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2019-04-13

コラム

『魂のゆくえ』は牧師版『タクシー・ドライバー』ともいうべき必見作!

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(C)Ferrocyanide, Inc. 2017. All Rights Reserved.



1970年代から80年代にかけて映画に目覚めたファンの方なら、ポール・シュレイダーという名前を聞くだけでビクンと反応してくれることでしょう。

『タクシー・ドライバー』(76)や『ローリング・サンダー』など70年代アメリカ映画を代表するヴァイオレンス映画の脚本や、80年代には三島由紀夫の生涯をモチーフにした『MISHIMA』(85/惜しくも日本では未公開)を監督するなどの才人で、最近も『ザ・ハリウッド』(13)『ドッグ・イート・ドッグ』(16)で大いに健在ぶりを誇示しています。

そのポール・シュレイダーが、ここにきてまたも衝撃の作品を世に送り出しました。

それは現代社会の闇を暴きつつ人間の傷ついた心の葛藤を描く……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街372》

『魂のゆくえ』、世界各国の映画祭で70以上の映画賞を受賞している秀作です。

理想と現実の狭間に苦悩する
牧師がとる行動とは?


『魂のゆくえ』の主人公はニューヨーク洲北部の小さな教会“ファースト・リフォームド”に所属する牧師トラー(イーサン・ホーク)です。

ある日彼は信徒で妊娠中のメアリー(アマンダ・セイフライド)から相談を受けます。

どうやら彼女の夫で環境活動家のマイケルが自然環境問題に過敏になりすぎて、彼女の出産に反対するようになっているとのこと。

トラーは説得を試みますが、マイケルは言います。

「2050年、僕らの子どもが33歳になったとき、地球はどうなっていると思う? そして『パパは全部知ってたんでしょ?』と聞かれたとき、僕はどう答えたらいい?」

まもなくしてトラーはメアリーから、マイケルが自爆テロ用ベストを隠し持っていることを知らされます……。

一方トラーは、かつて最愛の息子をイラク派兵で亡くし、妻と別れて自暴自棄になっていた自分を救ってくれたアバンダント・ライフ教会が、環境汚染の原因トップ4位に上げられている企業から多額の献金を受け取っている事実に気づかされるのですが……。



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主人公の“魂のゆくえ”に
こちらの魂も震える!


本作は現代社会が抱えるさまざまな問題の中で心傷つきながらも生き続ける人々がすがる信仰と、実はそれすらも資本主義の論理で動かされている矛盾の中でさらにもがき苦しみ、ある行動に出る主人公の姿を通して、生と死、そして人生の機微を問いかけるヒューマンドラマです。

そこにはかつてポール・シュレイダーが脚本を書いた『タクシー・ドライバー』でヴェトナム戦争から帰還してきた孤独な主人公さながら、現代社会の波についていけずに苦悩する人々に慈愛の目線が寄せられています。

ストーリーそのものはシュレイダー監督が50年も温めてきたもので、実際に書き始め手半分くらい経ったところでイーサン・ホークが主人公のイメージとダブり、彼を想定しながら脱稿したとのこと。

イーサン・ホークもまた脚本を読んで大いに共感し、「この役を準備するために、これまでの人生があったように感じる」とまで言わしめるほど秀逸な仕上がりでした。

一方、映画監督としてのポール・シュレイダーは本作でタッチも映像の色合いなども抑えに抑え、あたかも神と対話しているかのような静謐な趣で演出を施しています。

孤独な戦いを強いられていくイーサン・ホークの名演は言わずもがなですが、やがて彼に深く関わっていくメアリー役のアマンダ・セイフライドもさりげなく存在感を発揮しています(というか、最近、彼女の出演する映画に外れはないといっても過言ではないですね)。

かつてのシュレイダー作品のようなスキャンダラスな要素は影を潜めていますが、その潜めた奥から垣間見える人間の業を鋭く見据えた今年屈指の必見作として強く推させていただきます。

ポール・シュレイダーと聞いてもあまりピンとこない若い世代の映画ファンには一見地味に捉えられがちかもしれませんが、ここはひとつ騙されたと思ってでもご覧になっていただきたい、主人公の“魂のゆくえ”にこちらの魂までも震えること必至ですので。

(文:増當竜也)

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