イオンエンターテイメントが、調布に11スクリーンのシネコンをオープン。その呼び物は500席級の大劇場!!

■「役に立たない映画の話」

11スクリーンの「イオンシネマ シアタス調布」、今秋開場!

先輩 先週のことですが、正式にイオンエンターテイメントから発表されましたね、調布駅前の新しいシネコンの件。

爺 もとより調布駅前の再開発ビルにシネコンが入るとは聞いていたが、まさかイオンだとは。自社テナント以外では初めての出店では?

先輩 いや、そうではないようです。オープンするのは調布市小島町の商業施設「トリエ京王調布」で、そのA,B,C館のうちC館のコアテナントとしてイオンエンターテイメントが11スクリーンのシネコン「イオンシネマ シアタス調布」を今年秋に開業するとのことで・・。

爺 調布に映画館が出来るのは・・・。

先輩 パルコ調布キネマが2011年9月に閉館しましたので6年ぶり。しかもシネコンは初めてです。

爺 ほお。

先輩 注目されているのは、この11スクリーンのうち1スクリーンが座席数500席を要する大劇場だということなんです。

爺 500席とな!! それは凄い!! 今どきのシネコンだったら400席でも大きいと思うものだが、500席を、しかも調布市のシネコンで採用するとは!!


(写真は、イメージです)

先輩 試しに東京都内のシネコンで500席以上のサイトがどれだけあるか調べてみたんですが、4つほどありました。

爺 一番大きいのはどこじゃないな?

先輩 4月29日にオープンする、ユナイテッド・シネマアクアシティお台場の1番スクリーンで、612席あります。ここは2月に閉館したシネマ・メディアージュの施設を引き継ぎ、その後4DX等を入れますが、最大キャパの1番に関しては手を加えないようですので、座席数もそのままとのことです。

爺 さすがに大きいなあ。600席代か。そもそもこの劇場は、当初オペラハウスにする予定だったというしなあ。

先輩 次に都内で座席数の多いシネコンは、新宿ピカデリーの1番スクリーン。これが580席あります。

爺 最近だと「マイマイ新子と千年の魔法」の特別上映のチケットが、あっという間に売り切れた。

先輩 映画だけでなく、ODSやイベント上映も積極的に行っていますね。その次になると板橋区にあるイオンシネマ板橋の8番スクリーンで545席。そして5番目がTOHOシネマズ六本木ヒルズの7番スクリーンの531席。

爺 ふえー。さすがにシネコンの時代になると、かつてほど大きなスクリーンはないのだなあ。

先輩 いやいや。シネコン、つまり5スクリーン以下で営業している映画館ということになると、銀座地区にはまだまだ500席以上の映画館が健在です。丸の内ビカデリー1=802席、2=586席、3=540席、TOHOシネマズ日劇1=948席、2=668席、3=524席を筆頭に、丸の内TOEI①511席、TOHOシネマズスカラ座654席と、これだけあります。

ファミリー映画には“キャパ勝負”が出来る大バコが有利。

爺 しかしまあ、今どき500席なんてスクリーンを、しかも調布に作るなんて、いささか時代遅れじゃないだろうか?そもそも必要ないだろう。250席のスクリーンを2つ作ったほうが、効率的というものだろうが。

先輩 いえいえとんでもない。必要です(キッパリ)。

爺 何を根拠にそんなことを言うんだね?大きなスクリーンは維持する経費だって余計に必要だ。

先輩 ファミリー映画を上映するには、大バコのほうが有利なのは、ご隠居もご存じだと思いますが、座席数の多さで勝負がつくことを、配給・興行関係者は“キャパ勝負”とか“入れ物勝負”と称しています。これは考えてみれば当たり前のことで、一家のうち誰かひとり・・多くの場合は子供ですが、映画を見たいと言えば、家族の誰かが付き添って入場したり、自分も見たかったということになり、複数枚のチケットが売れる。そうなるとひとりの意思決定で複数の座席が埋まる。だから大きなスクリーンのほうが有利だということなんですよ。

爺 今さらそんなことを解説されんでも分かるわい。今年の春休み番組なんて、「ドラえもん」「モアナと伝説の海」「シング」と、興収40億円超の大ヒット作ファミリー映画が3本も出たわけだから、最大スクリーンもフル稼働が続いたんじゃないかな。

先輩 そういうビジネス・チャンスを逃がさないためにも、大きなスクリーンを備えているほうが良いのですよ。正直、正月や春休み、夏休み以外のシーズンで満席になる確率はそれほど高いとは思えませんが(笑)。

爺 しかしなあ、そうなると調布という土地柄が気にかかるわけだよ。京王線で新宿まで数分の距離なわけで、新宿には3つのシネコンがあるわけだからな。IMAXやMX4Dも完備しているし、シネコンだけじゃなくてミニシアターも営業している。

先輩 新宿のシネコンの一角を崩すぐらいお客さんが入ればしめたものですよ。

爺 さっき新宿ピカデリーでは映画上映以外にイベントや舞台挨拶を最大キャパのスクリーンでやっていると言ってたけど、それは配給会社がバックにあるから出来ることで、松竹映画の新作の舞台挨拶は新ピカの1番、東宝だったら日劇といった風に、もはや習慣化されている感さえある。

先輩 確かに初日舞台挨拶だけは満席になる映画ってありますよね(笑)。

爺 それは言いっこなし(笑)。それてもお客さんが来るってことは収入になるわけだから。

「映画の街・調布」は、単なるお役所主導のスローガンではないぞ。

先輩 ひとつ興味深い話をすると、数年前、僕は調布市のたづくりってところで半年間、「日本映画の名作たち」という講座をやったことがあるんです。

爺 なんじゃ?また営業話かいな?

