第30回東京国際映画祭がクローズ!審査委員長トミー・リー・ジョーンズほか審査員、受賞者コメント到着

10月25日(水)から11月3日(金)に開催された第30回東京国際映画祭。その最終日のクロージングセレモニー後に行割れた「コンペティション国際審査委員&受賞者記者会見」のレポートが到着した。




このニュースのポイント


・11月3日(金)に第30回東京国際映画祭「コンペティション国際審査委員&受賞者記者会見」が開催
・審査委員長トミー・リー・ジョーンズや永瀬正敏ほか、5人の審査員が登壇
・各賞の受賞コメント・Q&Aの内容をレポート

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コンペティション国際審査委員総評




トミー・リー・ジョーンズ審査委員長


「まるで一本の映画を撮り終えた後の打ち上げに参加している気分です。この映画祭期間中、映画作りと同様でみんなで一緒に仕事をして、それが終わった今は、友達も作れてとても良い経験となりました。またどこかの映画祭でばったりお目にかかれると思いますが、今はただただ嬉しいです」

レザ・ミルキャリミ


「トミー・リー・ジョーンズさんと同じ気持ちで、良き友達を見つけられてとても嬉しいです。これからも素晴らしい作品を観られる事を期待しています。映画祭に出るチャンスのある映画は全て受賞する可能性のある立場だと思います。皆素晴らしい映画で審査する事はとても難しく、審査委員それぞれの好みや意見がある中、意見を合わせるのは困難なことが多いです。いつも100パーセント合意する事は難しいが、今回はそれが出来たと思っています」

マルタン・プロヴォ


「本当に貴重でインパクトの強い経験となりました。他の映画祭にはない東京国際映画祭だからこその、素晴らしい審査委員をさせてもらいとても感謝しています。それぞれが現在の世界の状況を描写して、色んな不安が描かれていましたが、これから取り組むべきこともたくさんあるなと感じました。映画監督がそれを描写して問題提起をして人々の意識を高め、これから世の中が光と愛に溢れる方向に向いていければすごく嬉しいです」

ヴィッキー・チャオ(趙薇)


「この東京国際映画祭は非常に開かれた映画祭だと思います。どの作品にも我々審査委員に対してもとても良くしてくれて、良い作品を観ることができて嬉しく思います。5つの国の国際審査委員団で映画を観て、議論して、インスパイアし合うことが出来ました。このような機会を与えてくれた東京国際映画祭に感謝しています」

永瀬正敏


「25日のオープニングの日に審査委員長から、『1作観るごとに必ずミーティングをしよう』という提案がありましたが、それが本当に素晴らしい提案でした。他の映画祭の審査委員に聞くと、そんなことはまずないとのことです。映画を観てすぐに話し合うことで共通認識を持てて様々なアイデアを引き出すことが出来たことに感謝しています。この出逢いを生涯大事にしたいですし、他の審査委員の皆さんは監督で、僕は役者なので今後役者として起用してもらえるように頑張っていきたいです」

Q:トミー・リー・ジョーンズ審査委員長はなぜ1作品観るたびにミーティングすることにしたのでしょうか?



トミー・リー・ジョーンズ「上映直後に意見交換することで、作品の第一印象を新鮮な気持ちで覚えているからです。考えは表現するうちに成長するので、他の人の意見を聞く事で発展したり、変化することもあります。今回はそれが非常に有効的に働いたと思います」

Q:審査結果以外で、お気に入りだった作品は?

永瀬正敏「それは私たち5人の秘密なのですが、他にももっとたくさんの賞があれば全ての作品が賞を獲っていると思います。それほどまでにどの作品も素晴らしかったです」

Q:トミー・リー・ジョーンズの審査委員長としてのリーダーぶりはいかがでしたか?

ヴィッキー・チャオ(趙薇)「ジョーンズ氏は素晴らしいリーダーでした。独自の意見はもちろん持ちつつ、我々の意見も尊重してくださいました。ずっと言いたかったけれど、実は私はトミーさんのファンで、これまでご本人に言えなかったので、この場で言わせていただきます」

Q:審議はパッションをぶつけあう熱いものでしたか? それとも穏やかに進んだのでしょうか?

