ショック!衝撃!トラウマな映画5選!

(C)2018「来る」製作委員会 

12月7日より劇場公開となる中島哲也監督作品『来る』は、岡田准一をはじめとする豪華キャスト、単にホラーと呼ぶにはあまりにもエンタテインメント、そして何よりもさまざまな映像的仕掛けを張り巡らせながら人間の業を鋭く見据えた衝撃作です。

衝撃といえば、日頃は大船調で庶民の悲喜こもごもを謳いあげるのを得意とする松竹にも、実は多くの観客にトラウマをもたらすかのような衝撃作は存在します。

破傷風に侵された娘を看病する
両親が陥る地獄絵図の『震える舌』

(C)1980 松竹株式会社  

『震える舌』は三木卓の同名小説を原作とする作品で、要は破傷風に侵された愛娘を必死に看病する両親(渡瀬恒彦&十朱幸代)のお話です。

こう書くとヒューマン感動映画かと思われがちですが、実は病魔にとり憑かれた娘に翻弄されていく両親が、次第に身も心もボロボロになっていくさまを冷徹に見据えたトラウマ映画なのでした。

病気に苦しむ幼女のうめき声は、まるで『エクソシスト』さながら悪魔にとり憑かれたかのようで、また彼女を看病しながら披露困憊していく両親は、いつしか自分も破傷風に侵されているのではないかと妄想するようになっていきます。

この作品、公開時はまるでホラー映画のような宣伝がなされ、それが仇となって興行的には苦戦しましたが、その後名画座上映などでマニアの間で話題となり、徐々にその存在が復活していったものですが、そこで描かれている過酷な世界がにわかに信じがたいとでもいった嘲笑にも似た目線がかつては注がれていたようにも思われます。

しかし、たとえば親の介護に疲れた子どもによる無理心中事件や、病人に神経をすり減らせた介護職員による殺人事件などが普通に報道されるようになって久しい現代社会において、本作の中で描かれている恐怖は実は誇張でも何でもなく、いつ誰にでもふりかかる可能性があることを多くの人々が理解できるようになっている中、最近では実にリアルな人間ドラマとしての評価がなされるようにもなってきているのです。
(実際、原作小説は我が子が破傷風に侵されたときの原作者の体験を基に記されたものだったのです)

本作の主演・渡瀬恒彦はこの年のキネマ旬報主演男優賞などを、十朱幸代はブルーリボン主演女優賞を受賞。

破傷風に侵された愛娘を演じた子役の若命(わかもり)真裕子の熱演も語り草です。

また彼女の治療にあたる主治医役の中野良子の真摯で凛とした佇まいも、狂乱の域に陥っていく両親との対比になり、映画をより奥深いものとしています。

監督は松竹映画の名匠・野村芳太郎。

通常『砂の器』を筆頭とする松本清張原作のミステリ映画路線で語られることの多い野村監督ですが、実は彼、太平洋戦争に従軍しており、そこで体験したさまざまな地獄絵図が帰還後の己の演出タッチや人間描写に大きく影響を及ぼしているところもあるようなのです。

またそれゆえに描写としてもえぐい残酷なトラウマ的衝撃映画もいくつか発表しています。
(さらに申すと、日本カルト映画の最高峰『幻の湖』のプロデューサーも彼です)

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野村芳太郎監督による
トラウマ衝撃映画をあと5選!

では、ここからは野村芳太郎監督ならではのトラウマ的衝撃映画をいくつかご紹介していきましょう。

『五辨の椿』(64)

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山本周五郎の同名時代小説の映画化。亡き父の復讐に燃える女の情念と、その果ての悲劇を描いた作品。

日頃は文芸映画として語られることが多い本作ですが、いざ接してみると復讐と女のサガを絡み合わせながら、いつしか“罪と罰”とでもいった人間の根源を突いたテーマに肉薄したものとして屹立しています。

また人気時代劇『必殺』シリーズの原点は、実はこの作品なのではないかと思わせるような描写もあります。

主演・岩下志麻の清純と妖艶を併せ持つ魅力も忘れられないものがありました。

『影の車』(70)

影の車

既婚者の男(加藤剛)とシングルマザーの女(岩下志麻)。幼馴染の二人は再会し、いつしか関係を持つようになっていきますが、いつしか男は女の連れ子に殺されるのではないかという妄想を抱くようになっていきます……。

ここでは主人公の回想シーンに“多層分解”なる膨大な時間と予算を費やした実験映像が用いられており、これによって彼のトラウマや妄想、殺意など繊細かつおぞましき心理表現が見事に具現化されています。

また何よりも、主人公を見つめる子どもの残虐な眼差し!