先輩 まあまあ、お聞きなさい。ご老体。もう5,6年経つでしょうか。その頃から調布市が音頭を取って「映画の街・調布」というスローガンを大々的に掲げて、まあ一種のキャンペーンを始めたわけですね。その一端というか住民サービスのために、僕が映画講座をやることになったんですが、当然受講者は60歳以上のシニアばかりで、受講料無料、平日の午後にたづくりのホールでDVDをかけながらというスタイルでした。でも受講生は皆熱心に話を聞いてくれて、お役所が掲げる「調布は映画の街」というスローガンが、単にお題目ではなくて、調布の人たちが積極的にそこに参加することで、映画を楽しもうという気持ちを持っているように感じました。

爺 つまり、「調布は映画の街」といお題目は、決してお役所が言ってるだけではないと。

先輩 なんというか、調布のシニアたちは、そのことを前向きに捉えて「この際だから、映画を楽しんじゃおうじゃないか」という姿勢が感じられました。

爺 調布は映画作りという点では、日活撮影所と角川大映撮影所があるし、石原プロモーションもあるし。白組調布スタジオでは山崎貴監督が新作を作っている。まさに「映画の街」と呼ぶに相応しい場所なんじゃよ。

先輩 そういう雰囲気みたいなものを、住民は感じているんでしょうね。ちなみに受講者に「日活撮影所に行ったことある人は?」と聞いたら、ゼロでしたが。

シニアはシネコンが大好きなんじゃ!!

先輩 もうひとつ面白いことがあって、講座で「七人の侍」を扱ったときは、受講生の出席率が100パーセントを記録。ここでもやってみたんです。「この映画を映画館で見た人は?」と。さすがにこれは全員が挙手。しかも驚いたのは、そのうち3人は「初公開の時に見た」と言うんです!

爺 それは頼もしい。

先輩 同じ製作年の「ゴジラ」の時も、その3人は「初公開の時に見た」と言ってましたから、もう僕のほうが講座を受けたくなっちゃいましたよ(笑)。

爺 「先輩っ!!」ってか(笑)。

先輩 だから調布には、映画好きなアクティブ・シニアがたくさんいる。

爺 いやいや、そもそも爺さんたちは映画が好きなものなんじゃよ。

先輩 あの、ご自分を基準にしてませんか? 品川のIMAXの前から3番目で「シン・ゴジラ」を見て素っ頓狂な声を上げているシニアが、一般的な映画好きとは思えないんですが(笑)。

爺 わははは。とにかくわしは、シネコンが大好きだからな。シネコン至上主義じゃ!!

先輩 「メルマ旬報」の柴尾さんですかっ?

爺 誰じゃ? そりゃあ!!

「座席の固い、昔の映画館なんかで映画を見ようとは思わん!!」

先輩 ご隠居たちが今になって映画館に通うようになったのは、時間があるし、年金ももらえる。昔映画を見た映画館が懐かしいからじゃないんですか?

爺 冗談じゃない。昔の映画館なんかで、二度と映画を見たいと思わないよ。あんなに座席が固くて前の席との間隔が狭くて、スクリーンに頭がかかって、便所が臭くて売店には無愛想なおばちゃんしかいなくて、しかもそこで売ってるものが外より高くてまずい。そんなところで二度と映画を見たいとは思わん!!

先輩 じゃあ「午前十時の映画祭」なんかでかかる、懐かしの名作映画を見たくて、ということなんですか?

爺 時にはそういうこともあるけど、わしゃ新作をシネコンで見るのが好きだなあ。今、楽しみにしているのは「ローガン」と「メッセージ」じゃ。

先輩 はああ・・・・若すぎますね、好みが。

爺 いやいや、そういうもんじゃて。ジジイは昔の映画を好むなんて、誰が決めたんだ。まあわしら、新作を見ても料金1100円だからな(笑)。

先輩 話が調布のシネコンからそれっぱなしですが、じゃあもしご隠居が調布に住んでたら、このシネコンには・・・。

爺 毎日通うだろうよ。11スクリーン全部制覇するのに、1週間もかからんだろう。周囲にシニアがいたら聞いてご覧。みんなシネコンが大好きだと言うと思うよ。シネコンは、わしらの「やすらぎの郷」じゃ(笑)。

先輩 必ずしもシニアだけを狙ったシネコンとは思いませんが(笑)。調布という街が持っている、映画に対してポジティヴな姿勢、映画を楽しもうという住民感情みたいなものは、映画館にとっても追い風になりますよね。

爺 そう。だから市役所あたりと手を組んで、色々なイベントを仕掛けていくのが良いと思うよ。イオンシネマはたくさんのローカル都市でシネコンを展開しているから、地域密着、その地域に応じた映画館の運営の仕方を心得ているんじゃないかな?

先輩 イオンシネマとしても都内4つ目のシネコンだと言いますから、これは注目ですね。

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(企画・文:斉藤守彦)

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    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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