映画コラム

REGULAR

2016年12月16日

『ドント・ブリーズ』が『ローグ・ワン』と並ぶ必見作である5つの理由

『ドント・ブリーズ』が『ローグ・ワン』と並ぶ必見作である5つの理由





本日12月16日(金)より、映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が公開されているのは皆さんご承知の通りでしょうが、同じ日に最“恐”クラスのスリラー映画も公開となったのをご存知でしょうか?

その映画の名前は『ドント・ブリーズ』。その魅力がいったいどこにあるのか?なぜ必見なのか?ネタバレのない範囲で、たっぷりとお伝えします。

1:幽霊もお化けも出て来ない!だけどめちゃくちゃ恐い!


本作を、その見た目から単純なホラー映画のように思われている方も多いかもしれませんが、実は幽霊やお化け、超常現象などは一切出てきません。あくまで描かれているのは“人間”なのです。

舞台はアメリカのデトロイト、ゴーストタウンと化した住宅街。物語は、3人の若い泥棒たちが、孤独な盲目のおじいさんが大金を隠し持っているとの情報を得て、その屋敷に忍び込むというだけ。内容は“超”がつくほどにシンプルでした。

ただそれだけなのに、なぜ恐いか……それは、この“盲目のおじいさん”がとんでもないヤツだったからなのです。

2:盲目のおじいさんは最強の傭兵だった!


3人の泥棒は空き巣を繰り返していたこともあり、「あのじいさんは目が見えないんだから、さっさと大金を奪って逃げれるっしょ!」というナメきった態度で屋敷に侵入します。

しかし……そのおじいさんは元軍人で、恐るべき身体能力を持っており、目が見えない代わりに聴覚も研ぎ澄まされていました。何より、コイツは侵入者を認識すれば、“なぜか”すぐに抹殺することを躊躇しません。はっきり言えば、異常者なのです。

3人の泥棒は期せずしてこのおじいさんの殺しのターゲットとなり、“少しでも音を立てれば殺される、だから息を止めろ(Don’t Breathe)”という状況に追い込まれてしまうのです。

しかも最悪なことに、そのおじいさんは強力な銃を手にしてしまいます。“床に転がったスマホに着信があったので速攻で撃ち壊された”というシーンもあるため、“もしおじいさんがいるそばで少しでも動けば(音を立てれば)即銃殺”というルールがしっかりとここで提示される……なんと恐ろしいことでしょうか。

なお、この盲目の最強傭兵ジジイを演じるのは、『アバター』で悪役の大佐を演じたスティーブン・ラング。還暦越えの年齢ながらその肉体はガチムチ。“もしも捕まったら一巻の終わり”と思わせるその体つきだけでも、恐怖を覚えるのではないでしょうか。


3:極限の知略バトルが勃発!


この盲目の最強傭兵ジジイに対し、3人の泥棒は何の特殊能力も持たない普通の若者です。もしおじいさんの目が見えていたら、彼らは1秒もたたずに抹殺されていたことでしょう。

しかし、“目が見える”ということが彼らの大きなアドバンテージ。この3人の泥棒と、盲目の最強傭兵ジジイの戦力を冷静に分析すれば以下のようになります。

【3人の泥棒の戦力】
・有利な点:目が見える、仲間がいるので連携プレーも可能
・不利な点:屋敷の内部構造を知らない、力が弱い


【盲目の最強傭兵ジジイの戦力】
・有利な点:研ぎ澄まれた聴覚、屋敷の構造の熟知、恐るべき肉体と身体能力
・不利な点:目が見えない


こう考えると、“3人の泥棒がさっさと屋敷から逃げればそれで終わりなのでは?”と思ってしまいそうですが、そうならないのも上手いところ。彼らがなかなか逃げない具体的な理由は秘密にしておきますが、“それはしょうがない”と納得できるものであったとだけ記しておきます。

