ウォーターゲート事件を描いた5つの映画+1

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4月5日から『バイス』が全国で劇場公開されますが、アメリカ史上最も最恐最凶と謳われたチェイニー副大統領の人生をブラックユーモアたっぷりに描いたこの作品、社会派エンタテインメントに長けたアメリカ映画ならではの作品ともいえるでしょう。

そこで今回は大統領スキャンダルの最高峰ともいえるウォーターゲート事件を題材にしたポリティカルサスペンス映画『ザ・シークレットマン』をはじめ、同事件を題材にした映画を集めてみました。

告発者ディープスロートの正体を描く
『ザ・シークレットマン』(17)

まずウォーターゲート事件とは何ぞや? というところから始めたいと思います。

大統領選挙戦まっさかりの1972年6月17日、ワシントンD.C.の民主党本部に5人の男たちが盗聴器を仕掛けようとして潜入し、警備員に発見されて逮捕されました。

まもなくして犯人グループが共和党のリチャード・ニクソン大統領再選委員会の関係者であることが発覚。

ニクソン陣営とホワイトハウスは、侵入事件と無関係であることを公言しましたが、やがてワシントンポストの取材などから、政権内部が事件に深く関わっていることが露見します。

さらにはホワイトハウスが事件発覚時に捜査妨害や証拠のもみ消しを図っていたことや、大統領執務室での会話を録音したテープの提出を拒絶し、事件捜査の特別検察官が解任されたりしたことなどから、世論はニクソン政権を激しく非難。

かくして1974年8月9日、ニクソンはアメリカ合衆国史上初めて大統領任期途中で辞任に追い込まれ、事件は就職しました。

そして映画『ザ・シークレットマン』は、ウォーターゲート事件の全容を白日にさらした謎の告発者“ディープスロート”こと当時のFBI副長官マーク・フェルトを主人公に、彼がいかにして極秘情報をマスコミへリークするに至ったかを描いた作品です。

(C)2017 Felt Film Holdings, LLC 

マーク・フェルトは“FBI捜査官の鑑”とまで賞賛されていた人物で、当時盗聴器事件の指揮を司っていましたが、やがてさまざまな圧力がかかってくるのを目の当たりにして、国家権力の手で真実が闇に葬られる前に事件の全容を明らかにすべく、“ディープスロート”と名乗ってマスコミに接近するのでした。
(ちなみに“ディープスロート”とは当時世界的に流行していたポルノ映画のタイトルでもあります)

“ディープスロート”の正体は長らく謎に包まれていましたが、2005年にフェルト自身が正体を明らかにしました。

マーク・フェルトを演じるのは名優リーアム・ニーソン。

そして監督は『バークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』『コンカッション』など実話の映画化に際を発するピーター・ランデズマン。
ランデスマン監督は“ディープスロート”の正体が明らかになったときにシカゴでジャーナリストとして活動しており、道徳的危機に際したフェルトのとった高潔な信念とそ行動に共鳴しつつ、現代社会に通じるテーマを内包した作品として、映画化に動き出しました。

そして今、トランプ政権によるロシア疑惑やFBI長官解任など、まさに歴史が繰り返されていることを予見した作品にも成り得ているのです。

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まだまだいっぱいある!
ウォーターゲート事件の映画化作品

では、ここからウォーターゲート事件を描いた過去の作品を見ていきましょう。

●『大統領の陰謀』(76)

大統領の陰謀 (字幕版)
ウォーターゲート事件を取材し続けたワシントンポストのふたりのジャーナリストの手記を基にしたアラン・J・パクラ監督作品。

ロバート・レッドフォーととダスティン・ホフマンという二大ハリウッド・スターの共演も話題となり、アカデミー賞4部門を受賞していますが、それよりも何よりも事件収束から2年後にこういった作品が作られることにハリウッド映画人の反骨精神をうかがうことできます。

事件の不穏な動きを見事に奏でるデヴィッド・シャイアの音楽も秀逸です。

やはり現在公開中で、アメリカの不正を暴こうとした『記者たち』にも、このふたりに憧れて記者になったというエピソードがさりげなく挿入されており、本作の影響力の強さがうかがいしれます。

●『ニクソン』(95)

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ウォーターゲート事件の当事者そのものでもあるリチャード・ニクソンの生涯を描いた伝記映画。

『JFK』でケネディ大統領暗殺事件を描いたオリヴァー・ストーン監督が続けて撮ったポリティカルサスペンス映画としても屹立しており、彼ならではのドラッグ感覚的映像センスがニクソン自身のトラウマや事件で精神的に追い込まれていく状況などが見事に描かれています。

ニクソンには、何にでも化けてしまえるカメレオン名優アンソニー・ホプキンスが扮しています。

●『キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!』(99)

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こちらは何とウォーターゲート事件の告発者“ディープスロート”がふたりの女子高生であったという意外な事実(?)を描いたポリティカル青春コメディ。

社会科見学でホワイトハウスを訪れたベッツィ(キルスティン・ダンスト)とアーリーン(ミシェル・ウィリアムス)は、偶然ニクソン大統領(ダン・ヘダヤ)と知り合って気に入られ、彼の飼い犬の散歩係を努めることになったことから、やがてウォーターゲート事件の真相を知る羽目になり……。

ディープスロートの正体が明らかにされた今となっては完全にフィクションとして楽しむべき作品ですが、こうした政治ネタと青春映画をミックスさせる発想は日本映画界にはほぼないと思われるだけに、その精神たるや見上げたもの。

また『大統領の陰謀』では主人公だったふたりのジャーナリストが、ここでは妙にコケにされているのが何ともおかしく、その点での真相は意外とこちらのほうが的を射ているのかも?

●『フロスト×ニクソン』(08)

フロスト×ニクソン (字幕版)

ウォーターーゲート事件収束後の1977年、全米進出を画策するイギリスの司会者デイヴィッド・フロスト(マイケル・シーン)と、政界を追われたニクソン(フランク・ランジェラ)のインタビュー番組を再現しつつ、そこに至るまでのフロストの野心や、両陣営の確執と駆け引きのあらましなども余すところなくとらえた舞台劇の映画化。

舞台で主演した二大名優がそのまま映画でも同役を演じ、緊迫したトークバトルを展開。

監督はどんなジャンルの作品でもハイレベルに仕上がげる才人ロン・ハワードが手掛けており、アカデミー賞では作品賞や主演男優賞(フランク・ランジェラ)など5部門にノミネートされました。

●『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』(17)

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 (字幕版)

こちらはヴェトナム戦争を分析記録した米国防省の最高機密文書“ペンタゴンペーパーズ”の存在を暴露したワシントンポストの発行人(メリル・ストリープ)と編集主幹(トム・ハンクス)の勇気ある行動をスティーヴン・スピルバーグ監督が描いた社会派サスペンス映画ですが、そのラストがウオーターゲート事件の始まり=5人の男たちが盗聴を仕掛けようとする描写で終わっています。

この作品も『ザ・シークレットマン』同様、トランプ政権が当時と似た状況下にあることを危惧するハリウッド映画人の意見具申として、大いに受け止めておくべきでしょう。

なお、日本国内でソフト化はされてませんが、ウォーターゲート事件をモチーフにしたTVミニシリーズ『権力と陰謀 大統領の密室』(77)も作られています。こちらも何かの機会に見直してみたいものです。

(文:増當竜也)

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ライタープロフィール

増當竜也

増當竜也

増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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