは2007年の『ジェシー・ジェームズの暗殺』で西部のならず者兄弟グループのひとりロバート・フォードを演じ、アカデミー賞助演男優賞候補になっています(ちなみに、彼らの生きざまはかつてウォルター・ヒル監督が1980年に放った傑作西部劇『ロング・ライダーズ』でも描かれていました。このときデヴィッド&キース&ロバート・キャラダインの俳優兄弟の真ん中たるキースがジム・ヤンガーを演じていたことでも、何やら後々の縁を感じます。なお、ロバート・フォード役はニコラス・ゲストでした)。

あの兄にして、この弟あり。兄弟で活躍する俳優は古今東西多数いますが、兄弟ともにアカデミー賞を受賞という実績だけ取っても、天性の映画兄弟であるともいえるでしょうし、そんなケイシー・アフレックだからこそ、本作のようなアメリカン・ニューシネマにオマージュを捧げたかのような70年代テイストの作品に俄然やる気を示したと用意に想像できるのでした。

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』や『200本のたばこ』(99)など、実は共演も多いアフレック兄弟。いずれはまた何か面白いことをやらかしてくれることでしょう。そんなことを思いながら本作を見ると、また味わいもひとしおかもしれません。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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