レザ・ミルキャリミ「とても穏やかな雰囲気でした。特にトミーと僕との関係は親子のような関係になり、トミーは父のように私に接してくれ、現在のイランとアメリカの中とは全くの逆のものでした」



日本映画スプラッシュ部門 作品賞


『Of Love & Law』戸田ひかる(監督)





Q:弁護士カップルのどこに興味を持ったか?

「最初は純粋に彼らのラブストーリーに惹かれました。とても不完成なふたりがその不完成な部分を、お互いが受け入れあっている二人のカップルとしての姿に惹かれました。私は海外での生活が長いのですが、みんな同じで当たり前の日本社会で、当たり前から外れたゲイのカップルのオープンでいるふたりが、どうやって生きているのかに興味が湧きました」

アジアの未来 部門 作品賞/国際交流基金アジアセンター特別賞




『僕の帰る場所』藤元明緒(監督/脚本/編集)


Q:本作はどう演出し、どう作ったのでしょうか?

「映画を見た方々から、ドキュメンタリーのように演じられているとよく言われ、嬉しいのですが、僕はドキュメンタリータッチにしようとは思っていなくて、同じ思いを持って、脚本に共感してくれた方々が出てくれたので、演じるというかそのままの、ありのままの姿を見せて頂きました。

あのシチュエーションの中で生きている姿を取ろうとしていたので、真実の言葉で怒ったり、泣いたり、笑ったりしている姿を撮ったのでドキュメンタリーの印象を与えたのかと思います」

観客賞


『勝手にふるえてろ』大九明子(監督)





Q:観客賞を取れると思っていましたか?
「ノミネートさせて下さった時に、『よくぞこんなに小さな作品を見つけてくださった』と思いましたが、本心では『もらえるとしたら観客賞かな』などとも思っていました(笑)」

Q:東京国際映画祭について、今後どういった発展を希望していますか?

「これまで、東京国際映画祭にはあまり来たことが無かったのですが、今回ノミネートさせて頂き、あらゆる仕事を排除して出来るだけ多く劇場に足を運び作品を観て映画祭の空気に触れるようにしました。そこでこれまで来なかったことに、なんて勿体無いことをしていたのかと思いました。

今年の東京国際映画祭にはアル・ゴアさんやトミー・リー・ジョーンズさんが来ているのに、世間の目がこっちに向いていないのが悲しいです。

映画を愛する全ての人々でどうにか気付いて頂く工夫が大切なんだと思うので、学生は当日券500円で観られるようなシステムをタダにしてしまう勢いで、若い人たちがタダで遊べる空間にして、その遊びの一環に映画が組み込まれて行動してもらえるようにすればいいなと思いました」

最優秀脚本賞 Presented by WOWOW


『ペット安楽死請負人』ヤニ・ポソ(プロデューサー)





Q:この映画を誰に一番観てもらいたい?

「この作品の場合は、中年のある種の主義主張を持った男性たちに観てもらいたいです。そういった男性たちがどれだけ馬鹿げているのかを語った映画ですので」

最優秀芸術貢献賞


『迫り来る嵐』ドン・ユエ(監督/脚本)





Q:撮影日数はどれくらいで、実際に雨が降っていたのは何日ほどだったのでしょうか?

「この映画64日間で撮影しましたが、雨は最初から最後まで全て人工的に降らせていました。この撮影は3月だったのですが現地の雨季は11月〜12月で、想像を絶するほど厳しい現場でした。しかし、今回の雨を降らせる技術のチームは中国では最も優れたチームだったので、彼らのおかげでこの映画を撮ることが出来ました」

最優秀男優賞


ドアン・イーホン(『迫り来る嵐』)





Q:雨での撮影はどうでしたか?

「正直大変辛かったです。役者としては映画の出来栄えが非常に気になりますが、役者であることを一旦忘れて、この雨の中でどういった表情を出せるのかを探していました」

最優秀監督賞


エドモンド・ヨウ(『アケラット-ロヒャンギャの祈り』)


Q:ロヒャンギャについての前知識がなくとも、マレーシアの人々には作中の問題などは伝わるのでしょうか?

