男性こそ観るべき!セックスが自由になった時代を描く『20センチュリー・ウーマン』

『20センチュリー・ウーマン』…

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タイトルだけ見ると、女性向けの映画だろうな、となんとなく思いませんか? チラシも女性が中心にあり、「男性観客にとってこの映画はどこが面白い?」と疑問をもつ人も少なくないでしょう。
そのような人に対してはっきりに「違います!」と言いたいです。むしろ、『20センチュリー・ウーマン』は、男性こそ観てほしい映画なのです。

あらすじ

1979年のサンタバーバラ。シングルマザーのドロシアが思春期の息子ジェイミーの教育に悩んでいます。父親がいないジェイミーを女手一つで育ててきたドロシアは、「複雑な時代を生きる」困難さを実感し、自分よりも息子の世代に近い女性の助けを求めるのです。

そこで、ルームシェアで暮らす女性写真家アビーと、息子の女友だちのジュリーに、息子を助けるように頼みます。

あらすじを読むと、母子関係に焦点を当てる作品で、「女性のほうが楽しめる映画」という印象はそのまま残るかもしれません。しかし、『20センチュリー・ウーマン』を男性こそ観るべき理由があるのです。

女性から「性」を教えてもらう少年の物語

1960年代終わりから性革命を迎えていたアメリカでは、フリー・ラブの概念をはじめ、性に関する知識の変化が激しかった。避妊ピルや女性解放運動のおかげで、特に女性たちのセクシュアリティに対する認識がどんどん変わっていきました。

70年代終わりのアメリカを描く『20センチュリー・ウーマン』では、女性人物たちが自分の身体について学びながらその知識をジェイミーに共有していきます。そして、その関係のおかげで、15歳のジェイミーがどの大人男性よりも女性の性について知り尽くすようになるのです。

たとえば、アビーは、女性の快楽やクリトリスについてジェイミーに話しますが、同時に女性の性に対して無知な男友だちのセックス話を否定してはいけないこともジェイミーに教えてあげます。ちなみに、その理由といえば「男は自分の幻想を信じたい生き物だから」、とアビーが語ります。

また、アビーとの関係からジェイミーが学ぶのは女性の快楽だけではありません。子宮がんにかかっているアビーは、母親になりたいかどうかさえまだわからないにもかかわらず、突然に「子どもをつくることができないかもしれない」と宣告されます。病院へ同行していたジェイミーが、妊娠している女性たちに囲まれながら、女性の身体にまつわる絶望も知る機会を得るのです。

そして、ジュリーとの関係からもジェイミーが女性の性について学んでいきます。たくさんの男性と性関係をもっているジュリーは、ジェイミーと同じベッドで寝ることが好きですが、彼との友情を大事にしているゆえにセックスを拒否します(ちなみに、アビーに曰く、セックスさせず横に寝るジュリーがジェイミーの自信を奪っています)。

しかし、フリー・ラブを楽しんでいるように見えるジュリーは、実はオーガズムを得ることができません。彼女の経験から、ジェイミーが女性の性の複雑さを知り、アメリカは性革命を迎えたとはいえ性関係が必ずしも平等ではないことも学びます。

自分自身が「いい男」なのか? 映画館で再確認しよう!

マイク・ミルズ監督は、自分の人生に影響を与えた女性たちとの関係を振り返りながら『20センチュリー・ウーマン』をつくったと述べています。特に、母親にまつわる実話が映画で使われており、本作品が母のためにつくった映像ラブレターと言われています。

『20センチュリー・ウーマン』、母子関係の亀裂と愛情が描かれつつ、母になる前の母、「ただの女性」だった母への感謝の気持ちも込められています。そして、なんといっても、息子を「いい男」に育てようとする母親と、その期待に応えるためにも「いい男」になろうとする息子の話なのです。

その意味でも、『20センチュリー・ウーマン』は、男性が観るべき作品といえるのではないでしょうか? というのは、母親をはじめ今までの人生における女性との関係について考えるきっかけを与えてくれる映画なのです。ぜひ映画館で自分の過去を振り返って、自分自身が「いい男」になりきれたかどうか再確認しましょう。

(文:グアリーニ・ レティツィア)

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    ライタープロフィール

    グアリーニ・ レティツィア

    グアリーニ・ レティツィア

    南イタリアのバジリカータ州出身。大学院で日本現代文学を研究しながらライターとして活躍しています。中学生の時から小説を読むことと映画(特にインディーズ・ムービー)を見ることが好きで、誰もがそうではないことを知った時のショックは一生忘れません。最近ドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』や『ダウントン・アビー』にはまっています。

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