何より素晴らしいのが、泥棒たちとおじいさんの両方がしっかりこのルールを理解し、ルールに従った“知略のあるバトル”が展開すること。
この“戦いに勝つためのロジックがある”というのは、同じように一定のルールに基づいたバトルが展開していたモンスター映画の『トレマーズ』や、2016年の傑作サメ映画『ロスト・バケーション』を彷彿とさせました。

なお、劇中には3人の泥棒の“目が見える”というアドバンテージが、おじいさんのとある知略により“なくなってしまう”というシーンがあります。それが具体的にどういうものかということは……やっぱり、秘密にしておきます。

4:残酷描写はほとんどなし!低予算でもアイデア1本でおもしろい!


監督は、2013年のリメイク版『死霊のはらわた』を手がけたフェデ・アルバレス。そちらはグロテスクな描写が満載なホラーでしたが、今回は一転して残虐描写がほとんどなくなっています。痛いのやグロいのが苦手、という人にも本作はおすすめできるでしょう。

ただし、終盤には「ひっ」とひきつった声をあげてしまいそうな極悪なシーンもあります。本作がPG12指定されているのは、全編に渡る恐怖描写だけでなく、このエグすぎるシーンのためでもあるのでしょう。

なお、本作の制作費はマーケティング費用を除いて約990万ドル(約10億円)と、アメリカ映画としては低予算の部類なのですが、全米の興行収入は2週連続で1位、累計で制作費の12倍以上を叩き出す大ヒットを遂げていました。
セットは屋敷1つ、登場人物はほぼ4人だけ。そうであるのに、“3人の泥棒VS盲目の最強傭兵ジジイ”というアイデア1本と、数々の巧みな演出や美術、役者たちの熱演により、ここまでおもしろい映画が作れるのですね。

5:上映時間は90分以内!だけど決して浅い内容にはなっていない!


本作の上映時間はわずか88分。スリラー(ホラー)作品としても、近年では稀に見る短さです。

しかし、この上映時間であっても、決して浅い内容になっていません。(文字通り)息つく暇もない極限バトルの連続で、無駄なシーンは1つもなく、なおかつ“ちょっとした描写だけでキャラクターの内面がわかる”というドラマとしての魅力もあるのですから。

フェデ・アルバレス監督は本作について、「100%のホラーでも、スリラーでもない。でも確実に、ものすごく恐い場面が出てくるよ」と言っています。この監督の言葉通り、本作はホラー、スリラー、ドラマなどのさまざまな要素を持ちながらも、“怖いシーンだけは誰であっても確実に出てくる”という一筋縄ではいかない映画なのです。それを、わずか90以内で堪能できるこの極上の体験を、ぜひ劇場でこそ味わってほしいのです。

おまけ:似ている映画はこれだ!


最後に、前述した『トレマーズ』と『ロスト・バケーション』以外で、本作『ドント・ブリーズ』に似ていると感じた3つの作品をご紹介します。

『サイコ』……ヒッチコック監督による元祖的なスリラー作品。“感情移入をする人物”が途中で変わってしまう(かもしれない)こともポイント。
『暗くなるまで待って』……オードリー・ヘップバーン主演作。盲目の女性と彼女を慕う少女と、3人の不審な男たちとの“隠された人形”を巡っての心理戦が展開する。

『イット・フォローズ』……“殺しにくる何か”に追われるようになるホラー。同じくデトロイトの街が舞台で、本作で泥棒の1人を演じたダニエル・ゾヴァットはこちらにも出演している。

これらの作品にある“限られた場所やコミュニティでこその心理(知略)バトル”を気に入れば、本作も間違いなく楽しめるでしょう。
というか、何度も書いたように“盲目の最強傭兵ジジイと3人の泥棒との極限バトル!”という本作のシチュエーションがつまらないわけがないですから!映画館という“逃げられない”状況でこそ観てください!

■このライターの記事をもっと読みたい方は、こちら

(文:ヒナタカ)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

RANKING

SPONSORD

PICK UP!