「私は説教くさい映画を作りたくはなかったので、あえて情報は排除して作っています。この映画では歴史的に説明することはやりたくなく、問いを投げかけることをしたかったのです」

審査委員特別賞


『ナポリ、輝きの陰で』


シルヴィア・ルーツィ(監督/脚本/プロデューサー/編集)
ルカ・ベッリーノ(監督/脚本/プロデューサー/編集)

Q:作り込まれた世界ではなく、あえて素人を起用することでリアリティを出すという意図がありましたか?
ルカ・ベッリーノ「これは意図的なものでしたが、ある意味で実験的な仕事の仕方をしたと思います。私たちの最初のアイデアは非職業俳優を起用することでしたが、ただ彼らを使うだけではなく、脚本を書くことにも彼らを入れることにしました。特に父親役には脚本に非常に参加してもらい、一緒に作品を作りました。

この作品は時系列に沿って作られていますが、最初の僕たちのオリジナルのアイデアから、彼らの演技の仕方を見ながら一緒に作っていくという方法をとりました。そこで非常に大事だったのは、彼らが純粋さを持っているからこそできるものでもありました」

シルヴィア・ルーツィ「もちろん、これからも今回と同じメソッドで仕事をしたいですが、これからはワンステップ上がった感じでやりたいと思います」

東京グランプリ/東京都知事賞


『グレイン』


セミフ・カプランオール(監督/脚本/編集/プロデューサー)




Q:作品名が呼ばれた時の気持ちは?

「賞はもらうものではなく、与えられるものだと思っています。私は私の映画を理解していただけると希望を持っていました。そして実際評価をして頂けたので、そういうことなんだろうと思いました」

Q:トルコは今、映画業界的に注目を集めていますが、映画の制作はしやすい環境でしょうか?

「コマーシャルやコメディについていうと、撮影の機会は多く、容易に見つけることが可能です。しかし人間の存在性や生きることへの態度などといった問題についての映画というと簡単ではないです。資金源を見つけることはなかなか難しいのです。

ただ、私の場合は前作の『蜂蜜』(2010)がベルリン国際映画祭で金熊賞をとったことで、世界40カ国で配給が実現しました。それにより本作を作ることが可能になりました。一方で、トルコの文化観光相がかなり広範囲での映画製作のサポートを用意していて、短編も長編もドキュメンタリーもフォローしてくれる場合もあります」

Q:本作のテーマはどのように考えましたか?


「現在の世界はひどい状況です。気候変動や文化間の問題、各国の間では所得の差が激しく、貧困などもあれば浪費も激しい。病気もあれば土壌汚染、難民、戦争、テロ、CO2などがあり、そういったものの中で私たちは生活をしているのです。そのなかで自分たちはどこから来てどこにいくのか、私たちは何なのか?そういったことを模索するようになったのが、この作品のルーツになりました」

コンペティション国際審査委員&受賞者記者会見


■日時:11月3日(金・祝)17:45〜20:00
■場所:EXシアター六本木 2Fカフェ
■登壇者
コンペティション国際審査委員:トミー・リー・ジョーンズ審査委員長、レザ・ミルキャリミ、マルタン・プロヴォ、ヴィッキー・チャオ(趙薇)、永瀬正敏
■各賞の受賞者
【日本映画スプラッシュ部門】
作品賞:戸田ひかる(『Of Love & Law』監督)
アジアの未来部門 作品賞・国際交流基金アジアセンター特別賞:藤元明緒(『僕の帰る場所』監督/脚本/編集)
【コンペティション部門】
最優秀脚本賞 Presented by WOWOW:ヤニ・ポソ(『ペット安楽死請負人』プロデューサー)
観客賞:大九明子(『勝手にふるえてろ』監督)
最優秀芸術貢献賞:ドン・ユエ(『迫り来る嵐』監督/脚本)
最優秀男優賞:ドアン・イーホン(『迫り来る嵐』)
審査委員特別賞:シルヴィア・ルーツィ(『ナポリ、輝きの陰で』監督/脚本/プロデューサー/編集)
ルカ・ベッリーノ(『ナポリ、輝きの陰で』監督/脚本/プロデューサー/編集)
最優秀監督賞:エドモンド・ヨウ(『アケラット-ロヒャンギャの祈り』監督/脚本)
東京グランプリ/東京都知事賞:セミフ・カプランオール(『グレイン』監督/脚本/編集/プロデューサー)

第30回東京国際映画祭 動員数(速報)
劇場動員数:6万589人(上映作品数231本/第29回は206本)
TIFFCOM、共催/定型企画動員数:22万2039人
レッドカーペット・アリーナ等イベント:11万1598人

(c)2017 TIFF

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