SNS時代の心の闇|『白ゆき姫殺人事件』から考える

(C)2019 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

4月12日より『名探偵コナン紺青の拳(フィスト)』が公開されます。今や国民的人気の大ヒット・アニメ映画シリズの最新作ですが、そもそも日本人は老若男女ともミステリ・ジャンルがお好きなようですね。

もっとも劇場版コナンは007ばりのアクション・スペクタクル的要素がどんどん強まってはいますけど(ちなみに今回は割とミステリ的要素も多めにあります)、ミステリというジャンルを通して別のことを訴えようとする作品が多いのもまた確か。

今回ご紹介する『白ゆき姫殺人事件』もまた、ミステリの形を借りてSNS社会ゆえに頭をもたげてきた人間の心の闇を描いた作品です。

(C)2014「白ゆき姫殺人事件」製作委員会 (C)湊かなえ/集英社

殺人事件の関連人物を
SNSが勝手に容疑者と特定!

長野県のしぐれ谷国定公園の中で、化粧品会社のOL三木典子(菜々緒)の焼死体が発見されました。

TVワイドショーの契約ディレクター赤星(綾野剛)は、事件の情報をツィートし始めて話題を起こし、やがて“白ゆき姫殺人事件”とネット上で呼ばれるようになっていきます。

赤星は事件の日から失踪している典子の会社の同僚・城野美姫(井上真央)の存在に注目して取材を開始すると、すぐさま美姫の恋人を典子が奪っていたことが発覚。

それらの事実をツイートし続けていくと、次第に周囲も面白がり、美姫の実名や学歴などがネットにアップされ、彼女が犯人であるかのような論調が巻き起こっていきます。

こうした騒ぎを見かねた美姫の友人が番組に抗議し、ツイッターの更新は止まりますが、時すでに遅しで炎上は収まりそうにありません。

一方その頃、美姫はビジネスホテルに身を隠し、自分に対する世間の心無い糾弾をやり過ごしながら、自身の手記をしたためていくのでした……。

『告白』などで知られる湊かなえのベストセラー小説を原作とする本作は、ストーリーの概略から察しがつくように、殺人事件の謎解きもさながら、事件を面白おかしく報道するマスコミや、それに同調し、火に油を注ぐ化のように騒ぎまくるSNS民の心無い行為などを通して、現代社会の人心の闇を追求していきます。

最近もTVドラマ『3年A組』がネット社会に対する痛切な批判が話題を集めましたが、本作はそれに先駆けて、自分の思ったことをすぐさま公にできる今の社会に警鐘を送っています。

おそらくは誰がも一度や二度は軽い気持ちでSNSに書き込んだ内容に対し、あとになって反省して削除したりしたことがあるのではないでしょうか。
(私も正直、酔っぱらったときはなるべくスマホに手を出さないように心がけています……)

被害者にも加害者にも
第三者にもある心の闇

さらに本作は、容疑者と疑われたヒロイン美姫の心の闇も描出していきます。

『赤毛のアン』の世界に浸り、アンのように空想に浸って辛いイジメの現実から逃れていた少女時代、彼女に一体何が起きたのか?

子どもの頃のトラウマがもたらす後々への哀しき影響や、それをどう克服していけばいいのか、そもそも克服できるものなのか、映画は見る人の判断に委ねていきます。

本作が単なるミステリや社会批判のみならず人間ドラマとしても秀逸に仕上がっているのは、被害者も加害者も、そして他人の揉め事にやたら介入したがる第三者もすべて心に闇を抱えて生きていることを描いているからではないでしょうか。

本作の監督は『チームバチスタの栄光』(08)『ゴールデンスランバー』(10)など人気サスペンス小説の映画化のみならず『ジャージの二人』(08)『奇跡のリンゴ』(13)のようなヒューマン映画、『残穢―住んではいけない部屋―』(16)などのホラー映画、そして最近は『殿、利息でござる!』(16)『忍びの国』(17)といった時代劇まで果敢に手掛ける中村義洋(ちなみに新作時代劇『決算!忠臣蔵』が今年公開予定)。

あらゆるジャンルに精通する彼だからこそ、オールマイティに人の心の表も裏も敏感ニキャッチし、映像に定着させることが出来るのかもしれません。

いずれにしましても、これをご覧になった後は、SNSに書き込んだ後、送信前に思わず一呼吸置いて刈るはず異なことを書いてないか確認するようになること必定でしょう。

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(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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