『バッファロー’66』の魅力、これは愛おしいダメ人間映画だ!

自分は「ダメ人間が出てくる映画」が大好きです。
なぜなら「等身大の人間の弱さ」を教えてくれるから。

そこには「私はこうして成功した!」なんていうリア充全開な自己啓発本にはない、ダメだからでこその人間の愛おしさがあります。

何よりも、自分は弱い面を見せるも、それでも頑張ろうとする人間を見て、このうえなく感情移入してしまいます。ひいては、それは生きる力になると思うんです。

ここでは、ダメ人間を自覚する映画ライターのヒナタカが、元気が出るおすすめのダメ人間映画を紹介していきます。

第1回はこちら。『バッファロー’66』です

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『バッファロー’66』がどのようにダメ人間を描いていたか、以下に紹介してみます。

1.主人公は女の子を拉致る

主人公・ビリーは5年の刑期を終えて出所した男。
金ナシ、女ナシ、仕事ナシ、しかも前科アリというダメダメな状況なのですが、コイツは両親には自分の境遇を知らせていません。

彼は久々に里帰りをしなければならなくなるのですが……、なんと彼は見ず知らずの少女・レイラを拉致って、自分の妻のふりをするように脅迫するのです!

すごいですね。主人公が最初にする行動が拉致って!
でも、このクズ主人公のことが、この後にけっこう好きになってくるのですよ……。

2.人となりはおしっこで表す

この映画のすごいところは、おしっこをするシーンで主人公の人となりを表してしまうことです。

ビリーは初登場時、限界に近くても「このトイレは使うな」と言われれば素直にその通りにします。
律儀な性格かと思いきや、ビリーはようやく入ったトイレで、となりのおじさんに「俺のもの見ただろ!」とチ◯コを見られただけでブチ切れるのです。

ここから、ビリーは本来素直な性格でありながら、どうでもよさそうな「見た目」で他人に評価をされることを嫌っている、子どもっぽい性格ということがわかります。

3.両親に愛してほしかった

実家に帰ると、ビリーの母はぜんぜん息子のことを気にかけていません。それどころか、テレビで観ているアメフト・チームのことで頭がいっぱいです。
しかも母は、ビリーの出産のときに、ひきいにしていたチームの優勝試合を観戦できなかったことをいまだにグチったりするのです。
これはもう「息子のあんたよりも、アメフトのほうが重要よ!」と言われているようなものです。

ビリーはまったく両親に愛されていなかったのです。
クズな性格になったのも、それが理由なのではないでしょうか。

ビリーは妻を両親に見せようとしていましたが、それは体裁のためというよりも、両親に自分を見てもらいたかった、という訴えに思えるんですよね。
その訴えかたが「無理やり女の子を拉致って妻に仕立てる」なんて不器用すぎます(というか犯罪です)。
そんなダメダメなビリーが、どうしても愛おしくなってくるんです。

4.じつはヒロインもダメダメ?

ヒロインのレイラは、ダメダメな男に拉致されたのに、その男のことを勝手に好きになるというキャラクターです。
このヒロイン像は「都合がよすぎる」と批判されることがあるようですが、自分はまったくそうは思いませんでした。
なぜなら、レイラもじつはダメ人間であるからです。

たとえば、ダンス教室でみんながダンス用のウェアを着ているなか、レイラだけは動きにくそうなヒラヒラした私服で踊っています。
ここから彼女もどこか常識を欠いていて、皆になじめない「はぐれ者」であることがわかるんです。

そして、ビリーはそんな彼女を捕まえて「奥さんになれ」と言うのですが、彼はレイラの見た目や性格について文句を言うことは一度もありません。
むしろ、レイラにとって、ビリーは「はぐれ者の自分を連れって行ってくれる」存在だったのでしょう。

これまで愛されなかったビリーは、レイラに愛されていることを知った。
レイラにとっても、ビリーは人生で欠けていたものを補ってくれていたのではないでしょうか。
彼らの出会いは、「必然」のようでした。

5.いままで愛されなかっとしても、それでもいいんだ

最終的に、ビリーは自分をハメて刑務所送りにした男に復讐をしようとします。
ネタバレになるので書きませんが、ここで彼の「選択した理由」が、とても泣けるのです。

これは、両親から、または誰からも愛されなかったと思っている方へのエールだと思うんです。

いままで愛されなかった。そのために不幸だった。それがなんだって言うんだ?
いまから、好きな人ができて、いっしょになったりして、幸せであればそれでいいじゃないか―
そのような考えかたができるのではないでしょうか。

この物語は、ダメ人間どうしが、お互いがお互いを必要としていたことがわかるラブストーリー。
美男男女が出てくる映画ももちろんいいですが、このような「弱い人間たち」による恋愛映画も、ぜひ観てみてほしいです。

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(文:ヒナタカ)

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