安田顕が42年間恋愛経験なしの男を演じる『愛しのアイリーン』が描く孤独な愛

■橋本淳の「おこがまシネマ」

どうも、橋本淳です。18回目の更新です。今回もどうぞよろしくお願いします。

今月は邦画の期待作がぞくぞく公開されています。
『寝ても醒めても』『君の鳥はうたえる』(どれも素晴らしかったです。)

そんな中、今回はコチラをご紹介。

『愛しのアイリーン』

(C)「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ

原作・新井英樹✖︎監督・田恵輔 作品。映像不可と思われた衝撃作の待望の映画化です。主演の安田顕が見事に怪演しております。

パチンコ店で働く宍戸岩男は42年間恋愛を知らなかった。ボケ始めた父・源造と、過保護すぎる母・ツルと3人で暮らす岩男の部屋は、42歳の男の部屋ではなく、まるで学生の男子が籠ってるような部屋であった。あることをきっかけにツルになじられ、岩男は家出をする。おろおろする母、その間に父は亡くなり、葬儀が執り行なれる。そして葬儀の最中に岩男は帰ってくる、フィリピンの女の子を連れて…。

「イワオサンノ、オヨネサン、ナリマシタ」

なんと岩男はフィリピンで国際結婚していた。貯めていた貯金300万円を使い、フィリピンのお見合いツアーに参加し、斡旋業者の紹介で何人もの女の子とお見合いし、半ばヤケになりアイリーンという子と勢いで結婚を決めてしまっていたのだ。

葬儀の最中に現れ、大事に育ててきた岩男が連れてきたのは知りもしないフィリピン女性。しかもそのアイリーンが、亡くなった源造が生前作った遺品のような思い出の品を壊してしまう。ついにツルの怒りは頂点に達し、猟銃を手に取り、アイリーンに銃口を突きつける。アイリーンも訳がわからず一触即発の大事件に。

ツルの怒りが収まらず、岩男は家に帰ることも出来ず、アイリーンとともに車中&ラブホテル生活をせざるを得ない。アイリーンは体を岩男には許してはいない。岩男は大金を払ったのにお預けをくらい、苛立ちはピークになりアイリーンを追い回すが、アイリーンは頑なに許さない。だが2人はカタコトの日本語でゆっくりだが、確実にコミュニケーションを重ね、だんだんと愛のようなものが芽生えてくる。

しかし幸せを掴みかけるも、怪しげな男・塩崎によって、2人の人生は地獄へと向かってゆく…。

(C)「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ

まさに衝撃作。セックス、オナニー、バイオレンス、息つく間もなく次々と迫り来る衝撃。激しさの奥にあるものが魅力的な作品でした。それぞれが必死に、誰かと繋がろうとする思い、繋がりたいと思い、それらが交錯する。

瞳の奥に揺らぐ、寂しさに泣いた。

どの登場人物たちにも、寂しさだったり、孤独感だったり、憂いだったりがあるが表面的には演じない。しかし、ふとした表情や動きから感じ取れる。その微妙で、繊細なやり取りに、泣きました。

キャストは、宍戸岩男役に安田顕。アイリーン役は、現地フィリピンで行なったオーディションで田監督に見出されたナッツ・シトイ。母ツル役に木野花。パチンコ店で働く愛子役に河井青葉。謎の男・塩崎に伊勢谷友介。と、それぞれにハマり役。

安田顕は憑依型で、現場では常に役モード。ナッツ・シトイは一発目の本番テイクでの瞬発力がケタ違いの動物タイプ。木野花は細かい調整で精度が高く、テイクを重ねた分だけ掘り下げていくタイプ。と異なる3人の役者を田監督は、臨機応変に対応していく。3人のシーンは本当に緊迫感があり、リアリティがあり過ぎて怖いくらい。見応えあるシーンの連続です。

ここまで感情揺さぶられる邦画は、久しぶりに観た印象です。軽い気持ちで入った映画館、出る時には重心がグッと下がり自分の一歩が重たく感じた。そのくらい殴られた。この作品に。

それぞれの孤独が求める愛。

その結末をぜひ映画館で見届けてもらいたいです!

それでは、今回もおこがましく紹介させていただきました。

(文:橋本淳)

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    ライタープロフィール

    橋本淳

    橋本淳

    2004年(平成16年)テレビ『WATER BOYS2』で本格的に芸能活動を開始。2005年(平成17年)に『魔法戦隊マジレンジャー』の小津 魁/マジレッド役に抜擢される。 以後、テレビ『連続テレビ小説 ちりとてちん』『大河ドラマ 軍師官兵衛』『PATグランパ!』『悦ちゃん』、『CHASE』、『刑事ゆがみ』など。映画『婿入金魚』、『At the terrace テラスにて』、舞台『黒いハンカチーフ』『書く女』『月・こうこう、風・そうそう』『クレシダ』『キネマと恋人』『君が人生の時』城山羊の会『相談者たち』など多数の作品に出演。 シネマズby松竹では【おこがまシネマ】を第2、4水曜に隔週連載。「烏滸がましくも、まだまだ青臭さの抜けない、橋本淳という役者が、映画を紹介するページです。嗚呼、烏滸がましや烏滸がましや」

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