これに芥川也寸志の対位法的な優しい音楽が盛り込まれることで、さらなる人間の業といったものが露になる効果をもたらしています。

『八つ墓村』(77)

八つ墓村

横溝正史の同名小説の映画化。祟りの概念を利用した連続猟奇殺人事件を描いたミステリ大作……と思いきや、何とこの世に祟りは実在するのではないか? と観る者に思わせる驚愕のホラー映画仕立て。
(実際、公開時は原作ファンの間で賛否両論が激しく飛び交ったものです)

しかも、その祟りの基となる戦国時代の8人の落武者惨殺や、昭和初期の32人殺しなどの諸描写は、その後のスプラッタ映画ブームに先駆けた壮絶なもので、公開当時は劇場内で悲鳴が上がったほどでした。

製作に3年、撮影に1年の月日をかけて紡がれた日本の美しくもどこか閉塞的な風土と、その中で生きる日本人特有の業を見事に描出させた超大作。

設定を現代に変えつつ、今なお因習に囚われたような風土世界に支配された八つ墓村と、そこから逃げ出したくして仕方がないとでもいった現代青年をリアルに体現する主演・萩原健一の佇まいの妙。

名探偵・金田一耕助には渥美清が扮し、『男はつらいよ』の寅さんとは異なる味わい深い名演を示してくれていますが、彼が事件の調査で地方を飛び交う際の映像は、まるであの世のものがこの世のものを見据えているかのような、どこかしらぞっとするものまで感じさせます。

『鬼畜』(78)

鬼畜

野村トラウマ映画の最高峰にこれを挙げる映画ファンは、さぞ多いことでしょう。

原作は松本清張の同名小説。愛人(小川真由美)との間に設けた3人の子供をいきなり引き取ることになった町工場の主(緒形拳)。しかし彼の妻(岩下志麻)は子どもたちにつらく当たり続け、ついには……。

とにもかくにも壮絶なのは岩下志麻による幼児虐待シーンの数々で、本人も演じるのがもっともつらかった映画であると後に述懐していますが、撮影中は子役の赤ん坊が彼女の顔を見ただけで泣き出すほどのオーラを漂わせていたそうです。
(ちなみに数十年の時を経て、TVのバラエテイ番組で岩下志麻と成長した子役たちとの感動の再会が設けられました)

緒形拳もこの役をオファーされたときはかなり躊躇したとのことですが、シナリオを読んだ友人の俳優・三谷昇が「絶対にやるべきだ」と強く勧め、結果として平凡で気弱な男がいつしか鬼畜と化していくさまを見事に演じ切り、その年のキネマ旬報主演男優賞をはじめ数々の映画賞を受賞することになりました。

『真夜中の招待状』(81)

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遠藤周作の『闇の呼ぶ声』を原作とするミステリ映画。

フィアンセ(小林薫)の兄たちが次々と失踪し、彼がノイローゼに陥っていく中、ヒロイン(小林麻美)は神経科医(高橋悦史)に相談しながら対処していきますが、やがてついに彼も失踪し……。

本作は小林麻美・主演のファッショナブルなロマンティック・ミステリとして宣伝されましたが、いざ公開されると、その実『八つ墓村』さながらの日本の風土や因習に根差した猟奇色の強い作品で(このあたりを深く記すとネタバレになってしまうので、実際にその目でお確かめください)、しかしながら小林麻美のファッショナブルなオーラ(何よりも彼女の美しさ!)とのギャップが異様な風格を作品にもたらすことになっています

また劇中では夢による人間の予知能力の存在や、人は疲れたときに手を組むと右の親指が上に来る、などといった要素を盛り込みながら、現在に至る心理テスト・ブームの先駆け的映画にも成り得ています。

実は野村芳太郎監督は、こういった作品以外にも抒情派ミステリやコント55号主演のコメディ映画なども得意とする多彩な職人監督としての一面もあり、また大島渚など松竹ヌーベルバーグの旗手たちの理解者であったことなども踏まえますと、なかなか一口では語りにくい名匠ともいえるでしょう。

ただし庶民の日常を描き続けた松竹大船調のラインにのっとりつつ、そこに人間の感情4大要素「喜怒哀楽」に加えて「業」の要素まで盛り込んでいった作風はもっと語られていいかもしれませんね。

(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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