傑作サスペンス『ダウンレンジ』、予想を覆す展開と衝撃のラストは必見!

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実写版『ルパン三世』や『あずみ』『ゴジラ FINAL WARS』などで、圧倒的なアクションのキレを見せてくれた、北村龍平監督。彼の待望の最新作となる映画『ダウンレンジ』が、9月15日からついに日本で劇場公開された。

本作と同様にアメリカで撮影された『ノー・ワン・リヴズ』が素晴らしい出来だっただけに、個人的にも公開前から非常に期待していた本作。予告編やストーリーからは、極限状況下でのサバイバル物との印象が強かった本作だが、果たしてその出来と内容はどうだったのか?

ストーリー

6人の大学生が相乗りした車が広大な山道を横断していると、突然タイヤがパンクする。
タイヤ交換をしていた男は、パンクが事故ではなく、銃撃によるものだと気づく。その時、既に彼らは見えない「何者か」の射程距離<ダウンレンジ>に入っていた・・・。果たして彼らはこの地獄から脱出出来るのか?

予告編

始まって1分で観客の心を鷲掴みする展開が凄い!

本作の舞台となるのは山道で立ち往生した一台の車と、それに同乗していた6人の若者たち。

そんな本作の設定やストーリーだけを見て、きっと過去の同傾向作品と同じ様な内容と思い、今回は劇場での鑑賞をスルーしようと考えている方も多いのではないだろうか?。

でも、ちょっと待って欲しい!実は本作こそ、観客の予想を見事に裏切る展開の連続で、見逃すと後々後悔することになりかねない傑作サスペンスなのだ。なにしろ映画開始後1分で、突然事件の真っ直中に主人公たちが放り込まれるという、そのスピーディーな展開の素晴らしさは、もはやこの冒頭部分だけで、「あ、これは間違いなく面白い!」と、我々観客に確信させてくれるほど。

実際、序盤で人物紹介や状況説明が続いて観客を退屈させるという、過去の類似作品が繰り返して来た失敗を見事に克服している本作は、その全くムダの無い導入部によって、この6人の若者たちを待つ運命に観客の興味が集中し、しかもそれが最後まで持続するという効果を上げている。

更に序盤で説明が一切されないために、最後まで予想がつかないこの極限状態を、観客が主人公たちと同様に味わえるという臨場感も、本作の魅力の一つとなっているのだ。単なる偶然によるパンク、そう思って気楽に構えていた状況から、実は姿の見えない何者かによる遠距離からの狙撃だったと判明する展開の衝撃!

加えて、そこから始まる息もつかせぬサスペンスの連続まで、本作は誰が最後まで生き残るのか、全く予断を許さない状況が続くことになる。確かに目を背けたくなる残酷描写も登場するが、あくまでも犯人の残虐さと若者たちの絶望感を高める効果を狙ったものなので、苦手な方にはご容赦頂ければと思う。

とにかく、文字通りスクリーンから目が離せないその緊張感溢れる展開は、是非劇場で!

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予想を裏切る展開の連続が凄すぎる!

孤立無援の極限状態での主人公たちの関係性の描き方や、非常に効果的に登場する迫力のカースタントシーン、そして銃撃を受けた人体の破壊描写の凄さなど、今回も北村龍平監督の見事な演出が楽しめる本作。

加えて注目したいのは、やはりその良く練り上げられた脚本だ。過去の同傾向作品と同じだろうと思っていた観客の予想を次々に裏切るその展開は、文字通り観客を翻弄して最後まで飽きさせることが無いほど!

例えば、旅行中の田舎道でいきなり車がパンクしたら?あるいは、スマホが圏外で助けを呼べなくなったら?など、我々の普段の生活でも起こり得る恐怖を描きつつ、そこに正体不明の狙撃者との対決というサスペンスを盛り込んだその脚本の出来は、実に見事としか言いようがない。犯人の犯行動機や状況説明よりも、理由も分からず姿の見えない敵に襲われる恐怖に重点を置いた本作は、正に”体験型サバイバル映画”と呼ぶにふさわしい内容となっているのだ。

更に、良く描き込まれた登場人物たちと、それを演じる出演キャスト陣の存在感と素晴らしい演技のおかげで、次は誰が犠牲になるのか?最終的に生き残るのは誰か?などのサスペンス部分が、一層盛り上がることになる。

思えば過去の類似作品では、例えば食料や水の奪い合いが起こったり、弱い者を犠牲にして自分だけ助かろうとする者が登場するなど、極限状態下での人間の醜さや、仲間割れが描かれることが非常に多かった。更には、そこから生き残った者が果たしてその後も人間らしく生きられるのか?あるいは生き残るために犯人を殺した主人公も罪人ではないのか?といった問題定義と共にラストを迎えるのが、一種の定番の展開だったと言える。

そんな我々の常識と先入観を見事に裏切る本作の展開は、その衝撃のラストも含めて、物語が最後にちゃんと決着し謎が全て説明されて終わることを求める観客の方からは、否定的な意見が出ることは間違いないだろう。

ただ、無差別に巻き込まれる悪意や暴力のおぞましさ、そして極限状況下でも変わらない人間同士の絆の強さを描きつつ、人種差別や銃社会であるアメリカへの警告に満ちたその問題のラストまで、本作が単なる低予算のサスペンス映画とは一線を画す傑作となっているのは間違いない。

果たして、息詰まるサスペンスの果てに、主人公たちを待ち受ける結末とは何か?

衝撃のラストの解釈や意味については、是非ご自分の目で観て判断して頂ければと思う。

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最後に

最近は上映時間が2時間を超える作品が多い中で、90分というコンパクトな上映時間や有名俳優の不在、更に限定された空間と少人数で展開するサスペンスと聞いて、やはり多少の不安を抱いての鑑賞となった本作。だが、極限状態下でも変わらない人間同士の深い絆や、お互いへの思いやりが描かれるのを見て、その不安は次第に消えて行った。

映画の製作当初は、砂漠を舞台にもっとコンパクトな内容で考えられていたという本作。だが、完成版は主人公たちの置かれた状況を更に限定することで、我々の日常の中でも起こりうるリアルな恐怖を観客に与えることに成功している。

ムダの無い導入部から観客を一気に作品世界に引き込む脚本といい、残念ながらまだ知名度は低いが、実に見事な演技で登場人物たちに命を吹き込んでくれる、一万人を超える応募者の中から選ばれた6人の若いキャスト陣など、予想外の面白さや新しい才能に出会える喜びが体験できる点も、この『ダウンレンジ』という映画の魅力だと言えるだろう。

北村龍平監督へのインタビューによれば、次回作は監督の得意とするアクション映画、しかも監督の言葉を借りれば”史上最大のアクション映画”になるとのこと。一日も早い次回作の公開を、ファンの一人として今から待ち望んでいると言っておこう。

姿を見せない狙撃者の銃撃に、車の影から一歩も動けなくなる若者たち。その極限状況の中で彼らがどう行動したか?実はこれこそが、本作の伝えたかった真のテーマではないだろうか。

人種や男女の区別無く、何者にも平等に訪れる”死”という恐るべき存在。迫り来る”死”への恐怖や撃たれた傷の痛みに耐えながら、協力して必死に生存への道を探し続ける主人公たちの姿こそ、人間関係が希薄な現代社会において、我々観客が求めている物なのかも知れない。

鑑賞後、確実に多くの観客の心に深い余韻を残すであろう本作。賛否両論を巻き起こすに違いないその衝撃のラストに、果たしてあなたは何を思うだろうか?

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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